第6話
初侵入者です。
ブッーーーーーーーーーーーー!
モフモフし始めてから数時間後、耳障りなアラーム音とともに俺の前に半透明のスクリーンが出現し、ダンジョン入口であるエアロック内と十数人の軍と思われる装備を身に着けた人間を映し出す。
「おっ、やっとか。さーて、お手並み拝見と…ん?」
スクリーン内で何人かの人間が揉めている。
どうして揉めているのか音声を拾って確認してみるが、どうやら人数制限が揉めている原因らしい。
で、おまけにこのエアロックが破壊できないかどうか爆薬を使って試そうともしているようだ。
「まあ、人数制限は明らかに罠としか思えんし、結界と違ってうちのダンジョンの壁なら壊せそうだとは思うよなぁ…。無理だけど。」
ちなみにうちのダンジョンは天井がガン開きなので一見すると上から入れそうだが、上から入ろうとするとエアロック近くの外の地面に飛ばされるように仕掛けが施されている。現に数名ほど飛ばし済みである。
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「くそっ、何で傷一つ付かないんだ。」
大量の爆薬を使い本来なら大穴が開いているべき壁が傷一つ付いていないのを見て部下が悪態をつく。
「気持ちは分からないでもないが落ち着け。」
「隊長…。」
「作戦行動中はアルファ1と呼べ。アルファ3」
「あ、ああ。すまない。アルファ2」
「何れにしてもどうやら相手の思惑に乗るしか内部を調べる方法は無いようですね。アルファ1」
「アルファ4に私も同意します。アルファ1」
「アルファ5もか、アルファ6お前はどうだ?」
「…。同意します。」
「分かった。」
現在この場には30名ほどの隊員が存在し、それが6人1組で5班に分かれている。仮に人数制限を受け入れるならこの班構成のまま挑むことになり、恐らく突入するのは私が直接指揮するアルファ隊で他の隊はバックアップという事になるだろう。
もちろん私は上に人数制限の事を伝えてある。が、上は未知を未知のままにしておく方が危険と考えたようだ。
「止むを得ん。」
私は決断を下すことにした。
「突入はアルファ隊。その他の班はバックアップに当たれ。」
「っ、隊ちょ…」
「アルファ1だ。アルファ3。今回の目的はあくまでも探索。故に支配者や敵性存在と無闇に戦う必要はない。また、突入したアルファ隊は撤退可能条件を満たした時点で入口に戻り撤退する。仮に一時間待たずに次の部隊が突入できるようになった場合は決して突入するな。それ相応の危険が潜んでいるという事だからな。」
「「「了解!」」」
アルファ班以外の班が外に出ていく。
「すまないな。お前たち。もしかしたら貧乏くじを引かせることになるかもしれん。」
「良いですよ。アルファ1」
「罠だと分かっているなら警戒すればいいだけです。」
「まっ、そうっすね。」
「…。」
「絶対に死ぬつもりは無いっすから。」
「当たり前だ。」
最後の一人が外に出て行ったところで扉が閉まり、続けて内部に繋がる扉が少しづつ開いていくとともに濃い霧が部屋の中に入り込んでくる。
「さあ、ここからは無駄口厳禁だ。気を張って行けよ!」
「「「了解!」」」
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スクリーンには休憩所からダンジョン内部に向かって出ていく6人の人間が映っている。
「さてと、ここから先はモンスターに接触しない限りは俺にも情報は伝わらない訳だけど…ヘルプ君ちょっといいか?」
『如何なさいましたか?』
俺はスクリーンにすでに頭頂部しか映っていない6人を指さしてヘルプ君に質問する。
「ダンジョン開放に伴ってこいつらもスキルを持ったわけだけど、こいつら自身は自分がスキルを持っていることに気づいているの?」
『常時型なら分かりませんが、任意型のスキルの場合はまず気づいていないと考えられます。』
「根拠は?」
『外の人間にはチュートリアル等というものはしていませんから。主の予測では“偶然見つけ出した人間が出るのに1日。その周囲の人間に広まるのが1週間。世界の中で情報環境に恵まれている人間たちに広まるのに1カ月。世界中の人間に余さず広がるのに1年程度かかる。”とのことです。もちろんただの予測ですので実際にはもう少し早く広まる可能性もありますが。』
「なるほどね。」
となると今回は俺自身は安全なわけだし、重要なのは如何に逃がさないかだな。
頑張れよ。俺の生み出したモンスター達。
04/08文頭一文字空けの改稿をしました。
04/18 誤字修正