第106話
模擬戦回です
「えー、只今より第1回日本四魔王模擬戦を行います。司会進行は雪翁様の眷属である私、金栄ユウが務めさせていただきます。」
ユウがメガホンを片手に周囲に居る者たちに話しかける。
そしてその言葉に対して周囲に居る人間たちは、
「ふざけるなー!」
「よくも我々の村を!」
「何が模擬戦じゃー!」
勿論大ブーイングであった。
まあ彼らからしてみれば突然日本に居る四体の魔王の眷属とモンスターたちが押しかけて、ここで模擬戦するからどけやー!だからな。
でも抵抗しない限りは傷つけてないし、壊した物は直すし、それなりの補償を模擬戦終了後にやる予定なんだけどな。
「やかましいですわよ!」
リョウが騒いでいた住人の頭をはたく。
ちなみにリョウは今現在桜火人の八重ミチルと一緒に強制退去の際に怪我をした人間たちを治療していて、具体的には軽傷組はミチルの≪桜火雨≫で、骨折以上の怪我はリョウが≪大治癒≫で回復している。
なお、退去時に死人は出してない。そこはきっちりやってる。
「はあ……、とりあえず進行を続けます。今回の模擬戦はキング1、ナイト3、ポーン300で行い、東に霧王陣営、西に狐姫陣営となり、賭けは無し。勝利条件も単純にキングが討ち取られることになります。なお、解説はイチコさんが行ってくれます。」
ユウの説明が続く。
「よろしくお願いします。とりあえずクロキリは後で私が殴っておきますから住民の皆様は諦めて安全圏で観戦していてください。」
ちなみにイチコが解説なのはイチコの強さだとバランスブレイカーにしかならないからである。というか一人でレベル1とは言え魔王を単身で撃破するような奴をこんなところで出していいはずが無い。
「では、今から一時間後に模擬戦を開始します。」
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「じゃあ作戦と言うか打ち合わせだな。」
俺は自軍のメンバーを見渡してそう言う。
さて、自軍の編成について一つずつ挙げていこう。
まずは本陣。というか俺inフォッグの護衛にはクエレブレ、乱し蜻蛉、ミステス、靄大狼、牛頭霧が一体ずつ配置してある。
「前衛……」
頭の上に的を付けたイズミが自分の配下たちを見ながらそう言う。
イズミのチームは薄靄狼35、靄大狼5、泥人形45、泥兵士5、牛頭霧10、クエレブレ3の合計103体である。
メンバーを見て分かるように正面からぶつかる前衛役で、イズミ自身も前線で暴れ回る予定である。
分かり易く兵種で言うなら歩兵だな。
「整列。」
続けてタバネが自分のチームのモンスターたちを整列させる。
タバネのチームはミステス10、弾丸杓子60、銃撃蛙5、泥魔法使い15の合計90体であり、物理魔法問わず遠距離攻撃の担当になり、分かり易く兵種で言えば弓兵・砲兵である。
なお、三属性の矢が使える姉のミツコではなく、妹のタバネをナイトに据えたのは彼女が≪魔の矢束ね≫という矢系スキルを強化するスキルを所有しているからである。
「見事に幼女ばっかりですね……」
で、うちのナイト最後の一人はリア充爆発しろで有名なチリトである。
役割は自爆特k……
「違いますから。」
「口」
「出てる……」
「ああすまん。思わず本音が。」
さて、改めてチリトのチームの紹介に移るが、このチームの役割は遊撃である。ただ騎兵役はいないから兵種として歩兵である。
メンバーとしては霧蚊20、濃霧蚊5、スモーク15、泥人形40、沼飛魚10の合計90体となる。
うん?沼飛魚がどうやって地上で活動するのかって?それは今はまだ秘密だ。
で、ここまででポーン283体。今回のポーンは300なので残りの17体は空中で全体の補助と相手の空を飛べる魔性を潰すために乱し蜻蛉2、スモーク10、ミステス5という編成でをそれぞれの自由に行動させる。
「さて戦術の方は各員状況に応じてやってもらうとして、」
「問題は戦略の方ですね。」
「だな。」
俺とチリトの二人で戦いが始まったら部隊をどう動かすかを話し合う。
ちなみに、イズミとタバネは戦術はともかく戦略を考えるのは苦手なので、黙って作戦が立て終わるのを待っている。
言う必要があれば言う事は言うけど。
「うーん。敵陣営の様子を見る限りでは前衛が敵を受け止めている間に、後衛が飽和火力で殲滅するという形だと思うんですけどね。」
チリトが最近では貴重品になりつつある双眼鏡で敵陣営の方を見ながらそう言う。
なお、敵陣営は狐型のモンスターだけでなく、犬、猫、馬、アルパカ、象、犀など多種多様な獣系モンスターが詰めている。流石は『百獣纏う狐姫』という名を持つだけの事はある。
「あー、狐姫の性格的にもありそうだな。チェスとかでもよく前衛で止めて後ろで殺る戦術をとってたし、あいつのダンジョンの性格的にも引きつけての狙い撃ちや味方前衛ごと爆破とかありそうだ。」
俺は狐姫のダンジョン『戦獣達の狐都』でレベル上げをしている霧人達からの報告を思い出す。ちなみに死亡者と同じくらいの行方不明者も出ていて、行方不明者はそのほとんどが男性である。ビッチ狐め。
「ムギお姉ちゃん……幕の内に居た……。」
と、イズミがそんな事を裸眼で敵陣地を見てそんな事を言う。ここから敵陣地が見える辺り流石はイズミである。
というか、
「ムギがいるなら確定だな。」
「確定ですね。」
「確定……。」
ムギがいるなら確実にあの大火力スキルが飛んでくる。
「霧王様。」
と、ここで今まで黙り続けていたタバネが声を上げる。
「何だ?」
「勝ったらお腹いっぱいになるまでご褒美下さいね。」
そして笑顔で爆弾発言をしてくれた。
「「!?」」
その爆弾発言の直後に何処からともなく俺に対して殺気が向けられるがここはスルーする。出所は分かっているがスルーする。例え解説席と人間たちの集まる安全圏から向けられているのが分かっていてもスルーする。スルーするったらスルーする。
というかスルーさせてください!まだ俺は命が惜しいんです!
「ま、まあいい、とりあえずの作戦はこんなところだな。」
「そ、そうですね。」
「ん……?」
「霧王様?」
俺は少々の冷や汗を流しつつも三人とモンスターたちに指示を出した。