38.ユアが慌てていた理由 (2022/4/3)
「れ、レーナちゃん。どうしよう!」
ユアは、彼等の話を聞いて私に聞こえる声の大きさでそんなことを言ってきた。そんなに慌てることかな? と思ったけどこれが普通の反応だと今更ながら気付いた。
「どうしようと言われてもあんなに大きな声で言われたらねぇ……」
どうしたらいいのか……。でも、彼等の話を鵜呑みにする人は、どれだけいるのかな? いろいろ問題を起こしているみたいだし、信じない人もそれなりにいると思うけど……。
「それもそうだけど、ギルド職員が彼等に付いたら……」
「あぁ、そういうこと」
ユアが何故そんなに慌てているのかが分かった。ギルド職員がその話を信じて処罰を与えたら大変なこと危惧していたのだと。
「でも、ギルド側の職員も彼等の問題行動とかを把握していたらそこまでのことは、しないのでは?」
ギルド職員と言ったらエレナさんとギルドマスターのエミリアさんとしか話したことないけど、そう言ったことはちゃんと把握していそうだ。だからユアが慌てていることを少し不思議に思った。
「そ、そうだけど彼等と話している受付の人だけは、違うの!」
あまりにもユアが必死だったので、過去に何かあったのかもしれないと思った。
「……因みにどんなことがあったの?」
「それは……」
と言って、一旦深呼吸をしてからどんな出来事があったのか話し始めた。
その内容はユアが冒険者登録をした日のことで、オノマ達の要求でGランクの昇格試験を受けたそうだ。その時、初めて剣を持って戦ったのに試験をそのまま合格されそうになったということだった。まぁ、実際には、他の職員もたまたま見ていたことで事なきを得たが、もしそのときに他の職員が見ていなかったら戦闘に関することを何も知らないまま実践をさせられて死んでいたかもしれないとユアは言っていた。他にもいろいろとあったみたいだけどギルドの規則を守っていないこともあったそうだ。それと気に入った人に対しては、とことん甘いらしくてオノマ達のことを気に入っているらしいとのこと。だから私のことが危ないと危惧をしてくれたそうだ。
「ユアが言いたいことは、分かったわ」
そう言うとユアは、私にユアの言いたいことが伝わったという事が分かって少し安心した様子を見せたがそれでもこれからの事が不安らしい。
「でも、面倒臭い事になるのは、避けられそうにないわね……」
「それは……」
と言ってユアが申し訳なさそうにしていた。
「ユアが気にすることじゃないよ。彼等が悪いだけだから」
「でも「大丈夫だから」」
とユアが何か言おうとしたところに被せるようにそう言うとユアが不安そうに私の方を見て来た。
「……本当に大丈夫なの?」
「う~ん。それなりには……。何とかなると思うけど、少し時間が掛かるかも?」
ユアは、不安そうにしながらも一応納得してくれたみたいで頷いてくれた。