あめ

作者: らる鳥



 ある朝、目を覚ますと、激しく雨が降っていました。

 ざぁざぁと、大きな音をたてながら。

 枕元の時計を見るとまだ六時。

 もう少しだけ、眠れます。

 朝の布団は温かく、柔らかく、とても優しい。


 もう一度、目を閉じました。

 でも音は、止まることなく鳴ってます。

 ざぁざぁと、それからついでに、時計の針は小さく小さくカチカチと。


 もぞもぞと布団の中で丸まりながら、考えます。

 どうして音が、鳴るのだろう。

 時計の中には歯車があって、噛み合いながら動いてます。

 少しずつ、かち、かち、かち、かち、と回ります。

 多分きっとその、歯車が頑張ってる音なのでしょう。

 もしかしたら、実は違うかも知れませんが。


 なら雨も、恐らくは何か理由があって、ざぁざぁと音を立ててるに違いありません。

 雨が降ってる事を、知って欲しいのでしょうか。

 ちゃんと傘を持って家を出るようにと、音で教えてくれてるのかも。

 どのみち家を出る時には気付くので、余計なお世話な気も、少しだけ。


 目を閉じて、耳を澄ませて聞いていると、ざぁざぁという音も、時々変わります。

 強くなったり、弱くなったり。

 なのにとても単調で……、音が頭に溶けていく。



 ピピピピピッ!

 音が、音が、鳴りました。

 ハッと気付けば、雨音なんかよりずっと大きく、時計が自己主張をしています。

 少し前まで、あんなに大人しかったのに。


 だけど時間を見ると、もう七時。

 そろそろ動く時間でしょう。


 いやいやながらに、もぞもぞと、布団を這い出してみれば、あぁ、ひんやりとした寒さに震えます。

 雨が降ってるからでしょうか、今日は一段と寒く思います。

 だけど雨音は、もうあまり気になりません。


 おはようございます。

 顔を洗って歯を磨いて、朝ごはんをたべましょう。

 そしたら着替えて、出掛けます。

 あぁ、そうそう、傘はちゃんと、忘れずに。


 行ってきます。