前へ次へ
129/157

第128話

第6階層作成回です。

 さて、新しいスキルや設備の確認を一通りしたところで第六階層の作成である。

 方向性としては2種類。長所を伸ばすか短所を潰すかだ。


 現状、俺のダンジョンの長所と言えば第二階層以降に侵入した者の殺害・捕獲率の高さであり、それは不意打ちと罠・構造の凶悪さによるところが大きい。

 ただまあ、未だに破られる感じはしないんだよな。基本的に確殺してて情報が漏れないようにしているから。


 となると今回は短所を潰すべきだろうな。

 短所……単純にスペース不足はまずあるよな。

 ダンジョン内における数にはどうしても物理的に限度があって、限度以上に置くと身動きが取れなくなって侵入者のいいカモにされることになる。

 だからと言って現状の数だと、今回の蛸王の襲撃は無理やり何とかしたけど、本来なら戦力が足りなくて相当酷い事になる。


 うーん。でも実際問題それならどうすればその短所を無くせるのか?

 単純にだだっ広い空間を作る…ボツ。それは流石にどうかと思う。

 地上部にダンジョン領域を広げてそこにモンスターを放す…ボツ。今の丁度いい侵入者の流入量に余計な水を差すことになる。

 他の階層同士を繋げるようにして作った連絡通路…微妙なところだな。単純に作ると侵入者に利用された時に困る。


「後処理終わらせてきました。」

「ふう。まるでモンスターハウスでしたわ。」

 と、イチコたちが帰って来たか。

 ん?モンスターハウス?まあいいか。


「お帰り。残党の掃討と剥ぎ取りはどうだった?」

「残党の掃討については問題ありませんでした。この辺り一帯は『開かれし霧魔の口』でほぼ壊滅でしたし、それ以外の場所でも薄靄狼の嗅覚を生かした追跡で難なく追う事が出来ましたから。」

 イチコが軽く柔軟体操なのか腕を回したり、背筋を伸ばしながら答える。

 うん。丘でもしっかり強調されて…


ドゴオォ!


「クロキリ?」

「すみませぇんイチコさん……」

 ≪霧魔法付与≫腹パンは割と本気で痛いので勘弁してください……。


「はあ、夫婦漫才はともかくとして、治療と葬儀の方は滞りなく終わらせてきましたわ。剥ぎ取りの方についても私は担当ではなかったので詳しくは知りませんが、クロキリが『開かれし霧魔の口』を使ってほぼ無傷で仕留めましたから普段よりもいい素材が大量には剥ぎ取れているそうです。」

「夫婦漫才って……まあいいか。なら、剥ぎ取れた素材とそれを元にした武器が市場に流れ始めたらサンプルとして少し回収しておいてもらってもいいか?『開かれし霧魔の口』の影響が出ているかどうか調べたい。」

「分かりましたわ。」

 そう言ってリョウはアリアにトリの二人とどの程度までなら蓄財を放出できるかの相談に行く。


「では、私もウチの戦力が戻るまでの間、万が一に備えて第二階層と第一階層の間に居ておきます。」

「ん。よろしく頼むわ。」

 そしてイチコも自分が今居るべき場所に向かっていった。


 うーん。それにしても第六階層はどうしよう。

 そう言えばさっきリョウがモンスターハウスとか言ってたな。モンスターハウスってあれだろ?ローグライク系のゲームによくあるやつ。

 でも実際の所、現実にああいう物を作っても通路で一匹ずつ撃退されたり、部屋の中で身動きが取れない状況で範囲系スキルを撃ち込まれたりするとかなり酷い事になるのが目に見えているしなぁ。

 そもそも何でああいう物がゲーム中にあるんだろうな?確かに絶え間なく敵が襲い掛かり続けるってのは侵入者側からすれば結構キツい状況だけど。それだけを目的にああいう物があるとは思えないんだよな。

 うーん。アレかな?モンスターたちの待機所的な意味でモンスターハウスになっているのかな?それならよくあるローグライクのモンスターハウスのように眠っているのはともかく、多種多様なモンスターが一ヶ所に集まっているのは納得がいくかも。

 それにそう言う考え方で作るのなら現実にあっても十分にありだよな。


 となるとだ。

 まず、侵入者が入り込むのを可能な限り防ぐために第六階層から他の階層に移動する場所は一方通行(ワンウェイドア)にしておくべきだよな。

 で、完全に侵入不可能だとそもそも作れないから第一階層の適当な場所……廃墟がいくつもあるからその廃墟の地下室から繋がる様に作ればいいだろう。それに第五階層の深部にも一つ入口を作っておくか。第五階層はモンスターも構造もランダム化してあるから、問題ないだろう。

 第六階層の範囲については第一階層から第五階層までの地下にして、それぞれの階層に所属するモンスターが少なくなった時に移動させてモンスターの数を補給できるようにする。で、移動直後に待ち伏せからの撃破をされないようにするために出口は複数作り、定期的に位置を変更するようにすればいい。


 で、実際の第六階層の構造としては蟻の巣のように細い通路(クエレブレや靄大狼も動き回れる程度には太くするので、案外細くないかも)を張り巡らせる。もちろん二次元的ではなく三次元的に細かい段差も付けつつだ。その上に中程度の部屋をいくつか作成、そこをモンスターたちの待機場所にする。

 その上で待機場所以外の通路には黒沼を仕掛けて侵入者にはスリップダメージを与えるようにし、各部屋の入り口には門兵代わりにスモークや薄靄狼を配置して万が一の侵入者にも備えておく。


「まあ、こんなところか。」

 俺は迷宮創生の画面を通して指示を出し、必要なコストを支払ったところで画面を閉じる。

 これで後は体力が回復するのを待ち、回復したらモンスターと魔源装置を作れるだけ作ればいいだろう。


 とりあえず、俺の回復を促すために皆とイチャイチャしてくっかー

前へ次へ目次