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ロイ戦の後



この世界は学校はあるものの、義務教育じゃない上に割と高額なので利用者は少ないみたいです



あれから少し世間話をし、近い内に呼ぶ事を告げられて解散となった。

ロイ王の部屋を後にして部屋に戻ると、メイドさんとのコミュニケーションが始まった。


当然オレの心は薔薇色である。いやっほい



「…やはりライト様は高貴な生まれの様ですね」


「え?何で?」


「…言葉遣いはともかく、ちゃんとした言語を話してますし、言葉の意味も理解しております。さらに少し大人びた所もありますし」


「えー、少し〜?」


二十歳は越えてた立派な大人に「少し」は酷い


「何処か儚げな…。いや、とても辛そうな…。いや、ただ単に教育がよろしかっただけですね(この幼さでとても悲しい目には合って無いでしょう)」


「教育ねぇ?」


勉強もせず働いてたけどね


「う〜ん、それと何か目が死にかけている様な…?」


「ウ〜ッホウホどーがっ」


はははこやつめ。

目が死にかけた原因?はて、何の事やらさっぱりでござる。


「はっちゃけ具合が中年男性に似ている様な?(…失礼すぎる発言を…。まぁこの娘は権力者でないから大丈夫でしょう)」


「でやんでーい!でやんでーい!」


「でや?え?」


メイドさんには…この世界の人には分からないよね


う〜ん、小首を傾げたメイドさんは可愛いな


「あ、ごめんごめん。母国のお祭り的なノリを出しちゃったよ」


「おまつ…り?」


お祭りって言葉は無いのかな?翻訳されて無いのかな?


「…うーん、アレだよ、フェスティバル?うん、カーニバル」


「なるほど、フェスティバルですね?…だとするとライト様の母国はとても賑やかで幸せな国なんですね」


「幸せ…かな?オレには分からないや…」


「住民の皆さんも一緒に騒いだりするのでしょう?賑やかなのは良い事です。仲が良いのは幸せな事です」


「…まぁ住民はみんな良い人だね。みんな面白いし時には凄い団結力を見せるし」


時には荒らしも居るけどね…ってオレは何処の住民の事を言ってるんだ。


「その国の名前を聞いてもよろしいですか?」


ベッドに座るオレと面と向かう様にイスに座るメイドさん。いよいよオレの話に興味が沸いて来たみたいだね


「色んな名前で呼ばれてるけど、オレは日本って呼んでるよ」


「にほん、ニホンニホン…。その様な名前の国は聞いた事がありません…。他にはどんな名前があるんですか?」


仕方無いよね

だってこの世界に日本は無いんだもん。


「JAPANとかZIPANGって言われてるなぁ。黄金の国とも言われてるよ」


良い国だったかな…?

世間からすれば良い国かな…。

だけどオレにとっては…どうだろう…。

法がもう少し分かりやすく簡単になっていたら何か変わっていただろうか?


「…うーん、私の記憶に該当する国は無いですね…」

「まぁ隠れ里みたいな国だし仕方無いよ。島国だから見つけにくいんだ」


格好良くいったった。あながち間違ってはいないから大丈夫


「つまり海を越えて来たのですか?」


「まぁね。ほら、オレって色んな魔法が使えるじゃん?」


「ライト様は魔法が使えるのですかっ!?」


「うわっ!?」


どっと身を乗り出してオレの肩を掴み迫るメイドさんに驚いて押し倒されてしまった。

お互いの顔がかなり近づき、百合百合な展開が頭をよぎり、紅照した。


そんで目を瞑った。

瞑ったらメイドさんのチューが来ると変な妄想をしたからだ。ふひひ…


「あ、あの…押し倒しといて失礼なんですが、ライト様は変わったご趣向で?」


「だ、だって今まで押し倒された事なんて無かったんだもん!変な想像もするよ!」


よくよく考えるとオレは果てしないくらいに恥ずかしい事をしたんじゃね?

顔はどんどん赤くなる。


「か、かわ…。あ、いえ…申し訳ありませんでした(やっちゃいたい…。この娘なら良いわ!やっちゃいたい!)」


あれ?メイドさん鼻息荒くね?


そもそも百合は眺めるものであってする事じゃない!この思考は元が男であるが故のものだ。

だがオレは女性の精神なんぞ持ち合わせてなどいない


オレは起き上がると話を始めた


「で、魔法だよね」


「はい!どんな魔法が使えるんですか?」


目をキラキラ輝かせてこちらを見るメイドさんはかなり破壊力があった。


いっぱい教えちゃおっかな〜!教えちゃおっかな〜!


「見せて頂けるとありがたいです〜」


よし!おk!


