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第129話

チリト's VS ロボ

「アレがそうですか。」

「話に聞いていたのと変わらないし。あっていると思うよ。」

 僕が双眼鏡を覗いた先には数体の機械仕掛けの巨人…ロボが動き回っていた。

 その動きは何かを警戒しているようであり、必ず2体以上でチームを組んで動いている。


「これは迂闊に手を出せないな。」

「一体だけでもキツいのに二体同時はちょっと…」

「というか無謀ネ。」

「一体だけでも私たちでは火力不足で時間がかかりますからね。」

 僕たちの目的はこの場所、トゥルカナ湖に居るモンスターを狩り、そのモンスターの素材が狐姫の所で開発した術式を刻み込めるだけの力を持っているかどうかを調べるのが目的である。

 そして今現在僕たちはモンスター…というよりはロボたちの感知範囲の外から敵の状態を探り、単独で行動していて僕たちでも狩れそうな相手を探している状態である。


「とりあえず一度この場を離れようか。あまり長居をしていると感知範囲外でも偶然から見つかるかもしれないからね。」

 ムギさんの提案に僕たちは一様に頷くと近くの村にまで戻っていった。



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「はい。はい。分かりました。ありがとうございます。」

「どうだ?」

「一応、情報は貰えました。」

「それは僥倖ネ。」

 村に戻った僕たちはどうやってあのロボを狩るかの話し合いをするために宿に集まっていた。

 ただ、話し合うにあたってまず必要なのは情報。という事になり、僕は実際にあのロボと戦ったことがあるイチコさんからクロキリさん経由で情報を貰い、他の人たちも村の人たちから話を伺った上での話し合いだけど。


「じゃあまずは互いに得た情報を開示しましょうか。」

「だね。」

 そして話し合いが始まった。


・まずあのダンジョンの出現時期は最初期であり、第一世代の魔王が治めているダンジョンである。

・ロボの強さは他のダンジョンのモンスターに比べて明らかに高く、仮に村が襲われた際には抵抗もせずに一目散に逃げることが予め決められている程。

・どうやら彼らはお互い密に連絡を取り合っているらしく、一体が敵を発見すると周りから他の敵が集まってくることがある。

・首を刎ねてもロボなので動きが止まることは無く、倒すなら全身にダメージを与えて機能不全に陥らせるか、動力炉を破壊するしかない。

・ロボの素材に関してはその強さ故に地元民もほぼ知らない。ただ、その強度や僅かな情報から得られた性質などから特殊な金属を用いられているのではないかと言う話がある。

・動力炉は人間の心臓と同じ役割を持つが、その位置は種類ごとに異なる。

・ついでに双眼鏡越しに僕が解析したステータスなどを提示


「厄介ですね。」

「厄介だね。」

「厄介ネ。」

「「「?」」」

 僕、ムギさん、ウネさんの三人の意見が被り、三人とも真剣な表情を浮かべる。

 それに残りの三人は困惑気味だ。


「確かに厄介だとは思いますがそこまで深刻なのですか?」

 デボラさんが恐る恐ると言った様子で聞いてくる。


「かなり厄介です。」

 僕は一つ一つ厄介な点を上げていく。具体的にはこんなところ


・僕たちのスキル構成はどちらかと言えば防御寄りであり、火力が不足気味である

・ロボは強固な装甲や半魔王の攻撃を受けても耐えられるだけの耐久力を持っている

・ロボは一体が敵を発見すれば、他の個体も襲い掛かってくる

・僕たちの目的は素材なので特定部位を傷つけないで倒す必要もあるかもしれない


「特に拙いのが僕たちは火力不足気味で、相手は耐久力に優れると同時に仲間を呼ぶという点です。」

「一体倒している間に他のが寄ってきてしまう。という事か。」

 僕の上げた点にユキコさんが納得したという表情で返してくれる。


「私たちの攻撃で最大火力と言うとムギさんの≪剛火槍≫でしょうか……?」

「そうなるね。≪火魔法習熟≫もⅠとⅡがあるし、この中ではアタイの攻撃が一番だろう。」

「でも、ムギだけでは動力炉を突いたりしないと一撃は無理だし、二体同時に居たらもう片方が仲間を呼んでしまうヨ。」

「それ以前に僕らの目的は剥ぎ取りですからね。倒した後の事も考えないといけません。あれだけの巨体だと、剥ぎ取りにもそれ相応の時間がかかるとみるべきです。」

「そうなると手詰まり…いえ、最悪全滅する可能性もありますね。」

「一体どうした者だろうな。」

 僕たちはこの手詰まり感に一斉にため息を吐く。

 ただ、自分の仕える魔王の命令で来ている以上諦めると言う方針は存在しないので、何かしらの方策を考えるしかない。


「一先ず、狩るとするならば敵が一体で居るところを狩るのは前提ですね。」

「それは間違いないだろうねぇ。同時に二体以上はどうやっても無理だろうし。」

「攻撃はムギの≪剛火槍≫に私の≪知力強化≫を被せるのが一番ヨ。」

「加えて事前にウネの≪糖縛蜜≫で確実に狙えるように動きを止めておくべきだろうな。」

「チリトさんは相手のどの部分がどういう機能を持っているか、とか分かりますか?」

「ああ、それが分かれば近接組で不意打ちして仲間を呼べなくするとかできますね……」

 意見が少しずつ出始める。

 そして、皆の意見の統合して作戦が決まり、僕たちはその作戦を実行に移すための行動を始めた。

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