62、対価
「異世界からおはようございます!
徹底投擲チャンネルの投神ですっ
今日もね、この世界の住人6人とね、行動を共にしたいと思います
連れていってもらうよう、散々お願いしてるので通じてると思うのですが、何せイマイチ話しがわかんなんないんですよね…
彼らがここに何をしにきたのかは不明ですが、視聴者の皆さんも一緒にね、見ていってもらえればと思います
あとね、びっくりしたことがあってですねっ
彼らは何もないところから物を取り出せるようなんですよ!
初めて見たときは声を出すほどびっくりしましたが…
1人用のテントみたいなのをポンポンってだしていくんですよ
道理で荷物が少ないんですね
ちょっとデカいリュック背負ってるの恥ずかしくなっちゃいますが、この世界の人のデフォルトな能力なんでしょうかね…?
すっげぇ羨ましい!
食料なんかも出せるし、なんと着ている鎧も一瞬で無くなったり、装着したりできるようです
ヤバい!
そんな力があったらヒーローショーで重宝しそう
質量保存の法則どこいった!
異世界恐るべしです
あ、テントから皆さん出てきそうな気配がしてます
また白い目で見られそうなのでオープニングはここまでにしたいと思います
それでは、世界を〜投げ投げ!」
青いランプのプロアウェイを首に戻し、荷物をまとめて木を降りていく。
場合によっては、この拠点にはもう戻らないかも知れないのだ。
柳に触れて、感謝の念をおくる。
一旦ここを離れることになっても、俺はまたここに戻ってくる予感…確信がある。
だから今生の別れではないさ。
水をやれないのが心配だけど、なんかお前はもう大丈夫な気がする。
お互い逞しく生きていこう!
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朝、目が覚めるとHPMPともに全回復していた。
普通“野営”した場合、MPは全階位が3回分回復するのみなのに…。
あの水を飲んだお陰だ。
ヨゥトが取り乱すのも理解できる効果だ。
投神殿はもう起きていて、木から降りてきていた。
「おはよう、投神殿」
「オハヨウ」
「あ、二人ともおはよう!
お日様だー!」
「おーみんな、おはよう」
「おはよう」
みなも全快しているようで、力が漲っているようだ。
「皆、おはよう
今日はこの終絶の地の調査を行う
お互いが見える範囲でバラけるが、何かあったら声をだして報告すること。
地図や情報になかったこの巨木や石切場はもちろん、魔物の形跡がないか徹底的に調べるぞ
あの勇者様方が直接ギルドに指名依頼を出される程の怪異がある筈だ
強力な魔物との戦闘もあり得るから気を抜くなよ
少しの変化でも良い、感じた事は報告し共有すること
それでは巨木の周辺から調査開始だ」
「「「了解!」」」
調査が始まった。
巨木の周辺、石切場の周辺を調べたが、特になにも見つからなかった。
石切場の規模からすると、作業に携わったであろう大人数の人々が生活した形跡が無さ過ぎるのが、かえって不思議である。
時折強く吹く風が、何故かすり鉢状の底に向かって吹き込むので、岩の大地の上にあるもの全てが吹き溜まっていく。
そしてその結果、この岩だけしかない土地にあって、脆弱ながらも唯一の土壌を形成して巨木を育てているようだ。
巨木は樹木に詳しいジンズでも知らない種類のようだが、ジンズ曰くまるで耳長族が信仰する“世界樹”のような霊力を秘めているらしい。
まだまだ成長過程であり、最終的にどれ程の大きさになるかは見当もつかないようた。
勇者様とギルドに報告だ。
石切場と投神殿が『ナゲイケ』と呼ぶ人工池は、どのようにしてこの硬い岩盤を割ったのかはジェーメでも分からないという。
魔術は魔法のようにでたらめなものではなく、呪文によって制御されて決められた効果しか発現できない。
石を切り出すような真似は賢者の魔術でも出来ないらしい。
となると魔法を使う魔人の仕業という可能性もあるが、石を切り出す理由が分からないな。
この件もしっかり報告しよう。
「あ、あなたは何をやってるんですかー!」
ヨゥトの絶叫が響き渡る。
駆け寄ると巨木の根本で怒りの表情のヨゥトが戸惑う投神殿に詰め寄っている。
「どうした!何があった?」
「リーダー!投神様はこの貴重な水を木なんかにかけてしまわれたのです!」
「ォ、オレヲツレテケ…?」
「この原始人はこの水の価値すら分からないのです!
やはり水は我らが有効利用すべきです!」
「落ち着け!ヨゥト!
昨日も確認したが、この水は彼のものだ
水をどのように使うかは、彼に決定権がある」
「し、しかし…!
彼を保護し、街に連れて帰るならば、対価が必要では?
これはギルドも、神も推奨されている等価交換なはず!」
「どうしたの〜?」
騒ぎを聞きつけ、ジェーメがやって来た。
「投神殿を街まで連れていく、つまり護衛依頼に対する正当な報酬を投神殿に要求したい、ということだなヨゥト」
「そ、そうです!」
「あ〜、それは大事なことだね!