「じゃあ最初は簡単な魔法から…」


何にしよう…

攻撃系は駄目だ…。防御系とか効果を見せられない。幻惑…ってオレはメイドさんにナニを…。ウェヒヒ


じゃなくて、召喚系…精霊とかドレモラさんとか?可愛くないじゃん!女の子に見せる召喚系っつったら可愛いペット系が一番だと思われ…。


「…どうしたのですか?」


「ちょっと待っててね…。何にするか決めてるから」


「はい、いつでも良いですよ♪」


くぅ〜!寛大なお心を御持ちなメイド様だ!素晴らしい!


回復系は防御系と同じ理由で却下。


変性は?…おお!透明化に灯明、念動力…。ジャンルは違うけど消音…。

いいじゃん!変性いいじゃん!すげーじゃん!


「今から明かりを出すから見ててね」


右手に力を込め、光輝く球体を造り出す


「綺麗…」


そしてその光を解き放つ

輝く球体はオレの頭上に浮き上がり、光を溢れさせた


元々暗くは無かった部屋がオレを中心にパアァっと明るくなる


「「うわ、まぶしっ」」


あ、あれ?灯明ってこんなに眩しかったのか…

これは知らんかった…


「す、凄いですね!目眩ましの魔法なんて聴いた事が無いです!」


OTZ


「つ、次は凄いよ!」


またまた右手に力を込め、紫だかオレンジだか鮮やかな石の様なものを出す。

そして解き放つ


ボァーン


「あ、あれ?ライト様?ライト様?」


透明化の魔法じゃ、ホホホホ♪


「後ろですよー」


取り合えず防御系の魔法を使って透明化を解く

この透明化は他の魔法か使うか、何かに物理的な事を行うと効果が切れる


歩いたり走ったりジャンプしてる分には解けないが、盗みを行おうとしたりドアを開けたりしても解ける


まあ完全犯罪には使えないって訳さね。世の中甘くないのだよ。


「透明にもなれるんですか!?」


「いや、まぁ戦闘中とかだと使っても気付かれたりするけどね…」


そう、そこまで万能じゃないのだ。なんつーか、NPCのスペックって凄いよね


「一番強いのは麻痺の魔法がなんだ。魔力がかなりある人がこれを使えば世界征服も夢じゃないよ」


「そ、そんなに強いんですか?」


そりゃそうだとも

麻痺らせた後は無双タイムだもん。敵は涙目にもなれず死ぬからある意味一番エグい魔法かな。

動けない恐怖、逃げられない恐怖、これから起こる事への恐怖…。うへぇ…


ストームであろうと帝国であろうと麻痺らせてザックザクに切り裂いたオレってテラ悪魔…


「ちょっと自分に掛けてみるね。メイドさんに掛ける事なんて出来ないし」


また右手に力を込める

今度は黄緑だか黄色だかが混ざり合う若干おぞましいオーラが右手にまとわり着く。

そして、ソレをオレに向かって打った


バシュン!


「…あ」


「ら、ライト様!?」


突っ立って打った為、オレの身体はまさに棒立ちとなる。

支えのない棒は重力に従って倒れるしかない


「だだだ、大丈夫ですか!?」


前に倒れるという事はメイドさん直結…

おほぉ、こりは事故じゃ!って言い訳出来るじゃん!やったね!


「…だ、だいじょ…ぶ」


くそ!麻痺ってるから感覚も無い!メイドさんの腕の中に居るのに!

辛うじて口は動かせるし身体の器官は動いてるから話せるけど、威力を弱らせて無かったら死んでたよねこれって…


「とに…かく。オレ…ベッド…に…」


「は、はい!」


メイドさんはオレをお姫様抱っこしようとした、…が、関節も動かないからオレの体制を変える事すら出来ない。


オレをベッドの上に横たわらせてメイドさんはこう言った


「あ、安静にしていて下さいね?私は報告してきますので!」


「あ…うん…」


目も動かせないから部屋から出ていくメイドさんを目で追う事も出来ない



メイドさんが部屋を出てすぐにオレは麻痺から開放された。

麻痺の効果はだいたい30秒くらいだ

ゲーム中は『30秒って少なくね?』なんて思ってたけどやられる方は30秒であろうと堪ったものじゃない。


永続的な魔法だったらと思うと…ガクガクブルブル


「楽しんでいる様だな。いや、苦しんでいたか?」


何処かで聴いた事のある声のする方を見ると、約1週間ぶりに見る存在がいた


「…あ、あんたは!?」


「ふむ、あの事は憶えている様だな。では話も早い」


まさかのおっちゃんだった




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