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13.ポーション (2019/8/22)



「すいません」


 そう声を掛けると門兵の人が武器を抜いてこっちをみた。


「……子供か?」


「多分そうだろ。こんな時間にどうした?」


 思っていた通りの言葉だがあの兵士をみた後だからものすごく丁寧に聞かれているような気がする。まぁ、実際は、いろいろ警戒していそうな感じだが……。


「街に入りたいけど入れるの?」


「……この街に住んでいるのか?」


 一応、住んでいるよね? この街に来てからあまり時間が経っていないけど……。


「いちおう?」


「なぜ疑問形?」


 私がそう答えると門兵の人が怪しそうにこちらをみて来たのでどうして曖昧な表現になったのかを言った。


「最近この街に来たばかりだから……」


「そうなのか……。どうします?」


 そう受け応えをした兵士の人は、もう一人の兵士に話しかけていた。もう一人の門兵の方が立場は上なのかな? と思いながら成り行きを見守っていた。


「とりあえず隊長に聞こう。俺が彼女をみているから隊長を呼んで来い」


「はい!」


 そう言うと一人は詰め所の中へと消えていった。


「……それで君は、どうして血だらけなんだ?」


 それを聞いて二人が何故そんなに怪しんでいたのかこの時、理解した。そう言えば戦闘があって左側の服が血だらけだったことを思い出した。


「ちょっと魔物に遭遇して怪我を……」


「そう、なのか……」


 まぁ、実際に戦っていた所を見ていないから本当そうなのかは判断できないと思うけど。と思っていると先ほどの兵士の人が上官らしい人を連れて戻って来た。


「お前が夜に街に入りたいと言っていたやつか?」


 そう言って出てきたのは、私がこの街に入るときの兵士さんだった。確かヘルガさんだったかな?


「はい」


「……君は、確かカードを持っていなかった子か?」


「そうです。あの時は、魔石を売ってくれてありがとうございました」


 そう言って軽くお辞儀をする。


「この前の子みたいだな……」


「隊長大丈夫ですか?」


「多分問題ないだろう。それにしてもその血は、どうした?」


 そう言って私の服の汚れについて聞いてきたので先ほどと同じような説明をした。


「先ほど魔物と戦ってそれで少し怪我を……」


「……ちゃんと治療をしたのか?」


「傷口を洗うぐらいは……」


「ちょっと傷口を見せてみろ」


 そう言われたので腕を捲る。と言っても怪我をした部分の全体は、見えないが……。


「随分と深い傷だな……。おい、ポーションを持ってこい」


「は、はい」


 そう言うと一人が急いで詰め所の中に入ってしばらくすると戻って来た。


「持ってきました」


「ご苦労」


 そう言うとポーションを持ってきた男性は後ろへと下がった。


「嬢ちゃんこれを傷口に使ってみるといい」


 そう言われてポーションを受け取って、傷口に掛けてみた。するとポーションを垂らした部分の傷口が徐々に塞がっていく。そのことに少し驚きながらポーションを掛けられなかった部分にも、と思い上着を脱いでからシャツを捲り残りの傷口にも掛けていくと先ほど掛けた部分の傷口は、塞がっていた。それから少し経つと全部の傷口が塞がった。


「このポーション、すごい……」


 そう驚いていると、兵士の人たちが静かだと思いそちらに視線を向けると何故か私の方を見て驚いた表情をしていた。


「どうしたの?」


「いや、何でもない」


 と言った。まぁ、たいしたことじゃないみたいだしいいか。と思って、今使ったポーションのことが気になった。


「このポーションっていくらするの?」


「ん? ああ、別に気にしなくてもいい俺が勝手にやったことだ」


 そう言われると気になる。それにこのポーションを少し持っていたいと思ったから。


「それならポーションどこで売っていますか?」


「……分かるか?」


 そう聞いたら他の兵士の人に聞いていた。もしかして分からないのだろうか?


