4.Gランク (2019/7/21)
それから井戸の水を汲みながら汚れを落とした。魔法を使えばいいかもしれないけど、しばらくの間は魔法が使えることは黙っておこうと思った。またあんなことがあった時、武器になるかもしれないからね? 意表を突くことは、大切だと思うし……。
それにしても人を切ったけど何とも思わなかったなぁ。と思った。ゲームの時は、それなりに対人戦もこなしていたから対人戦は大丈夫だと思うけど、この世界で人を殺すことに抵抗は、ないのかな……。と少し心配になった。でも、今回は本当にやりあっていたわけじゃないからかもしれないけど……。そんなことを考えながら汚れを落としていた。
そうして汚れを落とし終えてから受付に向かうと依頼が終わった冒険者達がそれなりに戻って来たみたいで少し混みだしていた。とりあえず、先ほどの受付の人を探そうとしたら横から声を掛けられた。
「レーナさん。こちらへ」
そう声を掛けてきたのは、先ほどの受付の人だった。どうやら今表に出てきたみたい。そんなことを思いながらエレナさんの受付へ向かった。
「先ほどは、自己紹介を忘れてすいません。私は、エレナと言います」
「私は、レーナです。よろしくお願いします」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
「……それでは、早速ですがギルドカードを出してください」
エレナさんにそう言われてギルドカードを渡すと何か作業をしていた。
「……おめでとうございます。今日からGランクになります」
そう返却されたギルドカードを受け取って確認するとちゃんとGランクになっていた。
「それでは、Gランクになったことによっていくつか説明をしないといけないことがありますが早速説明をしてもよろしいですか?」
「お願いします」
「それでは、説明させていただきます。わからないことや気になったことがあればその都度聞いてください」
「はい」
「1つ目は、Gランクからは、依頼の成功回数と失敗回数がギルドカードに記録されます」
「どうしてGランクから?」
「I、Hランクの依頼は、手伝いの依頼が多いため依頼が失敗になることがほとんどないこと。また危険なことは、基本的にはありません。ですがGランクからは、討伐系の依頼等が入りそれなりに危険な仕事が多くあります。それらの仕事をちゃんとこなせるのか分かりやすくするためギルドカードにそれらの情報を記録します」
「それってランクが上がってもその情報は加算してくの?」
「そのように加算する記録もありますが基本的には、現在のランクとその前のランクの依頼状況で判断します。そのため以前の依頼達成率が低くても基本的には問題にはなりません」
「なるほど」
「2つ目は、討伐した魔物の処理についてです。基本的にはいらない部分は、埋めるなり燃やしたりしてほしいです」
そう言えば道中そのまま放置してきたかも? もしかしてまずかったかな?
「どうしてですか?」
「そのまま放置をすると他の魔物がそれを食べにやって来ることがあるからです。できる限りそういった処理をして欲しいというのがギルド側からのお願いです。でも、無理にというわけではないので覚えておいてください」
「分かりました」
「お願いします。……3つ目は、素材の売却についてです。素材の売却については、ギルド以外で売っても構いませんがギルド以外で売った場合は、何か問題が起きた場合は、自己責任でお願いします。依頼に関しても同様でギルドを通さない依頼についても自己責任です。
4つ目は、犯罪行為があった場合についてですがギルドに所属しているものが起こした場合は、ギルドからとその町の警備兵から処罰があります。
5つ目は、魔物の討伐証明については、全て魔石となっていますので討伐した際は、魔石を持ってきてください」
魔石? 特徴的な部位とかじゃなくて魔石でいいのかな?