えと、投神くん、街まで連れてってあげるから、なんかちょうだい?」
「オオ〜」
パッと顔を明るくした投神殿はリュックを漁り、大量のアイテムを出してきた。
「タリルカ?」
「な、なんだこれは!」
投神殿が両手に乗せて渡してきたものは、大量の魔物の牙!
20本程もある。
「こ、これは神狼の牙ではないか、投神殿!」
『鑑定!』
思わずヨゥトは鑑定の魔術を使った。
「これは神狼…、これはキマイラ?しかもエルダーキマイラだ!」
「エルダーキマイラ?」
「首が3本とヘビの尾のSランク魔物です
それにこれはケルベロスの爪…?」
「地獄の番犬か⁉」
「はい…ケルベロスもSランク相当かと…」
「投神くん、すごいね!
こんだけあればバッチリだよ〜!」
「充分過ぎる!
こんなにもらえないぞ、投神殿!」
「オレヲツレテイッテクレ!」
返そうとしたが投神殿は頑なに受け取らない。
仕方がない、好意に甘んじよう。
「わかった、投神殿
我らが責任を持って街まで連れて行こう!」
「オ〜、マチ!ツレテケ!」
「良かったね、投神くん!」
「ツレテケツレテケ〜!」
「ヨゥトもこれで文句はあるまい
我らの装備を一新できるぞ!」
「…はい、了解致しました
しかし、どうやって投神殿はこんな大量のアイテムを得ることができたのでしょう?」
「投神くん、どうやってこれをとったの?」
「ドウヤッテ…?
…イシナゲタ」
「いし?」
「アァ、イシダ」
投神殿はそう言って石を投げるジェスチャーをした。
「石で魔物を倒せる訳がないでしょう、投神様!」
「…何を揉めてんだ?」
「にゃー?」
散らばって調査をしていた皆が全員集合してしまったので、経緯を話して聞かせた。
「じゃ解析をかけさせてもらえば、投神の秘密が分かるんじゃねーか?」
「私も賛成です」
「解析は許可を得ないとマナー違反だ
ジェーメ、説明してくれないか?」
「う〜ん難しいけどやってみる
投神くん、解析って魔術をかけて良い?」
「???」
「君のことを深く視させて欲しいんだ」
「…?
ヨクワカランガ、ミルガヨイ」
そう言って両手を開いて受け入れの意を示してくれた。
「ありがとう
ヨゥト、頼む」
「はい、『解析!』」
「パーティー内共有も頼む」
「…は、はい…」
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現状能力
◇名前:投神 ◇種族:普人族 ◇年齢:29
◇職業:--- ◇階位:--- ◇属性:善
◇体力:10 ◇腕力:10 ◇敏捷:10
◇魔力:0 ◇信仰:10 ◇幸運:10
◇攻撃力:--- ◇防御力:--- ◇回避率:--- ◇魔回避率:---
◇白魔術:0/0/0/0/0/0/0/0/0
◇黒魔術:0/0/0/0/0/0/0/0/0
◇錬金魔術:0/0/0/0/0/0/0/0/0
◇召喚魔術:0/0/0/0/0/0/0/0/0
属性攻撃率
◇地:0% ◇水:0% ◇火:0% ◇風:0% ◇空:0% ◇聖:100% ◇闇:0% ◇練:0% ◇竜:0%
属性防御率
◇地:0% ◇水:0% ◇火:0% ◇風:0% ◇空:0% ◇聖:0% ◇闇:100% ◇練:0% ◇竜:0%
状態異常発動率
◇睡眠:0% ◇猛毒:300%※ ◇沈黙:0% ◇混乱:0% ◇麻痺:0% ◇魅了:0% ◇石化:0% ◇消失:0% ◇即死:0%
※毒武器攻撃時のみ発動
状態異常抵抗率
◇睡眠:150% ◇猛毒:300% ◇沈黙:120% ◇混乱:150% ◇麻痺:120% ◇魅了:200% ◇石化:120% ◇消失:120% ◇即死:120%
◇魔技
◇灮闡能力
◇称号
『界を渡りし者』
・詳細不明
『地形破壊者』
・地形を破壊する場合、体力と腕力を上昇させる。
『孤軍奮闘』
・単独で魔物と戦闘する場合、体力と腕力と敏捷を上昇させる。
『不死之王の呪いを破りし者』
・聖属性攻撃率を上昇させる。
・闇属性防御率を上昇させる。
・一部の状態異常抵抗力上昇させる。
『蠱毒の壺に残りし者』
・全ての状態異常に対する抵抗力上昇させる。
・毒の武器を使用した場合のみ、猛毒の状態異常発動率上昇させる。
『異世界樹の守り人』
・詳細不明
◇その他
・投げることにのみ補正(神)
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「なんなんだこのステータスはっ!」