前へ次へ
45/849

14.謎… (2021/3/19)



「ちょっと待て」


 私がその場から去ろうとして歩いていると、呼び止められた。今度は、何? と思いながら振り向くとユア以外のメンバーがこそこそと話をしてから私の方を向いた。


「お前、何ランクだ?」


 何を聞いてくるのかと思えばそんなことを聞いて来た。確かこの前ユアと話しているときに彼等だけで話しているときは、よからぬことを考えているとか言っていたから無闇に答えない方がいいかもしれないと思った。


「どうしてそんなことを聞くの?」


「いいから答えろ!」


 まさかの怒声になんなのこいつ。と思いながらわざわざ質問に答える必要もなかったからさっさと立ち去ればよかった……。と内心後悔していた。


「いやだ」


 そう言ってそのまま去ろうと歩き出したら後ろで剣を鞘から抜く音がした。ランクを聞こうとするだけでそこまでする必要があるの? と思っていると案の定呼び止められた。


「動くな! 動いたら背後から切り付けるぞ?」


 そう言われたので仕方なくその場で止まる。彼等の相手ならそこまで脅威を感じないから何かあっても何とかできると思ったからだ。


「そのままこっちを向け」


 私は言われた通り背後を振り返るとユアを除いた全員が武器を構えていた。


「そ、そんなことしてギルドに発覚したら大変なことになるよ!」


 とユアは、オノマ達の行動を止めようとしたがオノマは、そのことが気に障ったのか剣の側面でユアの頭を殴った。


「きゃあっ」


「黙っていろ!」


 そう言ってから私の方を向いた。一瞬剣でユアが切られるのかと思い、少しヒヤッとしたがそのようなことがなくて少し安心した。でも、ユアが言っていることは、事実なのに彼等はどうしてそんなことをしたのかが分からなかった。一応ユアの方を確認すると殴られた場所が痛いみたようで手で頭を押さえながら蹲っていた。


「彼女は、あなたのパーティメンバーじゃないの?」


「それがどうした?」


 すると彼は同じパーティメンバーなのに彼女だけそう言う扱いが当たり前だと思っている様子だった。まぁ、彼女もそれを察していたみたいだけど、それにしてもこの扱いは酷過ぎる……。こんなことが普段から行われていたと考えると私は思わず身震いをしそうになる。


「お前は、俺に逆らったから俺の言う事を聞け!」


「はぁ!?」


 え? こいつ急に何言っているの? どうしてそんなことになったのかが分からずその発言にただただ驚いた。


「お前は、俺と決闘をしろ」


「え?」


「寛大な俺は、武器なしでの戦いにしてやろう。お前は、武器を隅に置け」


 そう言ってオノマは、剣を鞘に戻していた。


 一方、私はというとどうして急に決闘なんかしないといけないの? そもそもオノマが言ったことを無視した程度でなぜそんなことに? と意味が分からず困惑をしていた。


「武器なしの決闘だ。必要のないものは、その辺に置け」


「どうしてあんたの言うことを聞かないといけないの?」


「俺の言うことを聞かなかったのだから当たり前だ」


 ……もう彼が言っていることを聞いているだけで頭が痛くなってくる。そもそもどんな思考回路をしていればそんなことができるの? とそんなことを思いながらオノマとの会話を試みたが会話が成立しなくて渋々この決闘を受けることにした。


 そうして私は武器を近くの木に立てかけてオノマに言われた通りの場所に立った。

そういえばだけど決闘と言ったら何か理由があって行うと思うけど、何も聞かされていないような? とそんなことを思った。


「ブラットが合図をしたら始める」


「その前に聞きたいけど、何を賭けて決闘するの?」


「はぁ?」


 決闘を持ちかけてきた本人が怪訝そうにこっちを見て来た。もしかして決闘がどういったものか分かっていないの? ……いや、おそらく何も考えていなかったのだろう。そんな彼等に呆れながら決闘とは、どういうものなのかを説明することにした。


「決闘とは、互いの諍いを解決する手段として用いられるもの。また、勝敗の条件をしっかりと決めないのなら相手を殺めても問題ない。そういうものよ」


 とそんな感じで、ざっくりと教えた。後で気付いたけど、この世界でも同じ意味なのかな? と思ったけど、多少違うくらいは、いいかと思い考えることを止めた。


「そ、それくらい知っているし、なぁ?」


「あぁ」


「そ、そうね……って何か語っちゃっているの!」


 と彼等がそんなことを言い出した。明らかに知らなかったようで動揺していたのに……。


「そう? それなら何についての決闘なの?」


「そ、それは……ゴブリンの横取りだ。お前がやったことについてゴブリンをもらうだけで納得できないからやる!」


 うん。やっぱりというか無理やりな理由だった。それなのに結局何を賭けるのか言っていないけど……。


「……それで私は、何を賭ければいいの?」


 そう聞くと彼は、目を泳がせながら必死に考えてから言葉を紡いだ。


「……お前の持ち物全部だ」


「じゃあ私は、ユアをあなたのパーティから貰うわ」


「え?」


 さっきまで痛そうにしながら私の方をチラチラと見ていたユアは、私の発言に驚いてこちらを見てきた。まぁ、彼が決闘の話をした辺りから彼等から何を賭けてもらおうか考えていた。その答えが今言ったことだ。


 彼等の様子などをみていて不当な扱いをされている彼女を助けたいと思ったからだ。今回の決闘はある意味ちょうどよかったのかもしれない。


「ふん、そんなことならいいだろう」


 と彼は、私が言ったことを何も咎めることなく納得していた。そのことに少し意外に思ったけど彼等は、ユアを雑に扱っていたからユアの重要性を理解していなかったから納得してくれたのだと思った。今は、それがありがたいが……。


「それじゃあ勝利条件は?」


「そ、それは……相手が降参するまでだ」


「そう。分かったわ」


「それじゃブラット合図を頼んだ」


「分かった」


 それからしばらくして開始の合図があった。




前へ次へ目次