ラミスの家での生活
これで7、8話くらいですかねぇ…
20話にはまだ遠い…
ラミスさんの家に厄介になってから7日くらいが過ぎた。
7日間俺は何をしていたかというと、寝て食って寝て…食って…見て…。あれ?
そう、ラミスさんが武具を造ってる中俺はだらだらしてるだけだった。
だってラミスさんが武具を造ってる所に行こうとすると『危ないから近付くな』って言うんだもん。
まぁ人としての対応は正しいんだけど、これじゃあ俺の本来の目的が…
ってな訳でこの前武具を造ってる所を見せて下さいと一生懸命頼んだらラミスさんも了承してくれた。
そんで先日、手伝いたいと言ったら…まぁ断られた。
今日こそ手伝わせてもらう様に一生懸命頼もう…
「さて、起きますか!」
オレは要所に鉄の支えの付いた木製のベッドから降りた。
ここ数日で知ったのだが、ラミスさんは鍛冶屋なだけあって木材を使った工作もするらしく、国の日用品は主にここで造られるのだそうだ。
掛け布団を除くとここのベッドは元の世界より出来が良かったりする。
これだけの技術がありながら外国との交流があんまり無いのは何でだろう…。
ま、難しい事は幼女のオレには関係ないね
さて、ラミスさんの所へ行かないと
リビング的な部屋に行くと、ラミスさんは朝食を作っている最中だった
「おはよーラミスさん」
「ん?ライトか。もうすぐ出来るから待ってなさい」
「はーい」
この世界で気付いた事がもう1つある。
それは、挨拶が無いという事だ
いや、一般人の間では無いのかな?
王族や貴族の間ならお辞儀や礼みたいなのはあるらしいが、そういう柄ではない人は挨拶などしない。
一生懸命頼んだ時も頭を下げたら逆に土下座されて
『やはり貴族の方でしたか!申し訳御座いません!貴族様に頭を下げられる様な事を自分は…!』
って感じになっちゃって大変だった
でもこれって物を頼む時にはかなり効果があるかも…
「よし、出来たぞ〜」
ラミスさんは出来た料理をテーブルに置いた
「あ、相変わらず凄いね…」
「何を言うか、職人たるもの力の付く料理を食べるのも仕事なんだ」
ラミスさんの出した料理とは、鳥の丸焼きだ。
ホントに大きい…。オレの顔二個分はあるかな…
こんな豪勢な料理はクリスマスに寂しく1人で食べたきりだよ…
ってここ7日間はそんな事を考えながら食べてました…。カナシイ…。
「…では、いただきます」
手は合わせなかったが、オレは自前の箸を出して鳥をつつき始めた
「…前から気になっていたんだが、その『いただきます』ってのは何だ?それにその細い綺麗な棒は?」
…う〜ん、やっぱり?
「これはオレの元の国の風習で、これは箸って言う食べ物を食べる時に使う道具なんだ」
「元の国?ライトはサウシア人じゃないのか」
「そーです。あむあむ…」
うん、この鳥うめー!
「つまりライトは異国人で、異国人が他国の戦争を手伝うと?」
…ま、まぁそうなるわな
「オレ個人が参加しただけだから国は関係ないよ?」
「異国の…しかもこんな小さい子に情けを掛けられるなんて…。それでライトは何をするんだ?」
そう!その話がしたかった!
「オレも武器を造るのを手伝わせてもらいます。あと戦場に赴きます」
「冗談はよしなさい。手伝うのはまだしも、戦場などに出てみろ。命がいくらあっても足りないぞ?」
「つまり手伝わせてくれるんだね?」
凄まじき交渉術!…でもないけど、誰か誉めて!口達者なオレを誉めて!
「…王様のご命令通りに」
それもあったね
「だが…」
「雑用は嫌だよ?オレはあくまで『武具を造る手伝い』がしたいんだ」
今のオレって結構ワガママかな?
でも雑用スキルなんて無いししょうがないよね?
「…仕方無い。話の続きは向こうに行ってからにしようか」
「うん!」
子供らしく無邪気に微笑もう…。もうそんな表情の作り方なんて忘れたけどなんとかなるよね?
