早くも決裂?
前書き…
今回は書くことなんて無いような…
じゃあ何故書いたし…
「ライト様、お飲み物を用意しました」
飲み物(ココアみたいな味のする甘いヤツ)とチョコレートクッキーみたいなのを銀の綺麗なトレイの上に乗せて運ぶメイドさんが入って来た
彼女は「VIP級の客」と同じ待遇を受けているオレの担当となったメイドさんである
165cmはあるかと思われる背丈で、まだ幼さを残した顔立ち、目はちょと大きめな平行目で綺麗な青をしていて、ちょっとクセのある青い髪を背中まで流している。
ちなみに凄く可愛い美人さんだ。
「おお、ありがと」
さて、サウシアの王ロイの宮殿に仮住人として住む事になって2日くらいが経ったのだが…
オレの存在、知識、力が国力増強に繋がると見込んだのか、ロイの部屋の次に広いとされる部屋へ住まされる事になったが、誰も文句は言わなかった。
そりゃ国の安泰を考えればこんな馬鹿でかい部屋を与えるのも納得と言えるけどさ…
なんか好都合過ぎない?
「どうかなされましたか?」
「え?あ、いやぁ…。昔はそこらのホテルとかマンガ喫茶で一晩を過ごしてたからこの部屋はちょっと大きいかなぁって…」
「ホテル?マンガきっ…?」
「ああ、宿の事だよ安い宿」
「安い?ライト様程の方が?…っと野暮でしたね…」
流石はメイドさん
察しがいいのぉ
「あっ、大事な事を伝え忘れてました」
「大事な事?」
「そうです。王があなたを呼んでいました」
いつもの事だね
いつもって言ってもまだ2日目なんだけどね
「でも時間的にヤバくない?もう夜だよ?」
「あぁ、夜伽の相手をしろと思われてるのですね?大丈夫ですよ。ロイ様はライト様の様な小さくて可愛らしいお方を食べるような変態ではありませんよ♪」
「え?あ、違う違う!もう寝なくていいのかなぁって思っただけだよ!お、オレがそんな事出来る訳無いだろ!?」
…ふむ、王に逆らえずに夜伽を課せられる幼女か…。
デュフフ、こりゃ薄い本が出来ますなぁ♪
想像しただけでお腹いっぱいですな
「あ、そんな事より早く王の元へ行って下さい!」
「そうだったね。ごめん」
「いえいえ、こちらこそ無駄な事をさせてしまって」
「…うん、その無駄な事はまた後でしよう。じゃ王様の所へ行ってくるね」
「はい!行ってらっしゃいませ」
オレの性格だとメイドさんとずっと「ごめんなさい」って言ってそうだったからササッと行く事にした。
メイドさんは可愛いし話してると楽しいね♪
女性との面識もあまり無かったオレだが、あんな感じの女性だとなんとか話せそうだな。
部屋に1人残されたメイドは…
「なんなのあの子…」
「可愛い!」
「きゃわゆいん!きゃわゆいんきゃわゆいんッ!」
「あんな感じのちょっと大人びた女の子って良いな〜。きっと本性は弱くて脆くて簡単に壊れる様な精神なんだろうなぁ…」
「それに大人びたって言っても『頑張って』大人びてるって感じがするのよね」
「だから余計に守ってあげたくなっちゃう」
「…ま、考察はよしとして。私は私の仕事をしなくちゃいけない」
散々独り言を言った後、メイドは背伸びをした
「んぅー…。はぁ…」
「さて、幼女の残り香でも堪能しますか…。ぬふー」
・・・・・・・・・・・・
「わざわざすまないな」
「いやいや、ゆっくりする時間をくれただけでも感謝してるよ。いきなり拷問でもされるのかと思ってたもん」
「相当警戒しておったのだな…。それともお前の祖国が厳しかっただけか…」
王様に呼ばれてロイ王の部屋へ向かったオレだが、部屋に入って少し驚いた。
広いっていうのもあるが、警備兵が1人も居ないということだ
兵じゃないけどウィザードたんなら居た
まぁ気にするまでもない
「そう言えばライトの祖国とはどの様な所なのだ?きっと魔法の栄えてる都市なのだろう?」
魔法か…
何処ぞの学園都市しか思い浮かばないな
それに一番魔法の栄えてる国はココじゃなかったっけ?
