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第133話

『満たしている条件を列挙していきます。』

 イズミの頭の中にメッセージが流れていきます。


『レベル10への到達を確認しました。

スキル≪出血防止《アンブラッディ》≫≪筋力強化≫≪自己再生(弱)≫≪生体武器生成・斧≫≪斧習熟Ⅰ≫≪気力回復(弱)≫≪自己再生(中)≫≪生体武器強化・血≫≪人騎一体≫≪生体武器強化・肉≫を確認しました。

特定騎獣への1000時間以上の騎乗を確認しました。

特定騎獣との信頼関係のレベルを確認しました。

敵性存在の殺害数1000以上を確認しました。

■■■ス=■■■ー■との接触経験を確認しました。

『■■■世■』への侵入経験を確認しました。

黄泉還り経験を確認しました。

魔王『争い煽る八百栗鼠』の討伐を確認しました。

魔王『絶対平和を尊ぶ神官』との戦闘経験を確認しました。

魔王『蝕む黒の霧王』に仕えていた経験を確認しました。

半魔王『定まらぬ剣の刃姫』との接触経験を確認しました。

特定騎乗:靄魔狼のモヤ助の戦闘経験を確認しました。

特定武器:生体武器・斧を用いた戦闘経験を確認しました。

特定集団:『霧の傭兵団』、『靄狼の群れ』での戦闘経験を確認しました……』

 ものすごい量のメッセージが流れていきます。いつの間にかイズミはこんなにたくさんの経験を積んでいたんですね。

 ただ2ヶ所だけ内容を読み取れません。きっと魔神に関わりがある項目なのだと思いますけど。

 そしてメッセージが流れきったところで、


『只今より、満たした条件に基づいて茲炉イズミを魔王化します。』

 魔王化……クロキリ兄ちゃんやイチコお姉ちゃんのようにイズミもなるわけですね。

 でも恐れる必要はないですよね。以前魔神は言っていました。イズミの心は魔神には弄れないと。ならきっとイズミの記憶も弄れないはずです。

 それにもしかしたらそもそも魔王になる事と記憶を失う事は直結していないかもしれません。


 イズミとモヤ助の全身。それにイズミたちの周囲に転がっている薄靄狼たちの亡骸が光に包まれて行きます。


『現在の主『蝕む黒の霧王』とのリンクを遮断します。』

 クロキリ兄ちゃんとの繋がりが断たれたのを感じます。

 たぶん、これでイズミはクロキリ兄ちゃんの眷属では無くなったのだと思います。


『霧王のレベルに合わせて、レベルとスキルの調整が行われます。』

 イズミの体に妙な感覚が走ります。もしかしてレベルが下がったのでしょうか?

 確かにイズミのレベル10のまま魔王になると色々と問題がありそうですけど。


『スキル統合を完了しました。≪霧の衣≫を消去しました。≪出血防止≫≪自己再生(弱)≫≪気力回復(弱)≫≪自己再生(中)≫≪人騎一体≫を一つのスキルにし、固有スキル≪生死運ぶ群狼≫へと統合しました。』

 ≪生死運ぶ群狼≫……それがイズミの新しいスキルですか。

 効果については後で確認しておく必要がありますね。


『種族を霧人から『生死運ぶ群狼の命主』へと変更しました。』

 イズミの体が文字通り組み代わっていく感じがします。


「ワオン!?」「えっ!?」

 と、イズミだけでなくモヤ助と周囲の薄靄狼の身体も分解されて光の粒子のようになり、その光がイズミの体に纏わり付いて来ます。


「えっ、まっ!?」

『続けて魔王化に伴ったステータス上昇と魔王専用スキル≪魔性創生≫≪迷宮創生≫の付与が行われます。』

「っつ……!?」

 イズミの全身に力が漲るのと同時にイズミの纏う光が体の中に取り込まれ、それと同時に全身を包んでいた方の光も少しずつその光量を落としていきます。


『魔王化を完了しました。お疲れ様でした。』

 そして、魔王化完了のメッセージと共に全ての光が止みました。


「これは……」

 イズミは自分の体とステータスの変化を確認します。

 体はさっきまで着ていた服は無くなり、代わりに狼の毛皮…というよりは体の各部をそのまま利用したようなものが身体の各所…胸とか腰を覆っていて、頭には狼の頭をそのまま使ったようなフードが付いています。服と言うよりは布を体に巻きつけている感じです。

 それにアクセサリーとして金属製の鎖が首、右腕、左足首、腰に巻き付いていて、それが狼の毛皮を押さえつけているようです。加えて首と腰の鎖には狼の頭を模したような飾りが付けられています。

 それと……なんとなく耳の位置に違和感があってお尻に妙な感覚がある気がします。嫌な予感しかしませんけどこれは後で確認しておきます。今見たら気が動転して話が進まなくなる気がしますから。

 続いてステータスですが、こちらは圧倒的でした。さすがは魔王と言った感じです。でも、今はまだ自分のダンジョンを作っていないので制限されているようです。

 でも作ったら作ったでクロキリ兄ちゃんみたいにダンジョンから離れられなくなるんですよね。きっと。


「後、確認するべきなのは…」

 イズミは身体の慣らしをしながら一先ずダンジョンの外に出ることにしました。



■■■■■



「二人とも記憶の方はどうだ?」

 俺はイチコとリョウの二人にイズミの事を聞く。


「大丈夫です。問題なく思い出せます。」

「問題ないですわ。クロキリはどうですの?」

 二人ともほっとしたような表情を浮かべてそう返してくる。

 ということは魔王化と記憶の喪失は全くの別問題という事か。これはリョウにチリトの二人には朗報と言えそうだな。


「俺も問題なしだ。ただ、魔王化の途中でリンクが切るというメッセージがあったところで繋がりが切れて、通信が完全に繋がらなくなった。」

「それは……」

「まあ、チリトがアフリカに居る事は以前に伝えてあるから、俺の所に戻ってくる気があればチリトと接触を図ってくると思う。たぶん。」

 俺の言葉に二人が不安そうな顔を浮かべる。


「ま、こうなったらなるようにしかならねえよ。どう足掻くかは俺たちの自由だがな。」

 そして俺たちは若干の不安を抱えつつも日常へと戻るしかなかった。

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