3.現在 (2019/7/20)
そんな生活を3年続けていたある日。山の中を探索していたら何者かに襲われて現在に至るわけだ。
「……私ってすごく過酷な環境で育ってないかな?」
前の世界の記憶が戻ったことにより今まで育ってきた環境について驚いた。でも、同時に捨てられてよかったのかも知れないと思った。
「もしかしてこれってある意味自由になれたのかも? ……とりあえずそんなことより現状を確認しないと!」
そう思って今の恰好と持ち物を確認した。
今の服装は、薄汚れたシャツにフード付きパーカー? みたいなものに膝丈ほどのスカートを穿いている。足元は、ハイソックスにブーツといった感じだ。持ち物は……腕輪しか持っていない。
「まぁ、森の中で何かしようとして襲われたからたいしたものは、持ってないか……」
と少し落ち込んでいたがあることに気が付いた。
「そういえば森の中に入って生き物を食べたりしていたときナイフとか調味料を持っていたような?」
そう思ってどうしていたか考えていたらなんと身に付けていた腕輪には、アイテムボックスとしての機能が付いていることを思い出した。その中に何が入っているのか確認すると塩、胡椒、干し肉、ナイフ、着替え(結構綺麗なもの)、タオル、コップ、皿、フォーク(どれも木製)が入っていた。
「思っていたよりも持ち物は充実しているし……。それにしてもこの腕輪のアイテムボックスの機能が付いているなんて……」
とそんなことを思いながらその腕輪をみたけど、私には普通の腕輪にしか見えなかった。
「これならただのアクセサリーに見えるから問題はないかな?」
因みにだがこのアイテムボックスは、3歳の誕生日の時に貰ったものだ。それ以外にもナイフや今履いているブーツも貰っている。今思うと3歳の誕生日にいいアイテムをもらい過ぎじゃないかな? アイテムボックス機能が付いた腕輪に切れ味がすごくいいナイフ、サイズが変化するブーツしかも防水とか……。貴族ってそんなに凄いものを子供の誕生日に毎年貰うのかな? まぁ、今はもう関係ないことだからいいか……。そんなことを思っているとあることを思い出した。
「そういえばお母さんが生きていた頃の私の誕生日(3歳の時しか覚えていないけど)にお父さんは、来ていなかったかも? というかお父さんと話した記憶がないかも? それにお母さんから貰った腕輪やナイフについては、お父さんに知られないようにと言っていたような……」
……もしかしてお母さんは、自分が殺されることでも知っていたのかな? あの時妙に真剣にいろいろなことを言われた気がするし……。
「まぁ、昔のことだしもう気にしなくてもいいか……」
お母さんがもし生きていたら別だったかもしれないけど……。
そんなわけで気持ちを切り替えて今は、どうやってこの森から抜けようか考えていた。
「一応、魔法やナイフもある程度使えるから何かと戦闘になっても多分大丈夫かな? それに食べ物はある程度持っているし、水に関しては魔法が使えなくならない限り困ることはないかな?」
そんなことを思いながら何かいい知識はないかな?? と思っているとあることを思い出した。
「そう言えば魔法とかイメージを強く持って行使したら威力が上がったり、詠唱とかもしなくてもよくなったりするとかあったよね?」
そう思い早速試してみることにした。まずは、普通に行使してみようと思い詠唱を始めた。
「『水よ、集い、敵を貫け』ウォーターボール」
そう言ってできた水は、何故かいつもの2倍ほどの大きさになって近くの木に向かって飛ばすと「ビシッ」といって木の皮が飛び散った。(いつものウォーターボールは30センチ位の大きさ)どうしてかは、わからないけどとりあえず検証が終わってから考えよう。
そう思い今度は、水を作り凝縮して勢いよく発射するように想像しながらやってみた。すると自分のイメージ通りこぶし位のウォーターボールができて飛ばしてみると『バッシュッ』と言う音がした。木に当たると今度は、『バンッ』という音を立ててこぶし位の大きさの穴が木にできていた。
「威力が違い過ぎる……」
今度は、詠唱せずに先ほどと同じことをやるとさらに威力が上がった。
自分でやっておいてなんだがここまでの差が出るとは思っていなくて驚いた。それにしてもいつもと同じようにやったにもかかわらず何故か2倍ほどの大きさになって飛んで行き威力も何倍かになっていた。
その後は、自分のイメージ通りに魔法を放つことができるか確かめていたが問題なく作ることができた。ただ魔力消費はイメージしたものと違ったけど……。(水の量もおそらく同じ)
このことから多分だけど前世の記憶を取り戻したことが影響していると思った。確証はないけど多分そんな感じだと思う。急に威力が上がる理由とかそれくらいしか思いつかないし……。
それにしてもイメージして使うだけでこんなにも強くなるとは……。まぁ、強くなれることはいいことだけど。
「よし。これなら何とかなるかも」
目が覚めたときいきなり森だったからどうしようかと思ったけど案外生きてゆけそうな感じで安心した。というか自分の家にいなくて本当に良かった! と思った。
山の中での生活の方が自分の家で過ごしているよりも過ごしやすいと思える元実家に驚きだが……。
そんなわけで早速街を目指して移動しよう! そう思ったけど、どの方角に行けば街があるのかがわからないことに気付いた。と、とりあえず山を下りてみよう! と思って山を下って行った。
山道は、足場が悪く泥濘に足を取られそうになりながら下って行くと少し開けた場所に出た。草の高さが脹脛位までだから山道よりは、歩きやすそうだ。
「もうそろそろ昼頃かな?」
空を見上げると太陽が大体真上辺りにきていた。いつ頃、捕まってどれくらい放置されていたのかわからないけど、今になってお腹が空いていることに気付いた。
目が覚めたときは、状況把握しようと思ってそれ以外気にならなかったがけど少しは余裕ができたのかな?
とりあえずこの辺りで少し休憩を取ろうと思って辺りを見渡すと大きな石があったからそこに座って休憩することにした。
持っている干し肉と魔法でコップの中に水を入れて昼食を食べた。何の干し肉かは、わからないけど牛肉っぽい味がした。塩味が結構きついけど悪くない。とそんなことを思いながら食べていた。