「私には、分かりません」


「私も分かりません。少なくなったら補充をお願いしたら届くので……」


「……俺らでは、どこに売っているかは、分からない。だけど1つ銀貨1枚ぐらいだったと思うが……」


「そうですか……。とりあえずポーション代は、払います」


 そのポーションがどこに売っているのか分からないのは残念だが使ったものの代金はしっかりと払らおうと思い隊長さんに銀貨1枚渡した。


「いや、これは、俺が勝手にやったことだから別に」


「私が気にするので受け取ってください」


「しかし……」


 といろいろ言ってきたが最終的には向こうが引き下がってくれた。とりあえずこれでいいかな? とお金を払えたことで少し安堵した。


「……それにしてもこんな遅くにどうして森の中にいた?」


 確かに、こんな遅くに森の中から出てきたらどうしてなのか気になるかもしれない。ましてや私はまだ子供だし。


「それは日が暮れる前に西門から入ろうとしたけど、門が閉まっていて入れなくて……。それでなんとなく反対の門の所まで回ってきました」


「日が暮れる前に門が閉まっていたのか?」


 ヘルガさんは日が暮れる前に門が閉まっていたと聞くと何故か首を傾げていた。


「はい。門の人にも聞きましたが無理と言われました」


「…それは、本当か?」


 その問いに私が頷くと隊長さんは、少し難しい顔をして何かを考えていた。もしかして、私が嘘をついたとか思われていないかな? でも本当のことだし。と思っていながらヘルガさんが何か話すのを待った。それからほどなくして何か決めたようでこっちを見て来た。


「詳しいことは、分からないからとりあえず調べてみよう」


 私は、その言葉を聞いて少し安堵しながら頷いた。どういった決まりがあるのか分からないからヘルガさんが調べてくれると言うなら任せた方がいいしね? それにしても門はいつ閉まるのかが気になったので聞いてみることにした。


「それにしても門はいつ閉まるのか決まっていますか?」


 そう聞くと周りの兵士達が驚いたような、呆れているような表情を私に向けて来た。何かまずいことなのかな? と内心、少し不安になる。


「門が閉まるのは、日が暮れてからだ。だから嬢ちゃんがさっき話したことは、その決まりを守っていないためそれが発覚すれば何らかの形で罰があるはずなのだが……。それにあちら側の問題なのであまり口出しは、できないからな……。まぁ、それより門が閉まってからの話だが、門が閉まっていても街の中には、一応入ることができるぞ?」


「え? それって本当ですか?」


 まさか門が閉まっていても街の中に入れると聞いて驚いた。門が閉まったら普通は、街に入ることは、できないと思っていたから……。


「そうだ。身元が分かるものを提示すれば大体入れるはずだ。余程のことがない限り、な?」


「余程のこと?」


「そうだな。……さっきの嬢ちゃんみたいな状態とかだとそうなる可能性がある」


 さっきの自分。……誰か分からなくて血まみれでやって来たら……、うん。すごく怪しいから入れないかもしれない。


「確かに……」


「まぁ、そういうことだ。それで、街に入るのか?」


「あ、お願いします」


 そう言ってギルドカードを渡した。


「嬢ちゃん冒険者ギルドに入ったのか」


「はい」


「8歳……!? Gランク!」


 ヘルガさんは私のギルドカードのランクをみて驚いていた。まぁ、受付の人の話によると10歳未満で合格する冒険者は、ほとんどいないと言っていたから驚くことは不自然ではないのかな? そう思いながらヘルガさんに声を掛けた。


「どうかしました?」


「いや、何でもない。少し驚いただけだ。街の中に入るからついて来い」


 ヘルガさんはそう言うと歩き出したので後をついて行く。すると詰め所の中に入ってから別の所に出た。そしてその先に広がっていた光景は、見覚えのある街の中だった。


 なるほど詰め所が街と繋がっているから身元さえ問題なければ入れるってこういうことなのかと思った。


「じゃ、嬢ちゃん、気を付けて」


「ありがとうございます」


 そう言って隊長さんと別れて宿へと向かった。



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