「魔法なんてありませんよ」
「「なんだと!?」」
「わっ!?」
急に2人で大声を出されたから少し驚いた
「魔法の栄えない国でどうやってあんなに凄い魔法を覚えたんだ?」
「魔法は無くても科学はある…」
ボソッと下らない事を呟いた
「なに?」
「い、いや…あれですよ…。旅してたら覚えていった的な…?」
「普通、どの国でも魔法は流出しない様にしてるのだが?」
やべ、墓穴
「こ、古代の遺跡とかを探索してるとスッゴい本があったりするんですよ。スキル書とか魔法書とかデイドラの本とか」
「なるほど…ライトは冒険者なのだな」
「お前みたいな冒険者だったんだがなぁ…」
「何を受けたんですかウィザードたん?」
「何でも…」
ぎこちない空気
そんな空気を壊したのは他ならない
国王とウィザードだった
「「雷撃!」」
ドカァァァン!
城は壊れない
だってオレが魔法を受け止めたんだもの
「うぐ…」
雷系最下級の魔法『雷撃』
威力は微妙だが相手の魔力を減らす事が出来る
魔法使い相手には一番強い雷の魔法だが、雷撃は一発が弱い
ソレをカバーする魔法の永続だが、彼らは雷撃が継続出来る魔法とは知らなかった
そのお陰で軽傷で済んだ訳だが、2対1とはなんとも分が悪い
別にチート装備じゃないから体力も持たない
「治療の息吹!」
いきなりの上位回復魔法
自分の体力を150回復させる魔法
多分オレの体力って100だから、全快だね。やた!
…ゲームみたいに体力が数値で表されてる訳ないだろう…
「治療の息吹?そんな魔法はお前から渡された本には無かったぞ?」
言い訳考え中
「何言ってんですか!雷撃を片手で打つのがやっとのウィザードたんが治療の息吹を使える訳が無いでしょう!」
と言いつつ『治療の息吹』の魔法書を創造してウィザードたんに投げつける
ぱしっ
受け取るや否やウィザードたんはオレの様子を伺いながら魔法書を読む
「わ、私も出来る!治療の息…あれ?」
ウィザードたんの右手に治療の息吹の光は灯らなかった
「ぐっ…」
それと同時に床に膝を着けて倒れこんでしまった
「お、おい!」
「魔力の上限を越える魔法を使おうとするからですよ。何でも無茶すると体を壊しますよ?」
「くそ、雷撃もあまり効かないしどうすれば…。だが諦めるか!雷撃ッ!」
ロイ王が雷撃を打つ前に俺は魔法を準備した
「魔法の盾!」
オレの前方に綺麗で透明な分厚い幕が出来る
これは魔法の盾と言って文字通り魔法で出来た盾だ
物理攻撃に対しては全く効果が無いが、魔法に対しては『魔法の盾』がある限りダメージは受けない。魔法使い同士の戦いでは必要不可欠な魔法だ
「魔法の…盾?」
無知は罪なり
「これあげるからっ!説明より実戦だよ!」
オレは『魔法の盾』の魔法書をロイ王に投げつけた
こちらも綺麗にキャッチしやがる
「(この子はこんな複雑な魔法を扱っていたのか…)」
途端にロイ王は座り込んでしまった
「え?」
「降参だ、ライトを知識だけある小娘だと計算していた俺に最初から勝機は無かったのだ。だから降参だ」
た、確かにチーターのオレに勝てる訳が無い
正しい判断かも知れないが、国王がそんなんで大丈夫なの?
…まぁそれは置いといて、オレはロイ王に近付いた
「死ぬ前にお前の生まれを知りたい」
「死ぬ?何言ってんですか?オレはそんな事しませんよ?」
「それだけの実力を、もしかするとこの国で一番強かった俺を倒せる実力を持ちながらこの国を支配しない…と?」
当たり前だ!人を殺そうなんて思った事…
いや、何でもない…
「そんな事するとオレは国荒しの大悪党ですよ。そんなのになったら何の為に牢で大人しくしてたか分からないじゃないですか」
あれ?大人しくはしてなかったな
「ほう、ライトの国は個人の情報は大事に管理されているのだな。治安も良いとみた」
この人考察力がヤバい
個人情報が本当に大事にされてるかは分からないけど、他の国に比べれば国民の洗脳とか内乱も無いし治安は良い方か、な?