「(だ、大丈夫かなぁ?)」
心配しているラミスであったが、愛らしく微笑んでいるライトを見ているといつの間にかラミス自身も笑みを溢していた。
子供の力ってすげー!
・・・・・・・・・・・・
色々あったがオレは今ラミスさんの作業場に居る
ラミスさんは作業着に、オレは作業用のエプロンを着ている
「何か造った事は?」
「(ゲームでなら)何回かあるよ」
「う〜ん、いきなり何かを造らせるのは心配だし、…ちょっと待っててくれ」
ラミスさんはそう言うと棚からナイフを持ってきた
「これは銅で出来たナイフだ。しばらく使ってないからすっかり鈍ってしまって使い物にならなくなってしまった」
「このナイフをどうにか使える様にしろと?」
「そうだ。ちょっと難しいかもしれないから困ったら質問するんだよ?」
「りょーかい!…早速だけど砥石みたいなのはありませんか?」
強化と言ったら砥石だよね!
「砥石ならそこにあるよ」
「ありがとう」
オレはラミスさんの指差す方向へ向かった
「(こりゃ参ったなぁ。この子ホントにやった事あるよ…。もしかしたら質問はあれで最後かもな…)」
数分後
散々包丁みたいに研いでいたしそろそろいいかな
「よいしょ…よいしょ…ふぅ…」
「おお、出来たか?」
「うん、出来たよ〜」
はてさてどんな威力になったかな?
オレはナイフを渡した
「この木材に傷を付けるくらいじゃないと困るぞ?」
ちょっと嬉しそうにラミスさんはナイフを木材に当てた。
ストンッ
「…お?」
ナイフは木材処か、木材を置いた土台まで容易く貫いてしまった。
まるで爪楊枝をたこ焼きに刺した時みたいに…
「な、なんだこれは…。す、凄いじゃないかライト!あのナマクラがこんな切れ味になるなんて!」
「もしかしたら鉄も切れるかもしれないよ?」
調子こいた事を言ってみた
「面白そうだな、やってみよう!」
ラミスさんが出したのは3㎝くらいの分厚い鉄板
これを切るのは流石に無理だと思う…
「よし、まずは当ててみよう…」
ラミスさんはさっきと同じ様にナイフを鉄板に当てた
「…うーん、流石に当てただけじゃ無理か。じゃあ少し力を入れてみるぞ…」
すると、ナイフは容易く鉄板を切り裂き、またもや土台という犠牲を出した
「…なんてこった。こいつは凄い切れ味だ…。危ないなんて代物じゃないし安全に保管しないと」
「だがこんな切れ味じゃ鞘が壊れるな…。そうだ、ライト!」
「…なんですか?」
「そこの作業台であのナイフの鞘を強化してくれないか?材料ならあるから」
「りょ、りょーかい!」
もしかしてこれって認めてもらえた?
「(…うむぅ、ライトは本当に凄い人物なのだな…。ライトが武具を造ったらどんなものになるか楽しみだ)」
参ったな…。
刃物なら研げばオッケーだがこういう鞘とかはどうやって強化するんだろう…
「…う〜ん」
「(どう仕上げるか悩んでいるのかな?)」
そうだ!こんな時こそ能力だ!
『鍛冶全般における作業を全て覚える飲み薬』よ出てこい!
シュウィィィン…
お?なんか今回は登場の仕方が違うな
ゴクゴク
…まるで味噌汁みたいな味のする薬だなぁ
さて、効果の程は…
しゅばっ!コンコン
しゅばばばば!
「(素早い手付きだ…。それに作業も丁寧だ…。)」
す、すげぇ!何か体が勝手にやってくれるくらいすげぇ!
…よし、出来た!
「どうぞ」
「おう、まずは強度チェックだな。以前の強度ならこのナイフだとすっぱり切れるんだが…」
ラミスさんは左手に今渡した鞘を持ち、ブロンズナイフを振り上げた
「あ、あの…そんなに力強くしなくても…」
「今の私はライトの事を1人の職人として見ている。職人なら自らの作品に出し惜しみをする訳が無いだろう?そういう事だ」
「ちょ…」
ラミスさんはナイフを鞘目掛けて降り下ろした
ゴキャーン!
