□#なんか謎世界04
さっきのピ●サーっ娘じゃないけど、なんか街の人達も私の事をちらちら気にしているような様子には気づいてた。こちとら10年近く喪女やってるんだから他人の視線には敏感ですよ。
陽キャラならそこで『嘘……私が可愛いからみんなが見てくる……』みたいな勘違いもできるんだけど、腐れ女の私には『見てんじゃねーよ殺すぞ』みたいなオーラを出すのが精一杯なわけで……それもあってか子供みたいに無闇に話しかけてはこないけど街行く人々の視線は止まない。
ピ●サーっ娘は何で私のHNなんか知ってたんだろう。
それに令嬢って何の事だろう。
この世界が現実か転生先なのかもまだはっきりしてないのに怒涛の伏線投入に困惑ですよ。はやく説明役の女神とか出てきてよ。
まぁなんにせよ、ここが異世界だろうとなかろうと……重要なのはやはり剣牙の配信というわけで。そのために見つけるべきはコンビニなのであって。
「あ、あった」
言うより早く視界にコンビニを捉えた私は一目散に中へと駆け込むために足を速める。結構歩いたはずなのにようやく一軒見つかった……全然コンビニエンスじゃないじゃん。あれか? 自販機とかゴミ箱を撤去したみたいに都心部の景観対策的なやつ? 全く不便でしょうがない。
「うわっ」
自動ドアが開くと私は……れっつとうきょう? まんげきょう? はっぽうしゅ? みたいな間抜けた様を表す声をあげるしかなかった。中が人で溢れかえっていたから。
いや溢れかえっているなんてレベルじゃないくらいに人がすし詰め状態になってる。満員電車みたいな光景。どんな商品売り出したらこんな人が押し寄せるの?現金掴み取りでもやってんの?
入れないから窓ガラス越しにコンビニの中を覗いても人しか見えない。コスプレ人達のバーゲンセール。間違った場所に魔界の扉が現れてモンスターが店内に詰め込まれたみたいになっちゃってる。
これじゃあモバイルバッテリー購入どころじゃあない。並ぶのも待つのも大嫌いな私は潔く素直に諦めて仕方ないのでマップを使わずに自宅へ帰るという強行策に出る事にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「疲れた………」
そんなには歩いてないけど原色だらけの街並みに眼の疲労と脱力感が押し寄せてくる。途中ネカフェやらスマホのチャージスポットやらも探してみたんだけど何処にもあらず。
「交番すら見当たらないってどういうこと?」
愚痴るように吐いた独り言は静かな空間に吸い込まれ消える。少し都心部から離れたところに来ると通行人は嘘のようにまばらになっていた。
というかほとんど人いない。なんなのこの世界、密ってるとこと過疎ってるとこが両極端すぎるよ。それになんか建物とか道路の造り方が適当すぎるっていうか……なんだっけ、グラフィックがひと昔前のゲームみたいな感じになってるんだけど。オノボリじゃなくて……パリコレ? だっけ。
「あ」
そんなカクカクの道を歩いてると見慣れた建物が見えてきた事にようやく肩の力が少し抜けたのを感じる。私の住むマンション。一人暮らしにしては少し贅沢な家賃のおかげで周りの建物よりかは高くて目立つからすぐに発見できた。ご近所さんの風景の解像度が低すぎて見逃すところだったよ。
「ようやく会えるよ剣牙に……配信終わってなければいいけど」
こんな意味不な世界に来ちゃったけど、剣牙さえいれば何処だろうと関係ない。
両親のことは心配だけど。なんとか連絡取れないかな、配信が終わったらL●NEしてみよう。会社は消滅してればいいな等と様々な想いを交錯させながら住処にたどり着いた私はオートロックの扉を開いた。
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