第127話
後始末回です。
『霧王様。少々よろしいでしょうか?』
「ん?アリアか。どうした?」
自室に戻ってきた俺にまず報告をしてきたのは『白霧と黒沼の森』内部に待機させておいたはずのミステスのアリアからだった。
『先程、霧王様が魔術を行使された後に魔源装置の備蓄室に行ってきたのですが……』
「?」
アリアが気まずそうに言葉を詰まらせる。
一体何があった?
『壊滅していました。』
「は?壊滅?」
『はい。備蓄されていた1000込魔源装置が全て砕け散り砂と化していました。種別問わずにです。』
……。マジですか。俺の記憶が確かなら備蓄室には三種類の魔源装置が各30個ぐらいは置いてあったはずなんだけどな……。
砕けた理由は……アレか、『開かれし霧魔の口』の消費コストに対してステージ上に予め用意しておいた魔源装置だけで足りるか不安だったから、こっそり魔法陣に組み込んでおいた補給装置が働いて備蓄室の魔源装置が消費されたんだな。
にしても一回で確認できるだけでもHP,MP,SPを各30000以上消費か。さっきリョウにも言ったけどこの規模で行使する『開かれし霧魔の口』の連発は出来ないな。
もっと小規模なら話は別なんだろうけど。
「とりあえず、その内作り直しておくわ。」
『それはお任せいたします。』
そしてアリアとの通信は途切れた。
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「各地の被害状況について報告が入ってきましたわ。」
「おう。眷属からの通信だけじゃなくて人間の目から見た報告も役に立つからありがたいわ。」
「礼を言われるほどの事ではありませんわ。」
そう言ってリョウが部屋の外に出ていく。
恐らくリョウは人間の話を聞くついでに治療もしに行くのだろう。イチコも残党狩りを命じて出て行かせたのでしばらくは帰ってこないだろう。
なら、今の内に報告を読んでレベルアップ作業を済ませておくとしよう。
まず、狐姫が治める領域についてはほぼ完勝。先走った人間や装備の扱いを誤った奴なんかに死傷者が出たという話があるが、戦闘そのものは一方的だったようだ。
まあ、こっちに流している試作品ってのは実の所最新のものからワンランク落とした物だろうからな。本当の最新式を使えばこんなものだろう。
次に雪翁の治める領域。こちらは本当に完勝。とりあえず雪翁と軍団規模で戦うのは絶対に御免被るような戦いの様子だった。
個人個人の実力なら確実に俺や狐姫の所の方が上なんだが、雪翁は弱いモンスターでも上手く使って強いモンスターに変えるからな。恐ろしい。
続いて竜君の治める領域。ここも今回は問題なかった。怪我人は多数出たが、死者はあまり出なかったし、その怪我人も竜君の所ならその日の内に全員復活しているだろう。
とりあえず前衛を他のダンジョンに所属する者たちが何とか務めてくれれば後は≪桜火雨≫で回復しながらのゴリ押しが出来るからなぁ……あそこは。
で、問題なのが特に誰も治めていない地域。
一応、各魔王が配下を向かわせはしたが、自分の領域を守る必要もあるから主力から一歩引いたぐらいの連中を向かわせざる得なかったんだよな。おかげで他の地域に比べて出ている被害が多い。まあ、それでも俺がほぼ一人で俺の領域に来る蛸王の配下を殲滅できる自信があって、その分だけ配下を向かわせることが出来たから多少は被害も減らせたんだが。
「まっ、この辺は多少諦めて戦力を増やせるだけ増やすしかないな。本音を言えばもう一人ぐらい丁度いい位置に魔王かそれに準ずるような実力者が居てくれればこういう時が楽になるとは思うけど。」
俺は嘆息を吐きながらそう結論を出す。
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さて、続けてレベル上げ作業である。
まずステータスはいつも通り上げる。ここは特に遊ぶ必要なんかも無いし。
で、新しいスキルは……これなんかがいいかな?
≪気体分別≫。自分の認識できる範囲にある空気を構成する気体の比率を操作することが出来るスキル。
と言っても操作対象とする気体次第で消費する力の量に結構な差が出るみたいなんだよな。
例えば水素と酸素だけを一点に集めようとするとアウタースキル並の消費量になるし、元々空気中に多い窒素の濃度を上げるぐらいならそこまで消費量は多くならない。
後、俺の体は霧で厳密に言えば気体ではない気もするが、一応操作可能な対象のようだし、応用性はかなり高いと思う。
まあ、今の俺なら消費と効果が釣り合うかどうかはともかく基本的なスキルなら魔術で模倣できるしな。直接攻撃するようなスキルよりもこういうスキルの方が面白いと思うからこのスキルを選んだんだけどな。
それでまあ、次は毎度恒例の新規作成可能な施設やモンスターの確認だな。
と言ってもモンスターの方は直接攻撃系だけじゃなくて、補助専門の奴も混ざってきていて、お試しで何匹か作ってみて運用してみない事にはどの程度の有用性を持っているのか判断しづらいモンスターが増えているんだよな。だから後回し。
とりあえず施設の方の目玉はこれだと思う。
・封技の鉄枷Ⅱ
金属製の首輪に両手両足に嵌める金属輪4つがワンセットになった道具。
着けられたレベル15以下の人間、魔性またはレベル5以下の魔王はスキルが使用不可になった上に捕獲状態となる。
備考1:スキルを封じられた状態では魔王の特性の一つであるダンジョンの外に出られないという制限を無視することが出来る。
備考2:捕獲状態ではいかなる方法を用いてもレベルは上昇しない。
創生コスト:ワンセットHP,MP,SP各2000
これはな…うん。普通にすごいだろ。
つまりはアレだろ。これを使えば狐姫とかを捕まえて外に連れ出して色々と出来るわけだ。俺自身には使えないのが残念な事この上ないけどな。
後、良さそうなものと第6階層の作成は…追々するか。そろそろイチコたちも帰ってくるだろうしな。
さて、どんなダンジョンを作ろうか?