42.エミリアさんとのお話 (2023/4/3)
長い話だったけどエミリアさんは、何度か顔を顰めながらも口を挟まずに最後まで聞いてくれた。
「……といった感じです」
そう言うとエミリアさんは、こんなことを聞いて来た。
「まず確認だけどユアちゃんは、生きている?」
「はい。彼等は、死んでいると思っていますが……」
「そうなの」
とエミリアさんは、そう言って安心した様子だった。ユアの事が心配だったみたい。「さっきの話でゴブリンをたくさん倒したみたいだけどその証明になるものは、何か持っている?」
「あ、それなら」
と言ってゴブリンの魔石が入った袋をいくつか取り出した。
「これが今日倒したゴブリンの魔石です」
そう言ってエミリアさんに渡すと驚いていた。
「これを全部レーナさんが?」
「全部ってわけじゃないですけどほとんどは、そうです」
「ほとんど?」
そう言ってエミリアさんが少し首を傾げていた。
「あ、一部ユアが倒したのもあるけど助けてくれたからと言ってユアが倒した分の魔石まで貰ってそれに解体も半分以上やってくれました……」
「なるほどね」
と言ってエミリアさんが苦笑いをしていた。
「こんなにもあるからユアにあげようとしたら断られました……。かなり手伝ってもらっているからある程度受け取ってくれてもいいのに」
そう言うとエミリアさんが少し驚いた表情をしたけど、すぐに表情を取り繕った。
「この魔石は、換金しておくわよ?」
「お願いします」
するとエミリアさんは、立ち上がって扉を開けたかと思ったら誰かにその袋を渡してから座り直した。
「とりあえず彼等との件は、おそらく大丈夫だと思うけど何か聞きたいことでもある?」
「え? 彼等の件は、もう大丈夫なの?」
「まぁ、よくあることだからね?」
と苦笑いをしていた。まぁ、そう言うくらいだからかなりのだろう。どれだけ問題を起こしているのよ。と思ったけどそれだけ注意をされてもやるという事はどうしようもないのかもしれない。
「そんなに問題起こしているのにEランクパーティとか言っていたけど本当なのかな?」
「それは、本当よ。まぁ、4年以上もやっていてEランク止まりというのは、そのいろいろ問題を起こすのが原因だけどね」
Eランクパーティという事が本当だという事に驚いたけど問題を起こさなければDランクになれるだけの実力があることに驚いた。
「彼等でもDランクになれる実力があるの?」
「一応、あるわね。あれでもDランクの下の方ぐらいには、入れると思うわ」
「え? あんなに弱かったのに?」
「それは、あなたがそれ以上に実力があるからよ。経験が足りないのもあるかもしれないけど少なくともCランクぐらいの実力は、あると思うわ。魔法とか使えたらBランクもいけるかもね?」
と笑顔でそんなことを言われた。確かに、経験が足りないと思うけど魔法が使えたらBランクになれる可能性があるのかな? そこまで実力があるようには、思えないけど……。でも、今の話は、エミリアさんの見立てでの話なのかな? と思って聞いてみた。
「それは、ギルドマスターさんの見立てですか?」
「まぁ、そうね。あと私の事は、エミリアと呼んでもいいわよ?」
「じゃあ、エミリアさん」
そう呼ぶとエミリアさんは、少し驚いていたけどすぐに嬉しそうにしていた。
「はい」
「私の事は、もう少し砕けた感じで呼んでください」
「……レーナちゃんと呼んでもいいかしら?」
「はい」
そんな会話をしながら先ほどの話に出てきた魔法のことについて、少し考えたもしかして使える人は珍しいのかな? とそんなことを思って。
「さっきの話で少し気になったのですが魔法を使える人は、珍しいのですか?」
「そうね。魔法を使える人は、珍しいと言うほど少なくはないわ。10人ほどいれば少し使える人が居るくらいには。でも、実践で使えるような人は一握りね。パーティに1人いたらかなり有利になるわ」
なるほど、魔法自体はそこまで珍しくないと知って少し安心した。
「……もしかしてレーナちゃん使えるの?」
そう聞かれて少しビクっとしてしまった。でも、いつまでも隠し通せないと思うしエミリアさんなら言っても大丈夫かな?
「……少しだけなら」
「それは、凄いわね。将来有望かもしれないわね」
「それは、流石に言い過ぎですよ。私にCランクになれるほど実力があるとは思えません」
「それくらいの実力はあるわ」
とエミリアさんに言われて今度は、私が驚いた。かもしれないじゃなくてあると言われたからだ。どうしてそんなことが言えるのかが不思議に思って聞いてみた。
「どうしてそう思ったのですか?」
「昇格試験のこと覚えている?」
昇格試験のことなら覚えている。誰と戦ったのかは、覚えていないけど今のオノマ達みたいなのと戦ったはず。
「一応」
「あの時レーナちゃんは、太腿を切り付けてから切り付けた場所を蹴っていたでしょ?」
確かそんなようなことしたかも…そう思って頷く。
「あの後医務室の子に彼の様子を聞いたら左足の付け根辺りの骨が砕けていると言ったわ」
「え?」
確かに思いっきり蹴ったけど骨が折れていたとは…。
「まぁ、彼等の自業自得だけどね?」
確かに。と思って首を縦に振る。
「でも、それだけのことができるなら戦闘が上手くなればそれくらいの実力にはなるはずだわ。それに、打ち合いとか本気を出していなかったでしょ? 最後の踏み込みは、今までと全然違ったからね」
とこちらを見ながら言ってきた。確かにそうかもしれないけどそれでも買い被り過ぎだと思った。
「……それでユアちゃんのパーティについて話していたわよね?」
「そういえばそうでした」
彼等のパーティについて聞いていたのにいつの間にか違う話をしていた。とりあえず聞きたかったことを聞いてみることにした。
「あんなことがあったけどユアは、あのパーティから抜けられないの?」
「出来るとは、思うけど彼等が騒ぐかもしれないわね」
「……確かに」
彼等は、ユアを物のように扱っていたしちゃんと報酬を渡していないようだった。ユアがもしいなくなったらその分の収入が減るかもと言って反発しそう……。
「もしセリルがユアちゃんを死んだことにしてパーティから外していれば楽だけど……」
あの人かぁ……でも変な所で行動力ありそうだからもうやっている可能性が高いかも?
「そうですね」
「後で確認しておくわ」
「お願いします」
「話としては、これで終わりだけど他に聞きたいことない?」
そう聞かれたけどこれ以上聞きたいことは、思いつかないからいいかな?
「……多分大丈夫です」
「そう、何かあったらユアを助けてあげてね?」
「わかりました」
「じゃあ、私は、他にも仕事があるからこの辺で」
「はい」
そうして部屋を出ると。
「帰りにエレナの所よってから帰ってね?」
と言ってエミリアさんは、去って行ったのだった。