40.オノマ達について (2023/4/3)
「それで、そんな出鱈目を言って何がしたいの?」
そう言うとオノマは、顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた。怒り過ぎると言葉が出ないの? とそんなことを思っていると隣にいたギルド職員のセリルが口を挟んできた。
「出鱈目では、ありません。実際に彼のパーティメンバーは、怪我をしていましたし1人は、行方が分かっていません。話を聞いている限りでは、亡くなっているでしょう。あ・な・た・のせいでね?」
とセリルは、私がやったということで確定しているかのように言ってきた。彼等からしか聞いていないと思うけどどうしてそんなに自信満々に言えるのかが私は不思議に思った。
「それでその証言は、彼等以外に誰から聞いたの?」
「そ、それは……彼等だけで十分ですが?」
それだけでは不十分過ぎるでしょ……。と呆れているとセリルが私をみて怒ってきた。
「な、何ですかその顔は! 証拠があるから十分じゃない!」
「あ~、はいはい。それでどの辺りであったの?」
「西門の近くの森だ」
とオノマが言った。
「え?」
私が入った門は東門で、ヘルガさんからオノマ達もその門から入ったって聞いたけど一体どういうことなの? と思いながら驚いているとオノマが怪訝そうな顔をしていた。もしかして、自分がどこから入ったのか分からなくて適当に言ったのかな? まぁ、私からしたらそんなことはどうでもいいけど……。
「とりあえず、彼が西門というのなら私は関係ありません。私は東門から出入りをしているので」
「そ、そんなことはない」
「どういうこと?」
とセリルは、怪訝そうにしながら私に聞いて来た。
「私は、東門から出入りしていますから西の森には、行っていませんが?」
するとセリルが小さな声で「(え?)」と言ったがすぐに何事もなかったように話し始めた。
「嘘をついてもあなたの為にならないわよ? あ、どちらにしてもあなたの罰は、変わらなかったわね」
と話しているうちに調子が戻って来たのか徐々に勝ち誇ったかのように話してきた。本当にどこからそんな自信が湧いてくるのかとても不思議だけど……。
「嘘だと思うのなら東門にある詰め所で聞いて来ればいいじゃない。そこでヘルガさんって人に聞いたら分かるから」
「!?」
そう言うとオノマが驚きながらやや汗を流していた。そう言えばヘルガさんが「彼等には、気を付けるように」とか言っていたよね? 彼等の様子からしたら何か問題を起こして不味いと思っているのは確実だけど。
「気になるのなら今から行きますか?」
「……」
そう言うとオノマは、黙り込んでいた。するとセリルがオノマの前に出てきた。
「それなら、私が責任を持って確認して来るので大丈夫です」
と彼を庇うようにそんなことを言ってきた。彼女が本当にそんなことするのかな? 適当に済ます可能性が非常に高いと思うけど……。
「それなら、私も一緒に行きましょう」
「それは、結構です。私がギルド職員としてしっかりと調査しますから」
と少し焦り気味に言って来た。この様子はどうみても怪しいでしょ……。とそんなことを思いながら、セリルを見ながらこう言った。
「あなたではない他の職員なら構いませんが?」
「私では、不服ですか?」
と苛つきながらそう言ってきたので私は頷きながらこう答えた。
「そうだけど?」
私がそういうと彼女は、顔を引き攣らせながら徐々に顔色が赤くなっていった。
「あなたがしたことは、即処分にしても問題ない事なのよ? それを分かって言っているの!?」
とセリルが怒りだした。そもそもの話し、オノマの供述から既におかしいから……。と呆れながらセリルのことを見たが、彼女はオノマの話を信じているから私の言い分を聞くはずもないか……。と思った。
「そもそも私は、そんなことしていないから」
「本当にそんなこと思っているの? 私がその報告をすればギルドを脱退させられるかもしれないのに?」
「その話は、上の人が確認するでしょ?」
「何当たり前のことを……」
と怪訝そうにそんなことを言った。その話を聞いて彼女の話を無視しても実は、問題ないのでは? と思った。彼女が勝手に大きな話にしているけど、受付嬢でしかないセリルにそんな権限があるとは思えない。それに問題があれば上の人に話が行くはずだから少なくてももう一度調べてくれると思った。
「私が書く報告書に問題はないからあなたなんて足ギルドを脱退させられるわ」
本当にどうしてそんなに自信満々に言えるのだろう……。と思いながら流石に彼女の相手をするのが面倒くさくなってきた。
「もう勝手にすれば?」
そんな投げやりの回答をすると彼女は、嬉しそうにしていた。
「そんなことを言って後悔しても知らないわよ?」
とセリルは、言ったがそれはあなたでは? と思った。まぁ、話が通じないようだし誰か他の人にお願いしようとそんなことを思った。
「あなたたちそこで何やっているの?」
するとギルド内にそんな声が響いたのだった。