「…敵は同じ国の国民じゃありません。…もっと身近に居るでしょう?」
「…一理あるかも知れないな。例は上げないが」
少しの間
「ところで何でオレを襲ったんですか?そんな敵と呑気に愚痴りあってて良いんですか?知識だけ貰ったら殺すんですか?」
言いたい事を言ってやった。
『敵』は身近に…
これはどの世界でも同じな様だったな
この意味不明な国王の返答次第じゃ暴れて暴れて暴れまくってこの国を破壊し尽くすだけだ。
それだけの力が俺にはある
どんな能力でも手に入れる薬だって創れるし、チート装備だって創れる
「(…ライトの目が怖い。大きな紅い瞳は彼女の幼い顔をより一層幼く見せる。見た目も体つきも幼い、せいぜい10歳くらいの見た目なのに…)」
「何も返答無しですか…」
「(とにかく、今は最初から殺すつもりなんて無かったと伝えよう。嘘も偽りも無いから大丈夫だ)」
どうしたのかな?
流石に問い詰めすぎて何から話せば良いのか解らなくなったのかな?
「…最初からライトを殺すつもりなど無い。変な事を試して悪かった」
殺すつもりは無かった?
「じゃあなんで…」
「もとよりこの魔法はライトのもの。まだまだ未知数な魔法は本当の使い手を見る事が魔法の上達に繋がるのだ。そして対人戦が一番効率が良い。だが…」
「雷撃などの魔法を使えるのはオレと貴方とウィザードたんのみ。そしてもしかしたら魔法へ対する『対策』を持っているのはオレしか居ない、と」
「そう言う事だ」
そんであわよくばその『対策』を手に入れた訳か…
温厚でお人好しなだけかと思ってたけど、この王様…以外と頭が良いな…
「仕方無いですね。その『対策』を伝授しますよ…」
「何?本当か?」
でも対策って『魔法の盾』シリーズだよね?
ロイは使えてなかったよね
「…うーん」
「やはり無理か?」
どうすんだ?どうしよう
「えっとね、今は魔法の盾を出せる?」
「…難しいがやってみよう」
ロイは少しの間を置いて腕に魔力を集中させた
俺は一瞬で発動出来るけど、慣れてない人はなかなか出来ない芸当のようだ
「…よし」
ロイの前に弱々しい魔法の盾が出来る。
しかしすぐに収まってしまった
「どうしたんですか?」
「…この魔法、消費がハンパない…」
片膝をついて息を切らす様子からすると、かなり辛いようだ。
ま、まぁたしかに消費はパなかった魔法だけどさ
しょうがないなぁ…
俺は全体がサファイアでできた青い指輪を創造した
「コレを付けて下さい」
そしてすぐに投げ渡した
「…これは?」
カーブが掛かるように投げたのに簡単に取られた
「…凄いな、全部宝石じゃないか」
「着けてみて下さい」
「お?ああ…」
ロイが指輪を中指に着けた…途端にフラフラしだした
「…ま、まさか…罠…だったのか…」
「え?何故に!?」
…あ、そうか
仮にロイの最大魔力が30くらいだとしてオレが渡した指輪は『最大魔力が2000上がる指輪』という馬鹿みたいなスペックの指輪だ
そんでさっきの戦いでロイの魔力が30/5くらいになったと仮定しよう。
既に疲労状態で指輪を着ける事で魔力が2030/5になったら…。
…うへぇ
「ちょっ、ちょっと待って!これを飲んでっ」
オレは魔力が500くらい回復する薬を渡した
「どうせ死ぬならコレを飲んでも変わらないか…」
「いいから飲め!」
しょうがないから無理矢理飲ませた。
…処刑もんだなこれ。まぁそうしなきゃ王様が死ぬし仕方無い
「…あれ?死なない?(むしろ力が沸いた気がする)」
「さっきも言ったじゃないですか。あなたを殺せばオレは国荒らしの犯罪者ですよ?」
「すまないな…。こちらから仕掛けたのに打ち倒され、挙げ句には情けを掛けられるとは…」
「気にしないで下さい…」
「ところで、ライトは何故先程から泣いているのだ?」
「……泣いてません」
「泣いておるではないか」
「…ないて、ませんっ」
「いや、泣いておる」
「ないてないって言ってるじゃないですか!!…うっ…うぅっ…」
「…お前に何があったのだ…」
「…ふわぁぁぁぁ〜ん!」
その後、泣き止まないライトをロイが自らライトの部屋へ運んだという噂話がライトの存在を知る者達によってささやかれたが、誰もライトが泣いた理由など解らなかったらしい…