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21.不器用な二人? (2019/8/29)



 それからしばらく経ち気持ちも落ち着いた頃に部屋の中を見渡した。広さ的には、6畳ぐらいかな? ベッド? に机、椅子、本棚などが置いてある。クローゼットもあるみたいだが勝手に開けることができないのでどんな感じなのかは分からないけど、なんとなく私が泊まっている宿と似ているような気がする。それと部屋には、ぬいぐるみがいくつか置いてある。フローラは、ぬいぐるみが好きなのかな? とそんなことを思っていた。因みにだが廊下は、土足だったが室内は、ブーツを脱いで部屋に入っている。


「と、とりあえず座ってください」


 と真ん中に置いてある机の近くに座布団かクッションか分からないものが置いてあるところを勧められたのでそこに座った。するとフローラは、私の後ろを見ていた。何を見ているのかな? と思った時、そう言えばシュシュで髪をまとめていたことを思い出した。おそらくそれを見ているのだと思う。でも、そんなに珍しいものなのかな? とそう思っているとフローラが話しかけて来た。


「その後ろにつけているのは、何ですか?」


「これ?」


 そう言って自分がしているシュシュに触れるとフローラは頷いた。


「これは、髪を束ねて留めるものよ?」


「可愛い髪留めですね」


「そう?」


 可愛いと言われてもかなりシンプルなものだけど。まぁ、自分が作ったものを褒められるのは恥ずかしいけど何だか少し嬉しい。でも、これが布の切れ端から作ったとか言ったらどんな反応をするのかな? と少し思った。まぁ、そんなことは、言わないけど……。


「はい、……どこで買ったものですか?」


「これは自分で作ったものよ」


「そうなの? レーナちゃんは、裁縫が上手だね! この色合いとかひらひらしていてすごく可愛いよ! ……あ、ご、ごめんなさい」


 フローラは、話しに少しずつ熱が入り私の顔の近くまで顔を近づけてきていた。急なことだったのでかなり驚いたがフローラは、しまった! みたいな顔をしてからペコペコと頭を下げて来た。


「だ、大丈夫よ」


「ほ、本当に?」


 と恐る恐る顔をあげたが涙目で少し顔色が悪くなっていた。


「う、うん」


 最初の時と雰囲気が変わって少し驚いたけど、興奮して近づいて来ただけでそこまで気を使わなくてもいいのに……。急にペコペコと頭を下げ始めて私が少し動揺しちゃったよ。でも、何だか落ち込んでいる。そんなに落ち込むような要素ではなかったと思うけど? 少しずつ熱が入って行っただけだし……。まぁ、そんなことは、考えても分からないけどどうやって励ませばいいのかな? ちょっとこの空気は気まずいし……。とそんなことを思っていたらあることを思いついて例の物を取り出す。それからフローラに近づき後ろに回りあるものを付けてあげた。


「!? ……?」


 フローラは、私が急に後ろに回って髪を触ったことに驚いたようだが何をしたのかよく分からなかったようで首を傾げていた。


「……何をしたの?」


「髪を見てみて」


 そう言うとフローラは、自分の長い髪を触って……。


「!? これって……」


 そう言って自分の髪を手繰り寄せて触れたものを確認して驚いてこっちを見た。


「あげるわよ」


「えっ? ……いいの?」


 と下から見上げるようにして聞いて来た。その仕草に思わず可愛いと思ったけど、その言葉を飲み込んでできる限り励まそうと思った。


「うん。だから、その、元気、出して?」


 そう言って彼女の涙を指で拭った。


「その、ありがとう。レーナちゃん」


 フローラは、そう言ってとても嬉しそうにしていた。そんなフローラの様子を見て私は上手く行ったことに内心安堵していた。




「……その、髪留めのお礼をしたいけど私にできることで何かあるかな?」


「別にいいよ。たいしたものじゃないから」


 ローナさんから貰った布の切れ端から作ったものだし、それほど時間がかかったわけでもないからね? そもそも裁縫もうまいわけじゃなし……。


「それでも、何かお礼をしたいの」


 そう言われてもフローラに何ができるか分からないからなぁ……。それにしても今の私に必要なものって何だろう?


