エロBFゲーとかで見る弱体化アイテムとかあればいいんじゃないかな
─チリークロワッサン城
─メインホール
視点 ライト
今日もレンシーと修行だ。
ダークSUN程ではないけど、レンシーもかなり避けるのが上手くなってきたから、今日は実弾(魔法)を撃つことにした。
オレが両手に込めるのはコールドスピア。前に使った時の感じからして、高速で射出できる足止め用の攻撃魔法だ。レンシーは魔族だろうし氷魔剣士って肩書きもあるし、当たってもよろめくだけだと勝手に考えてのチョイスだけど大丈夫だよね?
「ライトちゃんの攻撃魔法……これは見物ね」
「私もライト様の攻撃魔法を見るのは初めてだけど、思ったより普通に見えるわね……」
「馬鹿言わないで。当たったら死ぬような魔法を避ける修行なんてされたら私の方がヒヤヒヤして死んじゃう」
「あら、あの男は貴女と違って不死身じゃないのね」
「レンシーは吸血鬼じゃないもの。それに犬獣人のハーフのハーフだから前はひたすらに弱かったのよ」
「ああ……それで以前の調子で気が気でなくなってココ(メインホール)まで……」
今日もエイルとチェリスはオレ達の修行を見に来ていた。何か話してるみたいだけど、割と離れてる上にオレは別のことに意識を集中しているからあまり頭に入ってこなかった。
……そう、オレは今、魔力をよりハッキリと捉える為に、体から手に送られる何かを感じ取ろうとしていた。
床にコールドスピアを撃ったり止めたり。精一杯に意識を集中してみるけど、なかなか魔力を掴めない。
あんまりレンシーを待たせるのも悪いので、一旦切り上げてレンシーに向き直った。
「見てたと思うけど、今オレが撃ってた魔法をレンシーに撃ちます。当たると危ないから避けたり何とかしたりしてね」
そう言うとレンシーは小さく笑みを浮かべた。
「遠慮しないでくれ。避けるだけの訓練はもう慣れて飽きてきてたところだ」
「よーし、じゃあヤバくなったら言ってね。オレは治療魔法も使えるから死ななきゃだいたい何とかなる筈だから」
「わかった」
「それじゃ、コールドスピア!」
オレが技名を叫ぶと同時に右手から凍てつく割り箸がどんどん射出され始める。別に技名を言う必要は無いけどオリジナルの技だから言いたかった。
レンシーめがけて列を作るようにして飛んでいくコールドスピアは、レンシーが横へ避けることで壁へと突っ込んでいった。そしてオレがレンシーへ向けて手を動かせば、新しいコールドスピアがレンシーめがけて突っ込んでいく。
オレの狙いがそんなに正確じゃないおかげで多少のバラつきはあるものの、真っ直ぐ飛んでいくせいで素早く動くレンシーには全く当たらない。……これはちょっと、レンシー以上の相手には使い物にならない魔法かも。
……と思ったが、よくよく考えればオレの撃ち方が悪いと気付いた。
オレはレンシーを正確に狙うのを止め、だいたいの方向にかき回すように撃つことにした。
「……くっ、気付いたか」
バラつきは人為的に作れる……! いや当たり前だけど。
ダークSUN曰くオレの魔法はこのレベルでも当たれば結構な威力らしいし、それを沢山撃てるなら撒いた方が良いのは至極当然だったわけだ。遠目から見てもレンシーが少し苦しそうな顔をしてるのが分かる。
「ふふふー♪ ……ってアレ?」
レンシーはそれでも弾幕を避けた。
当たると無傷では済まないのを分かってるせいか動きがいつもより大げさだけど、それでも避けきっていた。
「……す、すごい」
「……くっ、だがまだ避けられないレベルじゃない……!」
頑張って避けているレンシーを見てなんだか少しイジメてみたくなったオレは、コールドスピアを撃つのを止めると残像を使って、コールドスピアと同等のレベルの魔法のヒートアローを横に広く展開し、残像を解除した。
時を止めて魔法を撃った訳ではないので、若干斜めった陣形の段幕となったそれは、レンシーに向かって飛んでいった。
「火炎聖勇陣!」
レンシーの顔を拝むよりも先に再び残像。そして今度は獲物を捕らえる蜘蛛の巣のようにヒートアローを編み目状に敷き詰めて、残像を解除する。
「大炎上!」
まだまだ恐怖の宣伝は止まらない。オレはまた残像を使い、ヒートアローよりも強いファイアボルトを火炎聖勇陣の三段重ねさせた強力重圧な陣を作り、残像を解いた。
「業火聖勇陣!」
ここまでしてようやくレンシーの様子を観察しようとすると、さっきまで居たはずのレンシーは消えていなくなっていた。
結構苦労して組み立てた炎の陣形が的も何もない壁に向かって突っ込んでいったかと思うと、何枚にも重なっているかのような分厚い光の壁が現れ、それにぶつかって相殺するように消えていった。
「…………?」
「こらーッ!!!」
唖然としているとチェリスの声が聞こえてきて何かと思って振り向けば、近づいてきたチェリスに肩を掴まれて思いっきり揺すられた。
「ライトちゃん!!! レンシーを殺す気!!?!?」
焦りも混じった可愛い怒り顔だが、怒り顔というからにはチェリスはあからさまに怒っていた。
