24.フローラ視点2 (2019/9/8)
それから1週間が経った朝。学校に通うようになってから日課になった授業の復習をしていた。少し喉が渇いたから水を飲もうと思って台所に向かっている途中お母さんが布切れを持って表に向かっていた。どうして布切れを持って表に出て行ったのかな? そのことが気になったので水を飲んでから表に向かうことにした。
水を飲んでから表に向かいお母さんに声を掛けた。するとお母さんがこちらに気付いて呼んだので近くに行くとローブ? のフードを被っている私より少し背が高い子がいた。
誰なのかな?
「この子は?」
「彼女は、レーナちゃんだよ」
「どうも?」
お母さんがそう紹介したのは女の子だった。もしかしてこの前話していた子ってこの子なのかもしれない。それにしても、女の子の声が綺麗だと思った。どうしてか分からないけど、何だか心地いいというかそんな風に思った。フードを被っていて顔を見ることができないのが残念だけど。とりあえず私も自己紹介したけど、その後はどうしていいのかが分からなくてお母さんの方をチラチラと見たが微笑ましそうに見られるだけでやや気まずい感じだ。どうしよう!? どうしよう!? とそんなことを思っているとお母さんが痺れを切らしたようで部屋で話なさいと言って彼女と一緒に奥へと連れて行かれた。
客間にでも案内するのかな? とそんなことを思っているとお母さんは、私の部屋に連れて来た。流石に私の部屋は、恥ずかしいと思ってお母さんに抗議をしたけど、結局私の部屋でお話をすることになった。私の部屋とか恥ずかしくて彼女の方を向くことができない。
「ほらレーナちゃん、室内だから上着を脱ぎなさい。それじゃあ私は、仕事に戻るから」
お母さんはそう言って部屋を後にしたけど、もしかして彼女の顔を見られるのかな? とそんなことを思って彼女の方を見ていると上着を脱いだ。そこから現れた彼女の顔を見て驚いた。青みがかった白髪に目鼻立ちの整った顔でスレンダーな体ととても綺麗で可愛いらしい女の子だった。こんな子とおしゃべりしないといけないの! お母さんハードルが高すぎるよ! そんなことを思っていると女の子の方から声を掛けて来た。
「どうしたの?」
「いや、その、綺麗だと思って……」
急に彼女に聞かれて思ったことをそのまま言ってからしまった! と思った。恥ずかしい……。
「お世辞は、別にいいのに……」
レーナちゃんは、そう言って恥ずかしそうにしていた。もしかして自分の容姿がすごく整っていて綺麗だと言うことを知らないのかな? でも、それだとどうしてフードを被っていたのかな? といくつか疑問が浮かんだがそんなことを会ってすぐに聞くのは、どうかな? と思ってやめておいた。その時になってまだレーナちゃんが立ったままだったことに気付いて座布団が置いてある場所に座ってもらった。
とりあえずレーナちゃんには座ってもらったけど何を話せばいいのかな……。と思っているとレーナちゃんの髪がまとめられていることに気付いた。何をつけているのかな? そう思って聞いてみるとどんなものなのか見せてくれた。それは、とても可愛らしい髪留めだった。
可愛いなぁ。
そう思いどこで売っているのか聞いてみると彼女が作ったと言った。そのことに驚きながら髪留めのことを褒めていたら熱が入り過ぎた。そんな様子の私にレーナちゃんの顔が若干引き攣っていた。しまった!? ついつい気になってやってしまったと思った。せっかく仲良くなろうとしたのにこんなことをしては、嫌われちゃうかも! どうしようと思いながら謝った。するといつの間にか涙が込み上げてやや視界がぼやける。泣いてしまったら、余計に迷惑が……。そう思って堪えているとレーナちゃんは、大丈夫と言ったが本当に大丈夫なのかな? そう思い顔をあげるとレーナちゃんがやや困ったような顔をしていた。
私が泣きそうだから余計に困らせているのだと思った時にレーナちゃんは、何か思いついたような表情をしたと思ったら急に視界から消えた。え!? そう思ったら私の横から風が吹いた。一瞬何があったのか分からなかったが急に髪を触られてびっくりした。そして後ろを振り向くとレーナちゃんがいた。
私の目で追えない速さで移動したことは、分かったけどどうして髪を触ったのかな? と思ったらレーナちゃんが髪を見るように言ってきたのでとりあえず自分の髪を触ると何かが付けられていた。何だろう? と思って確認をして見るとレーナちゃんが付けている髪留めと同じようなものが付いていた。驚いてレーナちゃんの方を見るとそれをあげるから元気出してと慰められてしまった。
髪留めをもらって嬉しいけどなんだか自分が駄々をこねたみたいで自分が少し嫌になった。髪留めを貰った代わりに何かお礼をしたいことを伝えると遠慮されたが私にできることで何かお礼をしたいことを伝えるとレーナちゃんは考えてくれた。
それからしばらく悩んでいたようだが何も思いつかないようだったので、私にできそうなことを挙げていくと一般的に知られていることを教えてほしいと言って来た。どうしてそんなことを知りたいのかな? と思ったらこの街に来たばかりだから分からないことがたくさんあるらしい。それと、この辺の地理についても知りたいと言われたので私の分かる範囲でということで教えることになった。
私の分かる範囲でレーナちゃんに説明をしていたのだが、彼女の飲み込みの速さに驚いた。一回教えただけで私の話したことを覚えているのだ。
そんなことに驚きながら教えていると昼の時間になったので休憩をすることにした。いつも通りお母さんにご飯のことを聞くと返って来た反応は、忙しいから何か作るか外へ食べに行ってと言われた。そこでレーナちゃんはどうするのかと聞くと外に食べに行くということだったのでついて行くことにした。
そうして、レーナちゃんに案内されて着いたお店は、暁の弄月亭という、この街では高級な部類に入る宿屋さんでした。あまりのことに驚いているとレーナちゃんに手を引っ張られて店内に入ってしまいました。こんな高級宿屋さんの食堂でご飯を食べて私の手持ちは足りるのかな……。ととても不安になっていた。
それからレーナちゃんに嫌いなものを聞かれたが、これと言って嫌いな食べ物は無いので大丈夫だとレーナちゃんに伝えると、レーナちゃんは注文をした。値段すら確認しないでそんな風に注文して大丈夫なのかな……。と思っていたら、その値段を聞いて予想より安くて少し安心した。高級店だからもっと高いと思ってヒヤヒヤしていたけどこれくらいなら何とかなる。それでも、高いのは変わらないけど……。
そうしておいしい昼食を食べ終えて私の部屋に戻り、住んでいる街周辺のことなどを大体教え終わるともう夕方になっていた。
レーナちゃんはいつまで大丈夫なのか分からないけど、私が必要かな? と思うことやレーナちゃんが知りたいことは大体教えることができたと思ったので、ここで終わるのがちょうどいいかもしれないと言うと、レーナちゃんは私にお礼を言うとそのまま帰ると言った。
今度はいつ会うことができるのかな? とそんなことを思いながらまた来てくれるように言うと分かったと返事をしてくれた。でも、今度は教える以外にも何かして遊びたいと伝えたら、微笑ましそうにしながら分かったと言って私はレーナちゃんと別れた。
そうしてレーナちゃんと別れてしばらく経った頃にレーナちゃんがいつ来るのかが分からないことに気付いた。これは、私がいるときに来てくれることを願うしかない……。
「早く遊びに来るといいなぁ……。仲良くなれたら同じ学校に通えないかな?」
そんなことを思いながらレーナちゃんが来る日を楽しみにしていた。