 戦闘経験と戦闘技術これは前世での経験もあるから少しずつ試して行こうかな? でも、私の知らないことなら知りたいけど。あとは、知らない魔物と植物に関しての知識とかかな? ある程度は屋敷にいるときに調べたりしたけど実物を見た訳じゃないからなぁ……。そもそも今考えていたことをフローラが知っているとは、思えない。もしかしたら植物の知識なら可能性があるかもしれないけど……。とそんなことを考えていた。


 どれくらいの時間考えていたのか分からないけどフローラがどんなことなら教えることができるのかを話してくれた。


「その、文字とか計算の基礎的なことなら教えることができるよ? 他には、裁縫とか皮細工とかなら少し分かるけど」


 ああ、そう言うのもあるのか……。文字と計算位ならできるけどそれ以外なら知らないことが多いかもしれない。


「それなら一般的なこととか教えてほしいかな?」


「一般的なこと?」


「うん。街に来たばかりだからよく分からないことが多いかもしれないから。あと、この辺の地理とかも知っていたら教えてもらいたいかな?」


「分かる範囲でなら多分大丈夫だと思う」


「それなら、教えてもらってもいいかな?」


「うん」


 それからフローラは、私がどれくらいのことを知っているのか確認しながら私が知らなかったことを教えてくれた。


 教えてもらって分かったことは、この世界の1年は、地球と同じであることが分かった。1週間が7日で1カ月は、30日前後であること。決まった日に仕事が休みということは、なく月に1、2度あればいい方らしい。


 それと今住んでいる国には、四季があるらしく季節が割とはっきりしているらしい。前住んでいた場所は、冬が長かったが四季も一応あったからこの街もしくは、国の近くなのかもしれない。まぁ、そんなことはどうでもいいかもしれないけど……。


 先程、四季がはっきりしていると言ったけどこの街は、国の端っこの方に位置するのと標高がそれなりに、高いらしく夏は、過ごしやすいけど冬は、長く雪が降るらしい。


 フローラに今は、いつなのかと聞いたら10月らしい。私が山で目を覚ましたのは、どれくらいになるかと思って日付なども聞いたら10月に入ってすぐ位だと言うことが分かった。まぁ、そんなことを知って何の意味があるのかと聞かれると困るが……。


 因みに、フローラに今は何月なのって聞いたらとても驚いていた。まぁ、屋敷に住んでいたときに教えてもらったのは文字とか計算が主体だったからそれ以外のことをほとんど知らないということを改めて認識したが……。




 そんな感じでフローラにいろいろなことを教えてもらっていると日が昇り切って昼の時間帯になっていた。


「そろそろ休憩にしようか?」


 その時間になってようやく休憩をすることになった。というかそんなに時間が経っていたことに気付いていなかったと言った方が正しいけど……。


「もうそんな時間なの。ん~、はぁ~」


 そう言って伸びをしてから寝転がった。数時間もいろいろなことを教えてもらったから疲れたようで急に疲労がやって来た。と言っても文字を書いたりしていたわけでは、なく話を聞いているだけなのだが……。


 こんなに長い事話したり聞いたりしたのは、初めてじゃないかな? まぁ、今までが今までだったからそんな機会が無かっただけかもしれないけど。


「ごめんね、休憩を挟まずにいろいろなことを教えちゃって」


「大丈夫よ。私が知りたくて聞いていたんだし、フローラは、大丈夫なの?」


 数時間にも及んで私の聞いたことやそれに付属した内容、知っておいた方がいい内容など様々なことを教えてもらったからフローラの方は、大丈夫なのかな? と心配になった。


「問題ないよ? これくらいならよくあることだから」


 ……平気だということは、分かったけど、よくあるというのは、心配だ。


「無理は、しないようにね?」


「それは、大丈夫だよ。これくらいたいしたことじゃないからね?」


 それから少し休憩をしてローナさんの元へと向かうことになった。



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