11.服屋さんへ (2019/12/26)
ローナさんのお店に着くとユアの様子が少しおかしかった。
「どうしたの?」
「いや、その、こんな大通りにあるお店に来るとは、思わなくて……」
と言って少し気後れしているようだった。
「まぁ、いいから入ろう」
そう言ってユアの手を引きながらお店の中へと入った。
「あら、レーナちゃんじゃない」
「こんにちは」
「今日は女の子と一緒なのね。今日は何を買いに来たの?」
「靴下を買いに」
「靴下は、こっちにあるよ」
そう言って靴下がたくさん置いてある場所に案内してくれた。
「この辺にあるものなら大体大丈夫だと思うわ。ゆっくりみて行ってね?」
そう言うとローナさんは、後から入って来たお客さんの元に向かって行った。そんなローナさんを見送ってからユアに向き直った
「さて、たくさん置いてあるけどどうする?」
するとユアは、手に持っていた袋をみてから目の前にたくさん置いてある靴下を見る。
「なるべく高くなくて丈夫なものがいいかな?」
「それなら大丈夫じゃないかな?」
「どうして?」
とユアが不思議そうな顔をして聞いて来た。
「私もここで買っているからね?」
そう言うとユアは、何故か曖昧な表情をしていた。どうしてだろう? 信用がないのかな? と思い私は少し落ち込んだ。
「とりあえず、少なくても3足は、買おうね?」
「う、うん」
私がそう言うとユアが首を縦に振りながら頷いていた。
それからユアはいろいろと悩んでいたため、少しだけアドバイスや懸念していることを解消してあげると3足選び終わった。まぁ、アドバイスと言っても、丈の長さと値段を気にしていたためこれから寒くなるため丈が長い方が暖かくていいよ? ということやそこまで高くはならないよ? と教えただけだが……。
因みに3足買って銅貨5枚だったからユアは驚いていた。流石にどのようなことで驚いているかまでは分からなかったけど、いい買い物になったと思う。そんなことを思っているとあることを思い出した。
「あ、ローナさん」
「どうしたの?」
「ローナさんが知っている防具屋さんとか靴屋さんを知りませんか?」
「それなら隣のお店がそうだけど?」
「え? そうなの?」
まさか隣のお店がそうだとは思わなくて驚いた。何度もローナさんのお店には来ているのに、隣が何のお店なのかを知らないということに今更ながら気付いた。よく考えると、自分が行こうとしたお店や気になった場所以外のことは全く知らないかも……。
「え? もしかしてレーナちゃん、知らなかったの?」
ローナさんは私が知らなかったことにやや驚きながら聞いてきたので頷いた。
「そうなの……まぁ、とにかく隣のお店がそういうお店だよ。まぁ、夫のお店だけどね?」
「え!? ローナさんの旦那さんが隣のお店で働いているの?」
そう言えばフローラのお父さんの話は聞いたことなかったかも? それにフローラの話にも出てこなかったからいないと思っていた。
「そうだよ。いいお店かは、レーナちゃん次第かもしれないけど欲しいものがあるのなら覗いてみたらどうかな?」
「分かりました。行ってみます」
私はそう言ってローナさんのお店を後にして隣のお店へと向かった。
ローナさんのお店を出て隣にあるお店を覗くと靴や防具が置いてあった。
「本当に隣にあった……」
ローナさんが言っていた通り、私達が探していたお店だ。
「レーナちゃんは、本当に知らなかったの?」
「まぁ……」
ユアは、こんな気付きそうな所にあるのに、本当に気付いていなかったの? と不思議そうに聞いて来たので何だかとても気まずい。欲しいものは探していたから今回は聞いたけど、必要ないものは気にしていなかったからまさか知っているお店の隣にあるとは思わなかった。まぁ、過ぎたことは仕方ない。と思い気を取り直して中に入ろうと思った。
「とりあえず中に入ろうか?」
「うん」
そうして私達は店の中に入った
中に入ると靴や防具の他に、ローブ、手袋、ブーツと言った革製品の物がたくさん置いてあった。
「フローラのお父さんは、革職人さんなのかな?」
「? フローラ?」
とユアは、知らない名前が出てきて首を傾げていた?
「ああ、ユアは、知らないと思うけどローナさんの娘さんのことで、大体私と同い年位の女の子だよ」
「そうなの……。レーナちゃんと仲がいいの?」
「う~ん。どうなのかな? 最近あったばかりだから何とも言えないけど悪くはないと思うよ?」
「そうなの」
とそんな会話をしていると奥から男の人が出てきた。髪は黒色で、何だか頑固そうな雰囲気をした男の人だった。
「……何をしに来た?」
「え、えっと、防具とブーツをみに来ました」
「私は、いいものはないかと思ってみに来ました」
「そうか……。どんなのを探している?」
あ、もしかして接客をしようとしているのかな? 硬そうな雰囲気を出しているけどこれがこの男性の普通なのかな?
「防具はできるだけ軽いもので、ブーツは動きやすいものを」
「できれば防水だといいかな?」
「え?」
「それならある」
と男の人はそう言うとお店の奥へ消えて行った。
それからしばらくすると戻って来た。手にはブーツや、小さい防具も持っていた。
「これはどうだ? 試しに履いたり、装着してみろ」
「わ、分かりました」
そう言うとユアは、試しに履いたり防具を装着していた。
「どうだ?」
男の人は少し心配そうに聞いて来た。普段から作っているはずなのにどうしてそんなことを聞いたのかな? と少し疑問に思ったけどユアの様子を見ている感じ良さげだったので気にしないことにした。どんな人にでもそう言う対応をしているのかもしれないし。
「とてもいい感じです」
「そうか、そうか」
ユアがそういうと、男の人は嬉しそうに目を少し細めていた。
「このブーツと防具は、いくらするの?」
「ブーツと防具が銀貨2枚ずつで銀貨4枚」
「え?」
その値段を聞いてユアが驚いていた。
「どうしたの?」
「その、いい防具なのに値段が安くて驚いたの」
「そうなの?」
「うん」
と言ってユアが頷いたから多分安いのだろうと思って男の人をみると頬を掻いた。
「確かに普通の防具よりは、安い。小さい子用に作ったけど買いに来る子がいなかったからうまくできているか分からなくて気になっていた。そしたらたまたま来た君達がそう言ったものを欲しいと言ったから持ってみただけだ」
「なるほど。でもそれがどうして安くなるの? みた感じ小さいだけで大人用なのとほとんど変わらないと思うけど?」
「それは、小さい子が防具とか買いに来ることなかったからだ。だから、意見を聞きたかった。それにこの店でそういう装備を買いに来るのは、新人のような人達じゃないから子供とかは、来ることなかったから在庫としてどうしようかと思っていたから安くても買ってくれた方がありがたい」
それなら値段が安いということは分かったけど、今までのユアの様子から銀貨を稼ぐことは大変だと思うからその値段でも子供が買える値段じゃないと思う。それに定価だったらいくらだったのかな……。とそんなことを思いながらユアに買おうと言って今回の目的を果たしたのだった。