4.ゴブリン (2019/7/20)
干し肉を食べ終わると草原を突っ切って行こうと思い歩き始めたのだがどうやら湿地みたいで所々足が掬われる。少し歩きづらいなぁ。そんなことを思いながら歩いていると茂みの中から何かが出てきた。
「ゴギャ?」
そう鳴いてその生き物はこちらを見て来た。
「ゴブリン……?」
初めて見る魔物に少し驚きながら青黒い色をした醜い顔が視界の中に入る。
「ゴギャギャ!」
すると欲望に滾った目をこちらに向けたと思ったら私に向かって走って来た。私は、来た道を戻るように少し走ってある位置まで来たら振り返った。少し離れた場所には、ゴブリンがいるのだが何を勘違いしたのか私が止まったことに喜んでいるように見える。
「!? ―ゴギッ」
すると急にゴブリンが倒れた。走って来た勢いのまま泥濘に足を捕られて転んだのだ。どうやら上手く引っ掛かったみたい。
「よし」
私は、倒れたゴブリンに向かって走って頭を蹴るため足を後ろに振り上げるとゴブリンが顔を上げたので思いっきり蹴り上げた。するとグチャという音を立てながらゴブリンは仰向けで倒れた。
「ゴギャギャギャギャギャ……」
と鳴きながらゴブリンは顔を押さえ苦しみもがいている。思ったよりもいい蹴りが決まったみたいだ。
「エアカッター」
そんなゴブリンに風魔法を使うとあっさりと首が切れて転がった。
「あれ? 思っていたよりも強くない?」
魔物だからある程度強いかもしれない。と思っていたけどそこまで強くないみたい。
「まぁ、ゴブリンだからかもしれないけど……」
一般の人が武器を持っていれば数人がかりで倒せるのがゴブリンだ。でも、シルヴィアは、山の中でいろいろなことをしていたから割といろいろなことに慣れている。しかも、前世でやっていたゲームの影響もあり戦闘面での経験は、なかなか豊富だ。ただ身体がそれについていけるかは、微妙な所だが……。
それに当の本人は気付いてはいないけど、ほぼ俯せの状態から蹴って仰向けに倒している時点で蹴りの威力がおかしい。それに倒したゴブリンは、普通のゴブリンではなく上位種になったばかりのゴブリンで普通のゴブリンよりも強い。それなのにあっさりと倒したということは、ゴブリン程度ならどうとでもなるような戦力を持っているということだ。まぁ、当の本人は、そのことに気付いていないけど……。
「とりあえず魔石を取り出そうかな?」
魔物には、魔石があるらしいからとりあえず探してみようと思った。まだ魔石を見たことないからどのような物かは、分からないけど……。
そんなことを思いながらゴブリンの死体に近づくと切断面から赤黒い血が流れていた。そういえば血が流れているのを見ても何とも思わないような? と思ったけどすぐに小さい頃から生き物捕まえて食べていたことを思い出した。既に耐性があるのか……。まぁ、こんな世界でいちいち血をみて竦んでいたら生きていけないと思い、もう考えないことにした。
それからゴブリンから取れる素材は、何かあるのかな? と思ったけど知識の中には、そんな情報はどこにもなかったので魔石を取ることにした。ナイフを取り出してからいざ取り出そうと思った時魔石がどの部分にあるのか知らないことに気付いた。とりあえず心臓がありそうな辺りからと思って胸辺りから切り始めた。すると黒っぽい石みたいなのを発見した。
「これが魔石なのかな?」
そう思って取り出してから水で洗ってみると3センチほどの黒い水晶みたいだ。とりあえず取り出せたから麻袋に入れてからアイテムボックスに収納した。
「とりあえずこれで終わったから先に進もう」
そう思って歩き出そうとしたら何かを蹴った。何だろうと思って何を蹴ったのかなと思って下を確認するとゴブリンの頭だった。何だ、ゴブリンの頭か……。と思ったらゴブリンの頭の左目辺りが大きく陥没していた。
「思いのほか蹴りのダメージも効いていたのか……。それにしても頭が一部陥没していたのに死んでいないとかゴブリンって思っていたよりも生命力が強いのかな?」
そんなことを考えながらその場を後にした。
それから暗くなるまで歩いていたけど、これといった変化はない。何回かゴブリンに遭遇したけど魔法ですぐに片付けた。蹴りとかでも倒せそうだけど無駄な体力を使いたくなかったから魔法で片付けた。当分の間野営が続くかもしれないから少しでも体力を温存したいと思ったからだ。
早く街につけるといいなぁ……。とそんなことを思いながら歩いていた。
それから辺りが暗くなったので寝やすそうな場所を探してからご飯を食べ、それから寝ることにした。昼に食べた干し肉を食べてから身体をタオルで水拭きをした。本当は、お風呂に入りたいけどそんなことはできないため我慢。そんなことを思いながら身体を拭いていると服やスカート、ブーツが泥とゴブリンの血で汚れていた。もしかしたらゴブリンの血の臭いで他の魔物が集まってくるかも知れないからできるだけ念入りに水で洗った。
そうして洗い終わると魔法を使って乾かしてみると思ったよりも上手くできたみたいで冷たくない。これならいいかな? そう思って横になり眠ることにした。
「おやすみ」
そうして私は、眠りに就いた。