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エピローグ

「それで結局、魔神の目的って何だったんでしょうか?」

 『白霧と黒沼の森』に帰ってきたイチコが俺に問いかける。


「魔神の目的か……」

 俺は『彼岸の世界』で調べた事。戦いの最中に感じた事を頭の中で纏める。


「そうだな。まず魔神にはオリジナルがいた。これは間違いないだろう。」

「どういう事ですか!?」

「どういう事と言われても『彼岸の世界』で見つけた本の記述や魔神の使っていたスキルなんかを見ているとそうとしか思えないんだよ。」

 俺の言葉にイチコは驚きの顔をしながら声を上げる。

 というか、あの記述が確かならイズミが思いっきり魔神のオリジナルに利用されている可能性があるんだよな。

 その辺りの話もイチコにしておく。


「それでまあ、魔神の最終目的はその本物の方の魔神に関わる何かだと思うんだが……」

「だが?」

「情報の抜けが多すぎてよく分らん。」

「何ですかそれ。」

 俺の言葉にイチコが呆れた様子を見せる。


「と言っても今回の件にオリジナルの魔神が関わっていたとは思えないけどな。もしも関わっていて魔神の味方をしていたなら俺は怪我どころか今この世に居ないだろうし。」

 そう言いながら俺はリョウに治療されて絶対安静と言う意味で包帯をグルグル巻きにされた自分の体を見る。


「それは……確かにそうですね。今にしてみればイズミが私に授けた力もあり得ないものですし。」

「ん?何の話だ?」

 俺が聞いたらイチコが『彼岸の世界』に突入する直前の話を俺にしてくれた。

 で、その話を聞いた感想。


「とりあえずオリジナルのヤバさがよく分かる話だな。まっ、こちらに干渉してくる気はないようだし。無理に関わる必要は無いだろう。」

「そうですね。それは確かです。」

 俺はやれやれと言った様子を見せながらそう言い、イチコもそれに同意を示してくれる。


「それでクロキリ。」

「ん?」

 イチコが俺の顔をまっすぐ見ながら言葉を紡ぐ。


「これからどうするのですか?」

「そうだな……諸悪の根源は潰えた。なら俺は俺のやりたいように生きるだけだ。」

「そうですか。」

 イチコは笑顔でそう言う。

 そして、俺はそんなイチコの顎を掴み、


「まっ、とりあえずは命令を無視したお前に罰を下すとしよう。」

「そうですね。謹んで受けさせてもらいます。」

 互いの唇を重ね合せた。



■■■■■



 魔王の生は長い。それは魔王に与えられる不老の力が魔神とは既に関わりのない世界のシステムの一つとして組み込まれているからである。


 魔神が消えて世界に大きく影響が出ることは二つ。

 一つはスキルの燃費が悪化すること。

 これは魔神が今まで代わりに消費していたスキルのコスト分も使用者が払わなければいけなくなったからである。

 もう一つは魔王、眷属、魔性の不眠不食性質の喪失。

 これもやはり魔神からの力の供給が無くなったがための影響であるが、こちらに関しては本来の生物としてあるべき姿に戻っただけなので、そこまで問題にはならないだろう。


 いずれにしても彼ら彼女らはこの世界で自分なりに生きていくだろうし、やがては愛する者との間に子を成し、弟子を取って技術を伝え、次代に自らの思いを渡していくのだろう。


「そう言えばクロキリ。」

「何だ?」

「出来ましたよ。」

「そうか。色々と楽しみだな。」

「はい。」


 今の運命は黒い霧によって見えなくなり、一度定められても力によって断ち切ることができるようになった。

 故に今この世界の未来は可能性の数だけ存在する。

 果たして次に描かれるのはどのような未来であろうか。

イチコエンドです。


4か月続いた『蝕む黒の霧』も今話を持って一応の終了となります。

明かされなかった謎が多々ありますが、その部分についてはイチコルート以外なら明かす機会があったかもしれませんが、まあ、捕らぬ狸の皮算用ですね。


今はもう一つの作品に集中したいと思っていますので、続きを書くことはありませんが、もしかしたらその内今回は明かせなかった部分を明かすためにも同じ世界観でまた何かを書くかもしれません。その時はよろしくお願いします。




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