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9、投擲武器を作ろう!

 ここは大規模な採掘場ですか。

 重機もないのに、よくもまあこんだけ切り出したもんだ。

 綺麗な板状の岩が崩れるように散乱している。

 明らかに自然破壊だけど、ここは岩しかないから許してほしい。

 切り出したは良いけど、動かすのが大変じゃね?


 …当初の目的である、槍や斧を作ろう。

 長さ20cm程の薄い板状の岩を手に取ってみる。

 縄はないが(ヒョウ)苦無(クナイ)でも良いな。

 とにかく『刃』の部分をつけられるか試してみよう。

 古代の人々が使った打製石器というやつだ。


 ガッ ガッ ガッ…


「うーん、上手いこといかない」


 角石を手に持って石板のエッジを叩いて刃を付けてみるが、狙った通りには砕けない。

 打製石器って意外に難易度が高いことがわかりました。ハイ。

 古代人のみなさま、尊敬します。

 歪な形で使い物にならないので、壁に投げつける。


 シュッ  ズガン!


 お〜、深々と岩に突き刺さった。

 投げたものも強化される。謎だ。

 謎だけど、投げ世界が広がりますな!

 無限の可能性が異世界にはある。

 投げの既成概念を投げ捨てなければ。




「まてよ、打ちつけて作るのは無理だけど、()()()作れるんじゃ?」


 さっきと同じような石板を手に取り、角石を優しく投げつけてみる。


 パキンッ


「おおぉ〜、イケそう!」


 狙った通り石板のエッジを削ぐことができた。

 投げってスゴい。

 投製石器(とうせいせっき)だ。

 どんどん行こう。


 パキンッ パキンッ パキンッ


 コントロールが難しい。

 こんな近距離で優しく投げたことがないもの。

 それでも何度もやっているうちにコツが掴めてきた。

 角石の尖ったところを狙った場所に置いていくような投げ。


 パキンッ パキンッ パキンッ


 これはあれだ、あれの感覚に似ている。

 ペタンクだ。

 金属製の玉を投げあって得点を競う、フランス発祥の球技。

 中学生の時に公園でやっていたグループに声をかけて入れてもらったことがある。

 そのグループは年配の方が多く最初は優しく教えてもらっていたのだが、高得点を連発する俺に段々腹を立ててしまい、追い出されてしまった。

 まだまだ習得すべき投げがあったので、次の週も押し掛けて混ぜてもらい、その後、和解。

 正式にチームに入れてもらい国内でも有数の実力派チームとして名を馳せ、国際大会にも出場した。

 高齢のリーダーの引退に伴いチームは解散したのだが。


 あの繊細な置きにいくような投げに通じる。

 相手ボールに当てて弾くような投げ方ではなく、ビュット(目標玉)の近くにそっと寄せるときの呼吸で。


 パキンッ パキンッ パキンッ


 手の甲を上に向けて少しスナップを効かせて回転をかけると、掘削面がキレイに仕上がる。

 良いねぇ。





「ふぅ、良い感じに刃をつけられたぞ」


 槍の穂先というか、苦無みたいな形状だ。

 磨製石器のように滑らかではないが、唯の岩から作ったにしては上出来ではないかろうか。

 今度は木材にセットできるように菱形っぽい形のものを作ろう。

 石板はいっぱいある。ありすぎて困る。

 コツを掴んだので、それほど苦労せず槍の穂先っぽい菱形のものと投斧型、苦無型を何本も作りあげた。





「お腹が減ったな…、やべっ魚を焼いてるの忘れてた!」


 出来たばかりの石苦無1本と角石を持って調理場(笑)に急いで戻る。



「…ちょっと焦げちゃった」


 残念。でも肉厚なので炭化したところを剥がせば大丈夫だろう。

 時間を忘れて砕石と投製石器の作成をしてしまったが、お昼過ぎぐらいのような気がする。

 この世界の1日が何時間なのかはわからないが。

 でも太陽は真上あたりに来ているようで、影が短いからやっぱり昼ごろだろう。

 日時計みたいなものを作ったほうが良いかな?

 いやいや、そんなに悠長にここに留まっていては詰んでしまう。


 とりあえず、昼飯だ。メシメシ!

 肉厚過ぎる部分を石苦無で削いで食べる。

 削いで生焼けの部分が出てきたので、もう一度焼こう。

 やっぱり刃物があると便利だ。

 流木を割り出した破片でお箸も作ろう。

 それにしてもこの流木、長いこと燃えているな。

 何度か木を足しているけど、なかなか燃え尽きない。

 かと言って燃えにくいという訳でもない。

 これも異世界パワーか…。


 …ババババッ


「んっ?なんか音が聞こえたような…」


 立ち上がって見渡すと、湖の対岸あたりに何かが動いている!


 いや、飛んでいる…?


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