第145話
話は戻って『深淵の宮』。
「それじゃあ行くよ!≪剛火槍≫!」
第一撃はムギが以前チリトたちと一緒にロボットを倒す際に放った複合技。
その一撃は私たちが次に目指す場所として定めた海底火山の周囲に屯していたモンスターの集団のど真ん中に突き刺さって大爆発を起こします。
さて、爆発によって大量のモンスターが吹き飛び、防衛線に一時の穴が開きました。次は私の番です。
「≪霧の帳≫。イチコ!」
「ハアアアアァァァァ!!」
リョウお嬢様が≪霧の帳≫を発動したことによって私の身体能力が上昇します。そしてそれと同時に私はイズミと共に敵の防衛線の中心に急いで泳いで行き、その場で≪形無き王の剣・弱≫を発動。斬艦刀とでも称すべき巨大剣を作り出して当たるを幸いに辺り一帯を薙ぎ払います。
これが第二撃。
そして、その間に下でデボラさんとユウの二人が近くに落ちてきたモンスターの死骸を使って噴煙が上がるのを止めます。
さて、まだ私たちの攻撃は終わりません。
「イズミ!」
「言われなくても!≪生死運ぶ群狼≫!!」
私の攻撃が一段落したところで、海底にて待機していたイズミがその斧の刃に配下の狼を召喚。そのまま勢いよく斧を振って配下の狼を飛ばします。
射出された狼はここが海中である事も関係なしにまるで砲弾のように飛んでいき、ムギと私、両方の攻撃を免れたモンスターたちに食らいつき、射出された勢いそのままにモンスターたちを食いちぎっていきます。
中には軌道が直線の為に横に避けて狼の攻撃を避ける者もいますが、そう言った者に対しては一撃目を避けた所で、敵の視界外で勢いそのままに折り返した他の狼たちが襲い掛かって絶命させていきます。
さて、その攻撃の様子を観察した結果ですが、どうやらイズミの配下の狼たちですが2つの能力を所有しているようです。
一つは海底という特殊な環境でも難なく行動が出来るほどの再生能力。
そしてもう一つは例え掠り傷でも致命傷に変える力を持った牙。どのような属性なのかは分かりませんがかなり強力な力を持っているように思えます。
やがて、敵の影は疎らになっていきます。海底火山からは未だに大量のモンスターがあふれ出てきますが、私たちの殲滅能力が出てくるスピードを上回っているためです。
そして、私たちは僅かに開いた隙を縫って海底火山の中に突入しました。
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海底火山の中は溶岩や噴煙の代わりに大量のモンスターが次々と湧いてくる場所でした。
ですが、湧き出してくるモンスターたちは外に出ることを優先しているためなのか統制がとれておらず、私を初めとした近接攻撃を得意とするメンバーの手によって大した苦労も無く討ち払われていきます。
「それにしても一体どれほどこの穴は続いていますの?」
あまりにも長く続く穴に思わずリョウお嬢様がボヤきます。
ただ、皆考えることは同じなのか。その表情は似たようなものです。
「また敵です。」
「またなのネ。≪知力強化≫」
「またかい。≪剛火槍≫」
と、再び敵が下から湧き上がってくるのを見てウネの≪知力強化≫を受けたムギが≪剛火槍≫で敵集団を爆破。その後、私の剣とイズミの狼が生き残った相手を蹴散らします。
それにしてもこの穴はどこまで続くのでしょうか?
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結局、穴の底に着くまでに1時間ほどの時間を有しました。
水中で敵を警戒しながら沈む必要があったので、ゆっくりと下っていたためにかかった時間ではありますが、それにしても相当深いと思います。
そして穴の底にあったのは、
「これは……門ですの?」
穴の底全てを覆うように造られた巨大な門でした。
「でも、この扉の隙間から伝わる気配……」
「圧倒的な威圧感……」
「間違いないですね……」
扉の先から伝わる気配に全員が一様に息を呑みます。
この気配の主は『這い寄る混沌の蛸王』。今、私たちの国を襲っているモンスターたちの主であり、私たちの目的そのものです。
「いずれにせよ。ここで待っていても何かが変わるわけではありませんわ。私たちの使命は蛸王を倒す事。それはこの先に進まなければ達成できない目標です。」
リョウお嬢様の言葉に全員が覚悟を決めたかのように頷きます。
「では、全員で突入しますわよ!」
「「「了解!」」」
そして私たちは足元にある門を押し広げます。
まず見えてきたのは青く光る岩の壁。
続けて見えてきたのは何かの生物の腕のようなもの。その腕は青を主体としつつも様々な色で彩られており、まさに混沌と称すに相応しい色合いをしています。
そして、私たちは門を完全に抜け、その姿の全てを見定めます。
そこに居たのは十数本の混沌とした色合いの腕を持った巨大な蛸型の生物。
けれど、普通の蛸で言う所の体の部分。そこは私たちの知るものとは大きくかけ離れていおり、私たちがこのダンジョン『深淵の宮』の中で何度も見てきたモンスターたちが直接生えています。
私はその光景を見て、何故蛸王の軍勢があんな短期間であそこまでの数になることが出来たのかを理解しました。
蛸王の能力。それはつまり、
「召喚能力ですか。」
そして私がそう呟くと同時に蛸王の体から生えていたモンスターが蛸王から離れて私たちに向かってきました。
やっと到達です。