第80話
今回はイチコ編です
現在より3年と少し前
「敵襲うううぅぅぅ!!」
私は海を渡り、アフリカ大陸に来ていました。そこで私は路銀と情報を得るために傭兵業のようなものをやることにし、今はとある集落で用心棒をしていたのですが…、
「はあ。またですか。」
敵の襲撃は今週だけで既に3回目です。多いです。報酬に貴金属類を貰う事になっていますが割に合わない気がします。
ともあれ、仕事ではあるので出撃です。
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「これで終わりですね。」
「GURU…」
私は手に持った長剣で村に襲い掛かってきたモンスターの心臓を突き刺します。これで今回襲撃してきたモンスターは全て始末しました。
私はモンスターから使える物を剥ぎ取った後に村長のもとに向かいます。さすがにこの数は異常ですから原因を聞かなければいけません。
「村長。討伐終わりました。それにしてもいったいこれだけの数がどこから湧いてくるのですか?」
「おお、イチコ殿。いつもありがとうございます。」
「礼はいいですから彼らの出所を。」
村長が礼を言ってくれますが、私は話の方を促します。
「はあ。と言っても我等にもよく分かっていないのですよ。なにせこの近くには迷宮はありませんし。モンスターにしてもこの数週間の間に突然今まで見たことも無いモンスターが現れたものですから。」
しかし、返事の内容からして村長も今の事態を把握できていないようです。
それにしても
「おや?イチコ殿には何か心当たりが?」
と、顔に出ていたのか村長が尋ねてきます。ここは正直に答えておきましょうか。
「ええ。あくまでも可能性レベルの話ではありますが一応は。」
「お聞かせしていただいても?」
「構いません。ただ、先に言ったようにあくまでも可能性の一つです。」
「分かっておりますとも。」
村長が少々身を乗り出して私の話を聞こうとします。
「では単刀直入に言いましょう。恐らくですがこの村の近くに
「!?そ、それはどういう…。」
村長が唖然とした表情をこちらに向けてきます。
「そのままの意味です。新しい魔王がこの村の近くに現れ、モンスターを生み出して、手近な場所なのか他に理由があるのかは知りませんが、この村を襲っている。可能性として一番考えられるのはそれです。」
「そ、そんなことが…」
村長は信じられないという表情で、口を開け閉めしています。ですが、状況を考えるとこれが一番有り得ます。
「残念ながらこれが一番可能性が高いです。それに新しい魔王が産まれる。というのは決して前例が無い訳ではなくて、ここ1,2年の間に何度か確認されているそうです。」
「あああ…」
村長さんはこの世の終わりの様な表情を浮かべています。
ただまあ、この場に私がいる以上はこの村を滅ぼさせる気なんてありませんけど。
「村長さん。」
「何でしょうか…。」
「物は相談ですが。生まれたばかりの魔王なら何とかできるかもしれませんよ?」
「へ?」
そうして私は村長さんとこの村を襲う魔王をどうするかの相談を重ねることにしました。
そして決まったのは、
・襲ってくるモンスターの素材を利用した武器防具の作成
・村人たちの戦闘訓練
・ダンジョンの所在確認
の三つをまず行い、その上で村人の方々が村を守っている間に私が単騎でダンジョンに突入して魔王を討伐する。という作戦です。
「イチコ殿お願いします!どうかこの村をお救い下さい!!」
「分かっています。だからまずは村全体の力を底上げしましょう。」
そう私が言って訓練の日々が始まりました。
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数週間後。私の手による訓練を終えた村人たちは自分たちの力だけで村を守れる程度に強くなりました。しかし、それでも魔王はこの村に対してモンスターを出し続けています。
私としてはここまで防備を重ねれば手を出さなくなるかと思っていたのですが、どうやらこの村を襲う魔王にはよほどこの村に対して強い思い入れがあるようです。
ただダンジョンの位置はもう分かっていますし、手を出すのを止めないと言うのならば当初の予定通りに討伐するだけです。
さて、まずは村の方々が集めてくれた事前情報を確認しておきましょうか。
・魔王の名は『種を隔離する別士』
・ダンジョン名は『世が違いし島』で、ダンジョン周囲には結界の様なものが張られている
・確認されている主なモンスターは鹿や植物。ゴーレム系で、結界や斬撃系能力が主体
・ダンジョン周囲の結界はダンジョン内のモンスターが外に出る時だけ解除される
なるほど。こういうダンジョンならやはり村の方々の実力を底上げしておいたのは正解でしたね。この条件ではどうやっても一度は村を襲われてしまいますから。
「では行きましょうか。」
そうして私も装備を整えた上で『世が違いし島』に向かいました。
06/13 誤字訂正