第10話
迷宮解放から一週間経った。
我がダンジョン『白霧と黒沼の森』にはあれから誰も侵入してきていない。
「うーむ。不味いよなぁ…。奇襲戦術だってレベル差による限界はあるわけだし。」
ダンジョンに人が来ない理由は分かっている。
うちの南にはこの国の首都があるのだが、その首都のど真ん中に同業者が居て、そいつが考えなしにダンジョン外の人間とドンパチやり続けているからだ。
ちなみにダンジョン名は『鬼の砦』だったかな?典型的なゴリ押しダンジョンで主要モンスターは
後、うちのダンジョンが一人の生存者も出していないのも原因の一端だろう。
なお、これらの情報はダンジョン外に密偵として放ったフォッグがソースとなっております。
あいつ等コストが低くて認識されづらいから情報収集にはうってつけなんだよね。時々命令を無視して人間に悪戯を仕掛けて返り討ちにされてるけど。
閑話休題
さて、これから俺はどうにかしてレベルを上げる必要がある。
が、ただダンジョン外にモンスターを出して襲わせるのはダメだ。効率が悪すぎる以前にうちの入口は既に軍に抑えられていて無理やり突破をしようものならダンジョン外でのモンスター弱体化もあるから確実に返り討ちにあう。
そして、そんな状況が続けばいずれ人間達のレベルが上がって俺を倒せるようになってしまう。
だから単純に外に出すのは絶対にアウト。
かと言って迷宮内の危険度を下げて敵が入りやすくするのもダメだ。既に軍はスキルを使いこなし始めている可能性もある。危険はなるべく冒さない方がいい。
「となると、やっぱ取るべき手段はこれだよな。」
俺は≪迷宮創生≫の画面を開く。前回のレベルアップに伴って手に入れたDPはまだ使っていない。そして今この状況を打開するのに使うつもりである。
俺が何をするのか。まあ…
「自分から来ないなら、攫ってからダンジョン内で始末すればいい。表口が潰されているなら、裏口を作ればいい。うーん。実に魔王らしいやり口だな。」
こういう事である。
ちなみにこの方法でも通常通りの経験値が得られるのはヘルプ君に確認済みであり、ヘルプ君曰く『想定の範囲内です。』とのこと。ちょっと悔しい。
「まあいいや、フォッグ達からの報告では北北西に学校があるっていう話だったな。下水道とか道路下に敷設されてる諸々にぶつからないように深度をある程度調節して…っと。」
俺はスクリーンを注視しつつダンジョンの第2階層となる裏口を慎重に作り上げていく。
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「ん。大体こんなところか。」
俺は今第2階層の作業部屋として作った部屋で作業を完了させた。
というわけで劇的!ビ○ォーア○ターの曲でも流しつつ(MPが勿体無いので自分の脳内でのみ流す)ダンジョン紹介と行こうか。
まず第2階層との連結部は第1階層北西部の沼地に直径10m、落差20mの黒沼滝を作成しそこの壁に滝に隠れるような形で作成。ちなみに水の循環はスキルを使って無理やりやってます。
ん?交通の便が最悪?俺は空飛べるから。
で、そこからまずは直線に通路を伸ばし軍の警戒域の外にダンジョンの出口を置けるようにする。
続けて出口と連結部の間は迷路状にする。この時飛行能力持ちの魔性が簡単に迷路の各所に移動できるように天井にダクトのような構造を取り付けておく。
休憩所は…迷路の隅っこの方に置いておけばいいか。正直使う人間なんていないだろうからデッドスペースだなw
そして、今回の最重要ポイントは出口を如何に隠蔽するかである。
まず出口の上には元々学校が建っている。で、この学校の体育館は床下にスペースが存在しているタイプである。まあ、ここまで言えば分かるよね。
何という事でしょう!何もないはずだった体育館下が見事なダンジョンの入り口に!しかも匠の心遣いにより体育館下のスペースは限界まで迷宮内の扱いになり、霧幻茸が設置された事により見られたり、感知スキルを使われてもばれない様になったのです!
そう、何処からともなく現れるモンスターたちによって、これから先地元住民たちには二度と枕を高くして眠れる日は来ないのです!
さて、ダンジョンも作り終わったところでモンスターを配置しないとなー
お、新しいモンスターも出てきてる。
これは強化タイプだな。
おお、こいつは中々。
迷宮ならこいつは欠かせないよなぁ…。
門番役は…こいつが適任か。
ん?このモンスターは…。ふむ。これはいいな。実にいい。条件が少々面倒だがその価値はあるな。
「ふふふ、楽しくなってきたな。」
俺は笑みを浮かべつつ外に出ているフォッグと連絡を取って獲物の品定めを始めた。
※タイトル修正しました