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第27話 「素直なままに…」

『み…と』


『おい!みな…と』


誰かの声が聞こえる…私の意識が戻ってくる感覚を感じて、そっと目を開ける。

何だか長い夢を見ていた…そんな気がする…まだ誰かの声がする。


「しっかりしろ!皆人」


目の前に俊樹がいる…何で俊樹がいるの!

確か…青嶋さんとぶつかる寸前で気を失ったはずなのに…。

そっか…これもまだ夢の続きなんだよね…夢にまで、会いに来てくれたんだ…。

すごく嬉しいよ~♪嬉しさに思わず、俊樹の顔を触れようと手を伸ばす。


「良かった…気が付いたんだな、皆人」


そう言って、私が伸ばした指に俊樹の指が重ねてくる。

えっ!?これって…夢…じゃない…の??

惚けている私に、俊樹が抱き着いてくる!?え!?どうして??


「良かった…本当に良かった」


何がそんなに良かったのか!?私って…青嶋さんとぶつかったはず…だよね?

わたし…元の身体に…戻ったんだよね??…そっか、それで良かった…なのかな…。


「そっか…私、元に…戻ったんだ」


「ん!?何を言ってるんだ?皆人」


「えっ!?私の身体が…元に戻ったんじゃないの??」


俊樹の抱擁から解放され、俊樹と目が合う。

真剣な眼差しで俊樹は言う。


「自分の身体を、よく確認してみろよ」


「うっうん…」


そう言われて、身体を見てみる…細い手や足に…女子の制服…長い髪…。

青島さんの身体のままだった、元の身体に戻っていない!

ホッとして、俊樹の顔に向かって…私は笑顔になった。

ホントに…ホントに良かった…。


「…たくっ、イチャイチャしやがってよー」


青島さんが、心配な顔をして私に近づいてきてた…。

俊樹のことを意識していたから、全然気づかなかったよ…あ~恥ずかしい!

決して…イチャイチャなんか…してないし!


「あっ青嶋さん…あの…大丈夫だった?」


「まぁな、翠川が来なかったら…マジでヤバかったけどな」


「って、気をつけろよ赤坂!俺たち、もう少しで元の身体に戻るところだったんだぞ!!」


うん、そうだよね…あの頃と同じ状態になっていれば…お互い、元の身体に戻っていたはず。

そう思うと、突然…恐怖が押し寄せてきた、もし…俊樹が受け止めてくれなかったら…って。


「ごっごめんなさい…昨日眠れなくて、それで…寝坊しちゃって…」


「真面目なお前にしちゃ珍しいな…何かあったのか?」


「あう!?…ううん、何もないよ、うん何も…」


俊樹のことを意識しすぎて…全然、眠れませんでした…って、言える訳ないじゃん!

しかも、本人の目の前で言えるわけがないし…恥ずかしすぎる!


「…ふ~ん、まぁいいや、急がないと遅刻してしまうぞ?俺は先行くからな!」


そう言って、青嶋さんは走ってこの場から去って行った…。

私たちも急がないと…立ち上がろうとした時に足に痛みが!?


「痛っ!足を挫いちゃったかな…」


このままだと2人とも遅刻になってしまう、俊樹だけでも先に行って欲しい。


「私のことは良いから、俊樹は先に行って、こののままじゃ2人とも遅刻しちゃうよ…」


「ケガしたお前を置いていくわけないだろう?ちょっと待ってろ…」


そう言って、俊樹は私を抱え上げた…えっ!?これって、お姫様抱っこじゃん!?

この状態で学校に行くとか…みんなから注目の的だよ!それだけは勘弁してー!!


「え!?え!?はっ恥ずかしいよ…俊樹」


「いいから黙ってろ、学校に向かうぞ」


そう言って私を抱えたまま駆け出した…絶対おんぶの方が良いと思うんだけど。

何も言えない自分がなんとも悔しかった…何だか今日の俊樹…カッコいいんだもん、卑怯だよ!


「私…重くない?大丈夫??」


必死に私を抱えたまま走る、俊樹に問いかける。

顔を見ると真剣な眼差しで、すごく汗をかきながら走っているから気になって…。


「皆人、ちゃんとご飯は食べているのか?軽すぎるぞ、お前…」


「えっ!?そっそんなこと…ないけど…」


でも、青嶋さんのために体型を維持はしていたのは、確かなんだよね…。

少しダイエットもしてたし、あまり食べてなかったかも。


「少し、ダイエットしてた…体型を維持したくて…」


「それでか…でも気をつけろよ?間違ったダイエットは身体を壊すからな??」


「うっうん、気を付ける…」


何だか今日の俊樹は、いつもよりもずっと優しくてカッコ良くて…、

ずっとドキドキしているよ、顔を見ることが出来ない…ホント、ズルいよ…。


何とか学校の校門まで来ることが出来た…でも時間は、もう過ぎている…。

2人で走っていたら間に合っていたのに、ホントごめんなさい…私がドジなばかりに。

私が何も言わず、落ち込んでいると…。


「時間は気にするな、皆人、ケガをしているんだから仕方がない」


「とにかく、保健室に行くぞ」


「うっうん…でも、もう良いから降ろして…」


このまま学校の敷地に入ると、学校のみんなに見られて、後で何を言われるのか…。

そんなことを考えると…恥ずかしくて、明日から私…学校に行けないよ!

いいかげん学校に着くまでに、色んな人に見られては、微笑ましい笑顔を向けられて…、

恥ずかしくて恥ずかしくて、この場から消え去りたいぐらいに辛かったよ!


「保健室に着くまではダメだ!ケガが悪化すると困るからな」


「ケガよりも…みんなの目が…」


「そんなことは気にするな、それよりもお前のケガの治療の方が優先だ!」


言い出したら止まらない、融通が利かないところは俊樹の悪いところだよ、ホントにもう!

もう好きにして…私は考えることを諦めた。

教室の方から、みんなが発するそれぞれの言葉が聞こえてくる。


『おい!あれ俊樹と青嶋さんだよな?今日は来ないのかと思っていたら…』


『青嶋さん、お暇様抱っこされてるよ、すてき~♪私もされたーい~♪』


『…リア充、爆発しろ!』


私は、真っ赤になった顔を俊樹の胸に隠すのに必死だった。

教室に戻ったら、一体どうなることやら…そんなことを露知らず、

俊樹はまっすぐ、保健室に向かうのでした…。

何とか書き上げました…まだ体調不良です。

しかも話があまり進んでいないし、次の話もアップは遅くなると思います。

申し訳ありません。

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