「魔石だけで何を討伐したかわかるの?」
「はい」
その返事に驚きながら理由を聞いてみた。
「どうして魔石だけでどんな魔物を倒したのかわかるの?」
「それは、魔石を調べる道具がありましてそれで判断しています。詳しいことは、私にも分かりませんが……」
どういう技術なのかは、わからないそうだが討伐証明が魔石とは分かりやすい。いちいち魔物ごとの討伐証明を覚える必要がなくて楽だと思った。まぁ、売れる素材については、知っておかないといけないけど……。
「説明としては、以上になりますが何か聞きたいことは、ありますか?」
「依頼にない魔物でも素材の買い取りしてもらえますか?」
「はい。大丈夫です。こちらに出してもらえれば買い取りします」
「解体していない魔物とかを持って帰ってきた場合は、どうなりますか?」
「ギルド側でも解体はできますがその分手数料が取られることになります。目安としては、1割前後と思ってもらえればいいと思います」
「なるほど」
「他には何か聞きたいことは、ありますか?」
そう聞かれて他に何か聞きたいことはないかな? と考えていた。
何か聞きたいこと、何か聞きたいこと……。そう考えていたらこの街に来たばかりだから宿を探さないと! と思いエレナさんにお薦めの宿を聞いてみることにした。
「お薦めの宿とかはありますか?」
「宿ですか。……何か希望とかはありますか?」
「料理がおいしくてお風呂があるところがいいです!」
この条件が揃っていれば当分その宿に泊まりたい。そう思いながら聞いてみるとエレナさんは、少しだけ戸惑いながらも教えてくれた。
「お、お風呂ですか……。それだと値が張りますが大丈夫ですか?」
お風呂があると高いのか……。あまりにも高いのならしばらくは、諦めないといけないかも……。
「因みにどれくらいしますか?」
「一番安いところだと銀貨1枚です。料理は、それなりですが……」
お風呂があって一番安いところだとそんなものか……。でも料理もおいしいところがいいかな? 最近干し肉以外食べていないし……。
「おいしい料理もだと?」
「銀貨2枚はしたかと思います」
銀貨2枚かぁ。払えなくは、ないけど……。そういえばまだ残っている魔石もあるからそれも売ればいいか。
「その宿を教えてください。後これを売ります」
そう言って魔石の入った袋を出すとエレナさんがその袋の中身を確認していた。
「魔石ですか。少々お待ちください」
そう言うと早速鑑定作業を始めた。それからしばらく待っていると鑑定が終わったみたいだ。
「鑑定が終わりました。清算の結果ですがゴブリンの魔石が6個で銀貨1枚と銅貨8枚、ゴブリン上位種の魔石が5個で銀貨5枚です。全部で銀貨6枚と銅貨8枚になります」
「?」
さっきよりも買い取り価格が高いような?
「どうかしましたか?」
「さっきよりも買い取り価格が高いと思って」
「さっきですか? いつお売りになりました?」
「この街に入る前に兵士の人に」
そう言うとエレナさんが納得したような顔をしていた。
「ああ、それはですね。このギルドに入った特典みたいなものです。冒険者以外の人が個々に売りに来ると買い取り価格が1割安くなります。ですので、先ほどより高いのは、その影響だと思います」
なるほどと思いながらお金を受け取った。予想以上にたくさんのお金が手に入って驚いたけど宿のことを考えると今はとてもありがたい。それにしてもいい武器を持っていたゴブリンは上位種だったことがわかり少し納得した。まぁ、魔法を使って倒したからゴブリンとその上位種の違いがいまいちわからなかったけど……。
「それと先ほど言っていた宿の名前は暁の弄月亭と言います。ギルドの通りをまっすぐ進んで行くと夕焼けに月の絵が描かれた看板が見えます。その看板が建っているのがレーナさんに教えた宿になります」
「わかったわ。ありがとう」
「お気になさらず。それにしても先ほどの魔石は、どこで手に入れましたか?」
「? ここに来るまでの道中だけど?」
「そ、そうですか……」
そう言うと何やら考え込んでいた。どうしたのかな? とも思ったけど早く宿に行かないと泊まれないかもしれないと思ってこの場所を後にすることにした。
「じゃあこれで失礼しますね?」
「はい。気をつけてください」
そうして私はギルドを後にして宿へと向かった。