7.街に到着 (2019/7/20)
近くまで来てみると、思っていたよりも外壁が高い。恐らくだが7、8mぐらいは、ありそうだ。門の前には兵士の人たちがいて、そこに近づくと声を掛けられた。
「カードを出してくれ」
そう言ってきたのは、30代と思われる厳つい感じの男性だった。
「カード?」
なにそれ? 身分証みたいなものかな? ……そう言えばそう言ったものを何も持っていないけど、街の中はちゃんと入れるかな? と少し不安になった。ここまで来たのに入れなかったらどうしよう。そう思っていると、兵士の人が私の様子に気付いたようで声を掛けて来た。
「……もしかしてカードを持ってないのか?」
「はい」
「……初めて街に来たのか?」
「そうです」
「(それなら持っていないかもしれないか……)」
兵士の人は、何かぶつぶつ言っていた。何を呟いているのかな? そう思いながらカードがなくても街に入れるのか聞かないと! と思い聞いてみた。
「あの、カード? がなくても街に入れますか?」
「ん? ああ。入れるが、カードを持っていない人は通行料として銀貨1枚かかるが払えるか?」
「え?」
街に入るのにお金なんかかかるの? という驚きと、そう言えばお金を見たことが無いことに気付いた。いや、見たことは多分あると思うけど、覚えていないと言った方が正しいのかな? 確か妹が売られた時、両親が金貨らしきものを持っていたから……。貨幣の価値については……、知識にはないみたい。
「……嬢ちゃんお金を持ってないのか?」
そう言われて私は、頷いた。
「それは困ったな……。何か売れそうなものはないか?」
そう聞かれて売れそうなものを考えたけど、ここに来るまでに何度もゴブリンから回収した魔石なら売れるかな? そう思い魔石が入った袋を1つ取り出した。
「これは、売れますか?」
「なんだ?」
そう言いながら私が取り出したものを受け取り、中身を確認する。
「魔石か。売れるが少し時間がかかるがいいか?」
「お願いします」
そうお願いをすると、兵士の一人がそれを受け取ってどこかに向かって走って行った。それから私に向き直ると真剣な眼差しで私の方を見てきた。
「それにしても、あの魔石はどこで手に入れた?」
「……道中で魔物を倒して」
兵士の人に何を聞かれるのかと思い身構えていたら、まさかの魔石の入手方法を聞かれた。魔石は魔物を斃さないと手に入らないのでは? とそんなことを思いながら斃したことを言うと、その兵士は驚いたような表情をした。
「嬢ちゃんが倒したのか?」
「そうですが?」
「1人でここまで来たみたいだから、あり得なくもないが……」
魔物を斃しただけでそんなに驚くのかな? 納得はしたみたいだけど、少し私に対して失礼じゃないの!? と思ったが、そういえば私はまだ8歳だったことに気付いた。確かに8歳でこれだけの魔石を、魔物を斃して手に入れたと言ったら驚かれても仕方ないかも……。
「まぁ、とりあえず、嬢ちゃんはそこの詰め所の中で少し待っていてくれ。手前に椅子がある。そこに座っていてくれ」
私は、兵士の人に言われた通り座って待つことにした。待っている間、ゴブリン魔石がどれほどの価値があるかわからないけど通行料以上にはなって欲しいと、そんなことを願いながら売りに行ってくれた兵士の人を待っていた。
それからしばらく待っていると、先ほどの魔石を売りに行ってくれた人が戻って来た。
「ヘルガ隊長。換金が終わりました」
そう言って袋を渡していた。
「中に明細が入っています」
「わかった。ご苦労」
そう言うと、隊長さんがこっちに来て袋を渡してきた。
「中身を確認してくれ」
そう言われて中身を確認すると、銀貨が4枚と銅貨が5枚入っていた。明細の記載通りの
お金が入っていたのでその中から銀貨を1枚出して渡した。
「ちょうどだな。……嬢ちゃんは街に来るのが初めてだろうから教えておくけど、カードを持っていない人は街に入る度に税金として銀貨1枚かかるから、出入りするならどこかのギルドに所属してカードを作るといい」
「なるほど」
カードを持っていない人は街に入る度に税金が取られるのか……。それなら冒険者ギルドとかもあるのかな?
「それなら冒険者ギルドとかってあるの?」
「それはどこの街でもあるぞ。それなのにリンフレッドにないわけはないだろ?」
と少し呆れた感じで言われた。初めて街に来たのだからそんな風に言われても……。と思ったが余計なトラブルは起こさない方がいいと思い口を噤んだ。もし何かあったら面倒臭いから……。それにしてもこの町はリンフレッドというのか。とそんなことを思いながら冒険者ギルドの場所を聞く事にした。一応そのギルドに所属しようと思っているからちゃんと場所を聞かないとね?
「この街の冒険者ギルドはどこにあるの?」
「この通りをまっすぐ歩くと大きな建物がある。それが冒険者ギルドだ。手続きは終わっているから、街に入ってもいいぞ」
そう言われたので私は門を潜って街に入った。
門を潜っている最中に気付いたのだが、この国の貨幣価値がわからない……。まぁ、ここで生活していればそのうちわかるかな? とそんなことを思いながら街へと入った。