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第124話

今回は非人道的、性的な表現を含んでいますので苦手な方はご注意を

 イズミが『白霧と黒沼の森』から旅立ってから2年が過ぎました。


「た、助けてくれ……」


 この2年間モヤ助と一緒に北回りで欧州を目指していたのですが、当然その道中は平坦なものではありませんでした。


「あんな事をしておいてよくそんな事が言えるね。」


 人間たちはモヤ助の姿に驚いて攻撃を仕掛け、イズミが一人でいれば色んな理由から襲われ、威圧感を放っていても強くなることしか考えていない眷属やモンスターたちに襲われます。


「ギャアアアアァァァァ!!」


 なのでイズミは二つの事を決めました。


「ひぃ…わ、私たちは領主に脅されただけで……。」


 一つは誰か一人でも攻撃の意思を見せた時点でイズミ自身とモヤ助以外の周囲に居る者はすべて敵と見做して切り殺すこと。


「い、いやあああぁぁぁぁ!!」


 もう一つは相手が命乞いをしようが関係ないと言おうが対象になった時点で殺すことを躊躇わないという事。


「殲滅完了。」


 まあ、おかげで最近のイズミたちは『霧の災厄獣』なんて呼ばれるようになっちゃいましたけど。本物の災厄獣じゃないのに。


「じゃあ、これ以上の騒ぎになる前に逃げようか。」

「バウッ。」

 それで今はイズミたちに通行料だとか言って体を求めてきたロリコン領主とその家族、私兵、使用人を一部を除いて皆殺しにしたところです。


「ほら、貴女たちも早くして。」

「「「は、はい……。」」」

 ちなみにその一部に属する人間にはモヤ助の子供…薄靄狼を産んでもらうために生かしてあります。何回か産んだら処分しますけど。

 あ、クロキリ兄ちゃんからイズミ独自の戦力として薄靄狼を増やす許可は貰っています。おかげでこういう時もまず逃げられる人間は居ません。一匹一匹は弱いのでこまめな補給が必要ですけど。


「もうすぐ、北欧かぁ……。楽しみだねモヤ助。」

「くぅ~ん」

 さあ目指すは北欧にあるというダンジョン。通称世界樹です!



■■■■■



 一方その頃の『魔聖地』


「つまり、そちらからも我々に同行させる眷属を出したい。という事ですか。」

「ええそうです。以前から貴方たちの王である霧王殿たちとは親交を持ちたいと思っていましたから。」

 『魔聖地』までやってきて、物資の補給も兼ねて休んでいた僕たちの前に『絶対平和を尊ぶ神官』さんが来てそんな事を言いました。


「ムギさんどうしましょうか?」

「別にいいんじゃないかい?戦力はいくらあっても足らないことは無いだろう。」

 どうやらムギさんは神官さんに賛成のようです。

 僕は残りの三人。ユキコさん。ハチさん。ウネさんの三人に目だけで神官さんの提案に対する是非を問います。


「私は賛成ネ。神官さんは強いからどちらでも期待はできるヨ。」

「足を引っ張らないなら問題ないと思う。」

「わ、私も賛成させてもらいます……。」

 上から順にウネさん。ユキコさん。ハチさんである。

 それにしても全員賛成か。なら、


「分かりました。皆からの了承も得られましたし、まずは神官さんが僕たちのパーティに入れたいという方に会わせてください。その上で最終的な判断させてもらいます。」

「自分の目で見てから判断する。懸命な考えですね。では、こちらに居ますのでついて来てください。」

 そう言って神官さんたちは僕たちを神殿の奥へと案内していく。

 ところで神官さんは魔神が≪災厄獣の呪い≫を世界中に放った時にその場に居たはずなんだけど、魔神についてはどう思っているんだろうか?


「あの……」

「心配なさらずとも魔神は私にとっても敵ですよ。彼女は私が信じる神ではありませんし、彼女の為に多くの人間が苦しんでいますから。」

 心を読んだ…というよりは単純な洞察力かな。


「貴方方がどこまで彼女について知っているのか、彼女とどこまで本気でやり合うつもりなのかは分かりませんが、彼女を討つ為ならば私はどのような地獄にも落とされる事を覚悟していますよ。」

 鉄仮面で表情は読み取れないが僕の≪真偽判断≫が言っている。神官さんは本気だと。

 ただ、これは僕たちの為にも聞いておかないと


「一応聞いておきます。他にもっと良い手があっても魔神を自分の手で討ちたいと思っていますか?」

「いえ、私の目標はあくまでも彼女を倒して、正しき神を信じる者たちが安心して信仰できる場を作る事。私自身が彼女を討つ必要性は無いと考えています。なので、現状で必要なのは可能性の幅を広げる事。貴方たちを罠に嵌めようだなんて考えていませんよ。」

 神官さんとの会話は楽でいいなぁ。こっちの質問に対して本当に聞きたいことを的確に返してくれるから。


「着きましたね。では紹介します。彼女が私の眷属である『神仕人』デボラ・ガーフィンケルです。」

 神官さんが一人の女性…腰にメイスを付けたシスター姿の女性を紹介してくれる。


「デボラです。よろしくお願いします。」

 ムギさん特製≪翻訳≫の込められたペンダントの力で、聞き覚えのない言語でも問題なく意味が理解できる。

 能力とかは……うん。把握。彼女なら参加させても大丈夫そうだ。

 僕は参加させても大丈夫だとムギさんに首肯で伝える。


「ん。うちの参謀からも許可が下りたし歓迎させてもらうよ。デボラさん。」

「はい。」

 そうしてデボラさんが僕たちのパーティに加わった。

 それにしてもまた女性が一人増えたよ。僕はミバコ一筋だから別に増えてもそっち方面では嬉しくないんだけどなぁ。



■■■■■



 同時期、日本人魔会議にて


「由々しき事態ですね。」

 チリトに代わり、日本人魔会議に参加するようになったトリが眼鏡を整えながらそう言う。


「こちらでも確認しました。残された時間はあまり多くないでしょうし、早く進めましょう。」

 続けてユウが手元の資料を捲りながら他の人物の発言を促す。


「こちらは既に準備万端ですから前回の倍の規模で来ても余裕です。」

 イナホが問題ないと言った面持ちで語る。


「こちらも問題ありません。狐姫・霧王両魔王からの支援により態勢は整っています。」

 最後にミチルが気合を入れながら言う。


「それでは、前回と同じように、」

「我々の国に攻めてきた愚か者に、」

「目に物と手痛い反撃を与え、」

「返り討ちにしてやりましょう!」

 そして再び戦いが始まる。

 前回の侵攻から2年経って再び戦力を整えた蛸王と、2年間互いに切磋琢磨を重ねたこの国の魔王たちとの戦いが。

ソロになった途端イズミが真っ黒になりました

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