第84話
今回はスキルについてちょっと明かされます。
現在より2年前・『白霧と黒沼の森』第4階層
「ふうむ。だいぶ資料が集まってきたな。」
俺は珍しく自分の部屋ではなく、第4階層内に作った研究室に来ていた。
「すでに研究開始から5年以上経過していますからね。このくらいは当然です。」
トリが次の資料を持ってこちらに近づいてくる。
さて、この研究室の研究テーマだが、まあ単純なテーマだ。この研究室のテーマは、
スキルについて
である。
「まっ、そうだな。で、今までの研究成果をまとめたやつがそれか?」
「そうなります。」
俺はトリから資料を受け取って閲覧していく。
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さて、だらだらとただ読書をするのもなんだから、分かるところからスキルについて説明していこう。
まずスキルの起こりについてはダンジョンが解放されたあの日が起こりで、なぜ人類がスキルを使えるようになったのかは未だ不明。というのが一般的な見解になっている。(個人的にはその1年前に魔神が何かしたのが原因だと分かっているが敢えて黙っておく。)
初期スキルの発現年齢は10~12歳。ただしイズミのように命の危機に晒されればもっと早くに発現することもある。
初期スキルの選定基準は両親からの遺伝や本人の資質、周囲の環境によると言われるが、若干のランダム性も存在。ちなみにこれは魔王も同様だと考えられる。
レベルアップで習得できるスキルとして表示されるものには本人の考えや戦い方、種族や職業が関わると思われる。そのため霧人では習得可能スキルに霧関係のものが含まれやすい。
眷属化した際に習得するスキルは別名“固有スキル”とも言われ、各種族固有のものであり、同名スキルをレベルアップで習得することは不可能だと思われる。(同効果ならありえるが。)
スキルの分類は大きく分けて基本2種類あり、≪火の矢≫のように自らの意志を持って発動するアクティブスキルと、≪○○習熟≫のように常時発動し続けるパッシブスキルに分類される。ただ、中には≪霧の衣≫のように常時発動するが効果の強弱を調整できるスキルや、特定条件を満たせば自動的に発動するスキルも存在している。
また、別方面からの分類としては攻撃スキルと補助スキルという分け方や、効果に影響を及ぼすステータスによる分類(この場合筋力、器用、敏捷影響は物理スキル。知力、感知、精神影響は魔法スキルと俗に言われることがある。)が存在する。
ただ、攻撃と補助の分け方ではスキルの使い方次第で攻撃とも補助とも取れてしまうし、ステータス分類の場合では複数のステータスが同程度影響するスキルも存在するためこの方法での分類は中々に厳しいことになっている。
だが、俗に魔法スキルと呼ばれるものについてはそのスキル名からある程度の分類や階級分けがされている。
例を挙げるならば≪火の矢≫はその名の通り火で作られた矢を飛ばすスキルであり、≪水の矢≫は水で作られた矢を飛ばすスキルである。この場合、何かを矢として飛ばす部分はどちらのスキルも同じであるが、その何か、所謂属性と言われる部分のみ違っている。
では、この属性とは何種類存在しているのか。答えは不明である。
と言うのも基本と思われるのは光、闇、火、風、水、土の所謂二極と四大であると考えられるが、問題はそこからの派生で有名で確認されているスキルが多いもので、雷や氷。少々ずれた所に金や木などと呼ばれる属性もあり、中には霧人が好んで使う“霧”というのも派生の一つとして考えられている。
そして、この霧という属性を初め、派生属性は基本となる四大と二極を一定配分で混ぜ合わせればできるのではないかとも言われている。がこちら方面の研究は応用性が強いためまだマイナーの分野である。
では続けて同属性内での系統分けについて
こちらは火属性で言うならば≪
この中で矢系(ボルト系)魔法は基本中の基本とされ、ただ、その属性を矢にして放つだけである。
対して槍系(ジャベリン系)魔法は矢系魔法に比べて射程が短い分攻撃力と貫通力が上がっているとされる。
また、球系(ボール系)は放った後に爆発をして周囲のものを巻き込むスキルだが、渦系(スワール系)や爆系(プロージョン系)、柱形(ピラー系)は発生地点を予め術者が決定して、そこを起点に発動する起点指定型のスキルであり、これは威力や範囲の広さで分類分けされる。
ただ、ここで勘違いしないで欲しいのは必ずしも球系<渦系(爆系、柱系)ではないと言うことであり、これらには別々に適した状況が存在するということである。
次に同属性同系統内での階級分けだが、こちらは例として≪火の矢≫と≪
これらはどちらも火属性の矢をただ単純に飛ばすだけのスキルであるが、≪火の矢≫よりも≪火の太矢≫の方が格段に威力が向上しており、威力向上の割合に対して消耗量の増加割合は少なめであることからも≪火の太矢≫は≪火の矢≫の上位スキルだと考えられる。
また、≪火爆≫などは≪火の矢≫を使えない者でも習得していることがあるが、≪火の太矢≫の場合、我々が調査した限りでは全所有者が≪火の矢≫と≪火魔法習熟Ⅰ≫を習得していたことから上位スキルは下位スキル+αが習得の前提条件として存在しているのではないかと考えられている。
(でも俺は≪水柱≫も≪水魔法習熟Ⅰ≫も無しに≪尖水柱≫を持っているし、この下位スキルがあるのが前提と言うのは魔王には関係のない話っぽいな。)
なお、この階級分けについては資料が少なすぎるため、目下調査中の項目である。
ちなみに生成系スキルには≪簡易○○生成≫と≪○○生成≫が確認されているが、これらは上下関係ではなく横の関係。つまりは別系統のスキルである。
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「にしてもまあ、よくここまで調べたもんだな。」
俺は思わずそう呟く。すでに時刻は夕暮れであり、トリもどこかに行ってしまっている。
「しかしまあ、アウタースキルについての記載はまだなしか。まああれは文字通りの外法だし。当然と言えば当然か。」
アウタースキル。それは魔神が人間たちに与えたスキルではなく人間が元々持っていた技能をスキルと称せるほどに高めたもの。
で、俺の場合は所有するスキルを分解、再構築することによって新たなスキルを生み出していて現状ではクロキリノコとクロキリバクの二種類がある。ただ、これって元は魔神の与えたスキルだから正確に言うと俺のはアウタースキルと言ってもまだまだ入口な気がするんだよな。
一応、新しいアウタースキルも考えてはいるけど対人で使ってもオーバーキルにしかならないから使う機会が現状だとないんだよなぁ…。
ブーーーーーーーーーー!!
と、どうやら久しぶりの侵入者みたいだな。うーん。久しぶりに俺自身が出るか。時には戦わないと勘とか鈍るしな。
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