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第122話

日常編です

 チリトたちが旅立ってから数日後


ブーーーーーーーーーーーー!


 最近ご無沙汰だった侵入者を知らせるアラーム音が私室で寝t…解析作業中だった俺の耳に届く。


「チリト~って今居なかったか。」

 思わずいつもの癖でチリトに侵入者の解析を頼もうとするが、すぐに居ないことに気づく。

 いやー、なんて言うかなんだかんだで結構俺ってばチリトの奴を頼りにしていたらしい。こういうのは居なくなってから気づくものだからしょうがないけど。


「とりあえずモニターモニターっと。」

「失礼します。」「クロキリ入りますわよ。」

 俺は自分の目の前に各モンスターたちの視界を映したモニターを呼び出す。

 と、同時にイチコとリョウがアラーム音を聞きつけたのか部屋に入ってくる。


「ん。来たのか。っとこいつらが侵入者か。」

 第二階層の入口に配置してある泥人形ズの視界に人影が6つ映る。


「どういう人たちですか?」

「んー。そうだな。」

 イチコがモニターに身を寄せつつ俺に聞いてくる。

 と、侵入者と泥人形たちの戦いが始まった。

 侵入者の面子は格闘家(男)、重戦士(性別不明)、重戦士(性別不明)、片手剣士(男)、治療士(男)、魔法使い(男)である。

 うん。重戦士の中身が女の子じゃなければ皆殺し決定の面子だ。特に格闘家の筋肉がヤバい。テカってて無駄に膨らんでいてモニター越しでも気持ち悪い。


「それにしても何でこいつら『白霧と黒沼の森』の第二階層に踏み込んできたんだ?レベル上げなら第三、第五の方がいいし、蛸王の襲撃からの復興状況的にも第二階層に踏み込むメリットはないと思うんだが。」

「いえ、復興の方はつい先日一区切りがついたと昔の伝手から連絡がありましたわ。」

「それにこの人たち多分ですけど復讐が目的だと思います。」

 俺の言葉に二人から答えが返ってくる。

 それにしても復讐ねぇ。まあ確かに異常なほど念入りに泥人形たちに止めを刺していってはいるな。格闘家の男なんて核が木端微塵になるまで殴り続けているし。


「にしても復讐される理由が分らんな。」

「心当たりが多すぎますものね。」

「集落丸ごとの神隠し、人間たちの虐殺、知り合いが返り討ちにされた恨み、女性関係、その他諸々でまあ多すぎて絞れませんね。」

 いやー、改めて挙げていくと俺も立派な魔王だって感じるわ。仮に死んで閻魔様に今までの罪を問われたら無間地獄確定じゃね?

 あ、でも今の世界って神に見捨てられてるんだよな。閻魔様がいるかどうかも怪しいか。あれも神様みたいなものな気がするし。


「とりあえず外の町にいる影に調べさせるか。」

『グアッ!』

 と、第二階層の特徴である上段のダクトから下段の迷宮部に向かってのミステスの奇襲≪霧の矢≫で治療士の男が腹を撃ち抜かれた。肝臓の辺りをやられているし、あれはリョウクラスの治療能力が無いと助からんな。

 そう思いつつリョウの方を向くと同意なのか頷いてくる。


『畜生!よくも間嶋を!』『しっかりしろ!』『くそっ……治らない……みんな……後は頼んだ……』

『『『ましまあああぁぁぁ!!』』』

 で、テンプレな遺言を残してご退場か。

 あっ、でも仲間を殺したミステスは見逃さずに葬ったか。さすがだな。


「で、こいつらのスキルとか分かるか?」

「見た限りではテンプレ構成に少しアレンジを加えたものですわね。具体的には火力方面に突出していて、二人いる重戦士も片方はヘイトコントロールを捨てて攻撃に特化していますわ。」

 おおさすが傭兵団の団長。人間の使うスキル構成には詳しいな。


「動きからしてレベルの方も高くて6ぐらいですね。連携も多少甘いですから突発的なパーティかもしれません。」

 おおう。イチコの観察能力もさすがに高レベルの半魔王だけあって高いな。

 まあチリト曰く俺よりもステータスの感知が高いらしいしな。


『くそ、どうする。このまま進むのか?』

『当たり前だ!間嶋の死を無駄にするつもりか!』

『俺たちの目標はただ一つ。魔王の首だけだ。その為なら如何なる犠牲を払うのも構わないさ。』

『そうかい。なら俺は……ギャアアアアアァァァァァ!!』

 と、こちらで相談していたら第二の死者が出たようだ。片手剣士の男が逃げようとしたところで牛頭霧の斧で背中を切られてそのまま死んだ。

 まあすぐに魔法使いの攻撃で牛頭霧も死んだけど。


「今の男はおそらく探知役も兼任していましたわね。あのタイミングで攻撃されたら普通は真っ二つですもの。」

「でも避け切れてない辺り、所詮はサブ斥候だよな。」

「ですわね。」

 淡々と三人で侵入者たちの行動からそれぞれの評価をする。


『走れ走れ!ぼうっとしてたらどんどん敵が来るぞ!』

『アッ!』

 そしてその間も侵入者たちはひたすら死地に向かって走り続けている。

 あっ、重戦士の片方。ヘイトコントロールする方が転んで兜が外れた。女だ。可愛い。年のころは17,8。目の下に隈があるのは復讐疲れからだろう。そして鎧に隠れて見えないが胸が大きくて肩こりに悩んでいるタイプとみた!

 よし捕獲しよう!!


『助け……むぐうううぅぅぅ……!』

 俺の意思を受けてダクトから出現した乱し蜻蛉が羽音で行動できないようにしながら女重戦士を連れ去っていく。

 ふう。いい仕事をした。とりあえず今日一日は……


「クロキリ?」

 と、背中から俺の首に向かって金属製の籠手が付けられた手が回ってくる。≪霧魔法付与≫がかかっているのかうっすらと霧も見える。


「何をしていますの?」

 そして同時に正面から≪霧平手≫のかかった手で俺の頭にアイアンクローが仕掛けられる。


 あれー?前もこんな事があったような気がするぞー?

 とりあえずあれだ。


「えーと……、お手柔らかにお願いします。」

「「却下!」」

 俺の心の底からの絶叫が第四階層に響き渡った。

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