第20話
今回はチートが嫌い。と言う方は回れ右推奨です。
たーらった、たららたったー!
スクリーンの中では・乱し
・乱し蜻蛉
体長5m程の虫系蜻蛉型魔性
その羽音を聞いた敵対者は立つこともできない程の眩暈に襲われ、ヒドい場合には錯乱して周囲のもの全てに敵対的な行動をとるようになってしまう。
また、羽音以外にもその顎は鋼鉄すらやすやすと引き裂き、甲殻は並の武器・魔法程度ならばほぼ弾く。おまけに四枚羽を用いて高速飛行とホバリングを使い分けるためそもそも攻撃を当てることが難しい。
召喚コスト:HP2000,MP1000,SP1700(現在召喚不可)
備考:主である『蝕む黒霧の王』のレベルが低すぎます。そのため命令を聞く可能性は50%です。
…。
えっ?チート?てか何この異常コスト…。しかも命令を聞かないって…えっ?
スクリーンを改めて見ると乱し蜻蛉は既に映っていない。どうやら、ダンジョン内を適当にうろつき始めたらしい。幸いにして味方を攻撃する意味がないことは分かっているらしくダンジョン内にいる他の魔性には見向きもしていない。
…。
「うん。放置しよう。今後は第1階層に入ってきた皆さんにはとりあえず合掌だな。」
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そして、1週間ほど経った。その間に侵入してきた軍の人間は2部隊。で、彼らの顛末をダイジェストの様な形で一応紹介しておこう。
第1部隊突入→入口から3km程離れた位置にいたはずの乱し蜻蛉が侵入者に反応→1分ほどで部隊の真上に到着→能力で全員眩暈を通り越して昏倒→バクムシャ→第2部隊が目の前で食われている第1部隊発見攻撃開始→ダメージは0じゃ→バクムシャ→Dead End
あー、うん。皆の言いたいことは分かる。さすがに俺もこれは酷いと思う。というか、5分もかからずに2部隊消し飛んだせいで本当に誰も入って来なくなった。
ああそうだ。乱し蜻蛉の甲殻だけど、一応≪火の矢≫とかなら少しだけダメージは通るみたいだったよ。1しか減ってなかったけど。術者が一発撃って気を失うぐらい力を込めてたみたいだったけど。
…。
とりあえず、命令を聞くまで繰り返し命令して、聞いたら特定の場所まで誘導しておこう。で、破壊不可の壁で周囲を覆って閉じ込めておこう。流石にこれは緊急事態以外で使う気は起きないよ。
ああそうだ。経験値分配も戻しておこう。もう一匹産まれたらもう絶望しかない気がするし。
ふふふ、ちょっとリョウで癒されて来よう。
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「というわけで、遊びに来た。」
「お帰り願いますわ。」
俺は現在リョウの家である那須家地下に繋がるように作ったダンジョンの小部屋に来ている。で、俺はこの部屋までしか来れないのでリョウに主権限で小部屋まで下りてきてもらった。
「じゃあ、適当にスキルフル活用の全身マッサージをリョウにしているから、ここ一週間のX-J1,X-J2の結界監視部隊に関する報告よろしく。」
「結構で…ひゃう!」
と言うわけで逃げようとするリョウを無理やり抑えつつ霧の体の中に押し込む。で、≪蝕む黒の霧≫の応用である部分的具現化と≪循環≫をうまく調節しながら使い、全身くまなくマッサージする。ふっふっふ。この能力の前ではそこら辺の全身マッサージ機なぞ相手にもならんわ!
「はう!…予想以上に…ひう!待って…あう!ください。」
「ふんふふん~♪とりあえず報告早く!早く!」
「では、報告を…つ!し、しますね。」
さて、リョウの報告をまとめるならこんなところである。
・X-J2結界監視部隊は内部への侵入を完全に断念。
・迷宮X-J2は入り口を封鎖。現在は人攫いをなくす方向に活動。
・X-J1結界監視部隊は雲の化け物対策を整えたのち迷宮内に進軍予定。
・対策の具体的な内容は不明。
なお、報告終了時点でリョウは息絶え絶えになっている。むう折角の全身マッサージだったがヤリ過ぎたか。
「で、一応聞くけど。この部屋の存在とかお前の正体とかはバレてないよな?」
「ハァハァ…。当たり前ですわ。私だって命がけですもの。ここに入る時なんて周囲に誰も居ないことを完璧に確認してから入りましたわ。」
「ふうん。じゃ、」
そう言いつつ俺は指パッチンの体勢を取り…鳴らす。
と、同時に家と繋がる場所から女性の悲鳴と子供たちの笑い声が聞こえてくる。そして続けて何かが転がる音が聞こえ、その音の主であるメイドが部屋の中に転がり込んできた。
「はう~」
「この人はどうしておく?」
そして、俺が意地の悪い笑顔を浮かべつつリョウに問いかけると、リョウは何かを諦めたような顔で天上を見上げていた。
Q:どうやったら蜻蛉は言う事を聞くの?
A:レベル上げろ