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32.モンスタートレイン (2021/11/1)



「!? 魔物が近づいているみたい。それもたくさん」


「え?!」


 急に言われてユアは驚いていたがしばらくして街道の方から誰か走って来た。


「誰かがこっちに……。ほ、本当にたくさんの魔物が……。レーナちゃんが言っていた通りだ」


 と私が言っていたことを本当のことだと理解してくれた。とりあえず、冒険者達はどうしようかな? と思ってよく見るとユアのパーティメンバーだった。


「え? あ、あれは……」


 するとユアも追われている冒険者が誰なのか気付いたようだった。


「とにかく逃げよう!」


「う、うん」


 そう言って山の中に向かって走り出す。その時にチラッと後ろを見ると彼等は私達の事に気付いたようだった。


 ユアのペースに合わせて山を登ったりしていたが彼等も私達の後を追いかけて来た。もしかして私達のことを追いかけている? とそんなことを思いながら走っていたが彼等との差が徐々に縮まっている。ユアのペースに合わせているから彼等との身体能力の差を考えると仕方ないかもしれない。できるだけ進路をずらしながら進んで行くが彼等は私達を追ってきているようで追いついて来た。


 すると「ピュ!」と何かが飛んできた音がしたと思ったらユアが「キャッ!」と悲鳴を上げた。ユアの方を向くと彼女は、転んでいた。


「大丈夫?」


 どうしてこんなタイミングで……と思ったが、もしかしてたら何かされたのかもしれないと思い声を掛けたが返事は、無かった。何があったの? と思いながらユアの元に駆け寄ると脇腹の下から血を流していた。


「ッ!!」


 もしかしてと思って周囲を見渡すと近くには、血の付いた短剣が転がっていた。すぐに彼等の方を見たらオノマが小さくガッツポーズしているように見えた。やっぱり狙って投げていたようだ。どうしてそんなことを……。と思ったけどすぐにオノマ達がしたいことを理解した。


 自分達が逃げるためにユアをゴブリンの囮にしようとしてやったのだと。何て言うことをするの! と腸が煮え返るような思いをしたが彼等は、私達から離れるようにそのまま駆け抜けていった後だったのでとりあえず後回しにしてユアの処置することにした。

とりあえずユア怪我を確認するために服を捲ると深めの傷ができていた。


「沁みると思うけど我慢をしてね」


 そう言って傷口に水を掛けて洗うとユアは、痛そうにしながらも歯を食いしばって耐えていた。それからポーションを掛けると傷口が徐々に塞がっていくと次第に楽になったようで目を開けた。


「もう大丈夫?」


「うん」


 そう言って上体を起こしてあげたときユアの体が強張った。


「れ、レーナちゃん」


「大丈夫」


 そう言いながら後ろを振り向くとそこには、ゴブリンが半円を描くように武器を構えて立っていた。後に逃げようと思えば逃げ切れると思うけどユアがいるからそれができるとは思えない。でも、先程の件で凄く苛ついてからこの苛立ちをゴブリンにぶつけて少しは発散しようと思いながらゴブリンと向き合った。


「ユア、少しは、戦えそう?」


 先ほどまでずっと走っていたから体力的にもかなり辛い部分もあると思う。でも、私がしっかりとゴブリンを抑えながら倒すことができるかと聞かれるとうまくできるかは分からないから最低限やり過ごすくらいはできて欲しいと思った。


「た、多分」


 ユアは自信なさそうにそう言ったが無理とは言わなかったからある程度は頑張ろうと思っているのかもしれない。私もできる限り最善を尽くそうと思った。


「私はゴブリンに攻撃を仕掛けるけど、ゴブリンはユアの方に行くかもしれない。その際はしっかりと相手をしてくれるかな? 数が多かったら持ち堪えるだけでもいいからどうかな?」


「で、出来るだけ頑張る」


「分かった。お願いね?」


 そう言って私は、ゴブリンの方に向かって歩き出した。



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