そんな感じの音がした
その日の夜
ラミス家の風呂場にて
「ライトには参ったなぁ〜。ははは」
「恐れ入りまするでございまする」
「…何語なんだ?」
「はて?拙者には解らぬでござる」
何かラミスさんと風呂に入ってるよ俺…。
ま、まぁ10代始めに見える俺の容姿じゃこんな事もあるだろうが…。
元の世界じゃギリギリ小五6辺りかな?
でもこういうファンタジーな世界って中学生くらいの年齢になると既に結婚してたりするって聞いた気が…。
つまり嫁入り前の女の子と…。うらやましい!くやしい!かなしい!
優しい感じを持ちながらこの良い感じのおやっさんって感じの人だから
『風呂に入るから風呂場へ行って先に入ってなさい』
って言われても変とも何とも思わなかったし…
つーか
『いやん!この変態っ!』
なんて口が裂けても言えないなぁ…。
それを言ったら男が終了する気がするんだもん
「さて、ライトは自分で洗えるか?」
「え?まぁ一応…」
「まぁいい、背中くらいは流してやろう」
そして俺達は湯槽から上がった。
この世界は世界観に合わず以外とライフラインっていうか生活の基盤はしっかりしていた。
上下水道もあるし、タオルらしきものもあるし材質もあんまり変わらない。
…ってあれ?今何つった?
「職人たるもの熱さには慣れなければな。その点ライトは大丈夫そうだな」
ラミスさんの方を見ると…。うわぁ!やっぱり鍛え上げられたかの様な立派な体だ!
…ラミスさんは何かやたら熱そうなお湯を汲んでオレに掛けようとしている。
ま、まぁオレは50℃以上の熱湯も平気な奴だったから大じょ…
「それ」
ばしゃしゃしゃしゃ
「あ、あつぅぅ!?」
涙が出る程熱い!
あれ?何で!?
「す、すまない!まだ幼いライトには無茶だったな…。今ぬるい湯を出すからな!」
数分後
まぁ、なんだかんだで髪の毛も洗ってもらった。
以外と気持ち良かった…。
「ライトの国ではみんなあんな化け物兵器を造ってしまうのか?」
化け物兵器とは大袈裟だ
「いや、昔はいっぱい居たらしいんだけど今は鍛冶は伝統的なモノみたいだから…」
「鍛冶が伝統?武器は?日用品は?」
「職人は更に分裂して細かい分野に分かれてたと思うよ。引き継ぐ人が減って職人は衰退してるけど…」
「俺は休日などあまり無いと言うのに…。ライトの国は戦争や発展とは無縁の様だな」
「まぁそんな感じです。何があっても戦争はしないと思います。加担はしますが…」
「それが今回の件か」
「前にも言ったけどこれは俺個人が勝手に加担してるだけだよ。そして勝つのはサウシアだよ」
負けたらこの国は悲劇の国。負けは絶対に許されない…。
「随分な自信だな」
「まぁ、最初は1人で潰す予定だったけど…。俺の国の偉い人?は言ったんだ。人である以上、数には敵わないって」
ゲームの中の人だけどね
「だからこの国の人にも戦ってもらう為にも凄い武器や防具は造るし、それを持って戦場へ出るよ」
「ライトが鍛冶の申し子なのはもう分かっている。だが年若き女の子なんだから戦場へは…」
やっぱり子供として見てるな?
「三十路前ですけど…」
「え?」
「いや、だからもうサーティーン手前ですって」
「な、なな!?」
何で驚い…ああ、そりゃこんなちっこいのに三十路前なんて誰も思わないもんな。
「す、すまない!そうとも知らずに風呂に誘うなどと…」
ってよく信じるね…
「信じるの?」
「ら、ライトが三十路前えだと鍛冶の腕前の辻褄が合う。それだけだ」
「なるほど…」
「しかし、すまなかった…。…三十路前の女性の裸体と縁があるとは思わなかった…」
え?つまりこの世界に混浴ってないのかな?単にラミスさんに女との縁が無いだけかな?
それより…
「オレは大丈夫。もし良かったらまたオレの髪を洗ってくれない…かな?」
何か気持ち良かったんだ
「ま、任せろ」
ラミスさんっていい親父さんだね。
うん、何か色々楽しみになってきた!