オレは調子に乗って魔法の加減を間違えた事を悟り、即座に謝った。
「ご、ごめんっ、やりすぎたっ……」
「貴女ねぇッ!! 修行の限度を超えた魔法だったわよ今のは!! 私が居たからよかったものの、そうでなけりゃレンシーは今頃消し炭だったわ!」
「ご、ごめんなさい! お、オレ、レンシーを驚かせたかったんだ……」
「ええ分かるわその気持ち!! でもね、レンシーをイジメるのは主人である私だけの特権なの!! 匙加減の分からない貴女にあっさり殺されたんじゃたまったものじゃないわ!!」
怒るとこそこなの!? なんて思いながら、オレは何度も謝った。
確かに手違いで人殺しなんてあまりにも間抜け過ぎるし、流石に救いようもない。チェリスに言葉をぶつけられてオレの頭はすっかり冷え、さっきの行動があまりにも異常だった事に気づけたオレは勝手に落ち込みながらも必死にチェリスに謝った。
こんなことになっといて嫌われたくない、なんて虫の良いことを考えているんだろうと考えながら謝り続けていると、チェリスは憑き物が取れたようにいつもの様子へと戻った。
「……はぁ、ごめんなさいね。私も取り乱しちゃったわ」
何と返していいのか分からずにいると、チェリスは言葉を続けた。
「レンシーはね、魔族は魔族でも4分の1(クオーター)魔族なの。だから貴女が思っているよりレンシーは弱いのよ。……あと、レンシーに今のような力が付いたのは最近の事なの。力が付いたと言っても、正直言って今のあの子は魔族の中でも中くらいが良いとこだわ。自分が強くなっていた気でいたレンシーには良い薬になったかもしれないけど、さっきみたいなのは……勘弁してほしいわ」
聞くまでもなく、チェリスがレンシーを大切にしているのはよく伝わってきた。それだけに、オレの心に掛かる重圧は更に強くなっていった。
死ななくて良かったは結果論。したことの重みは後になれはなるほど重くなっていく。それが気分が高まっている時にした事ならば、更に重く感じてしまうのがオレの性だ。
「……ごめんなさい」
オレは呟くように謝って、こそこそ逃げるようにエイルの元へ行った。
そしてそこには複雑そうな表情を浮かべたエイルが待っていた。
「……壁に見えたあれは魔力の塊……チェリスの魔力で補えるものなのかしら……。……あっ、ライト様。凄かったですね今の魔法」
「……う、うん」
エイルは単に考え事をしてたみたいだ。何故かは分からないけどホッとする自分がいた。
「同時展開をしたかのような速度で魔法を放たれていたように見えましたが、どちらにしても並の所業じゃありませんよ。……しかし、あの物量と威力をも相殺するチェリスの防御力は恐ろしいものですね」
「……うん。するつもりは無いけど、敵にはしたくないね……」
チェリスは友好的な子だったけど、今回の事で中立的な立場にきたりしないよね? そうだとしたら、この先どうなるか分からないしここに長居できなくなるから少し困る。
「それにしても、ライト様はアレですね。ストレスでも溜まっていたのですか? 先程のライト様は何やら発散しているように見えましたよ?」
「……そう、かもね」
「早いところ魔力制御をマスターした方が良さそうですね」
「うん。……ちょっと言いにくいけど、今からチェリス達に手伝ってもらうように言ってくるね」
「それが最善でしょう」
エイルからも同意されて調子が戻ってきたオレは、チェリスとレンシーのいる所へ向かった。
2人はさっき魔法を放っていたオレの後ろの方にいた。多分さっきレンシーを避難させた所だ。
オレが話しかけるよりも先にチェリスがこっちに振り向いた。……怒ってはいないみたい。
「ライトちゃん、貴女から来てくれてよかった。このまま気まずくなっちゃうかと思ってたもの」
むしろ安心してるみたい。
オレも今こうやって会いに行かなきゃ気まずさとモヤモヤがずっと続く気がしたから恥を忍んで来たわけだけど……本当にさっきのオレ、よく動き出してくれたよ。お陰で今は心のオモリが軽くなったんだから。
「……えっとね、まずはレンシーに改めて謝らせてほしいな」
「ええ、好きに謝って。レンシーもほら、拗ねてないで」
チェリスに肩をポンポンと叩かれて渋々前に出てきた。
……拗ねてるってなんだ? もしかしてオレのせいかな。……いや、今はそんなことより謝ろう。
「レンシー、ごめんね。調子に乗ってレンシーを危ない目に合わせて……冷静になった今は凄く反省してます」
「……あ、あぁ。俺が未熟なのがいけなかったんだ。そんなに……気にするな」
少しの沈黙の後、オレの頭にチェリスの手が置かれた。
「ふふ、それじゃ本題に入りましょ♪」
いつもの調子のチェリスの声に安心していると、エイルがすぐ近くまで来ているのに気づいた。
「私は晶石に頼って魔力制御をおざなりにしていたからライト様に教える事はできないの。だからアナタ達のやり方を見て憶える事が一番だと考えたわ」
「なるほど、それならまずは私流のやり方を説明するわね。あまりライトちゃん向きではないかもしれないけど」
チェリスはそう言うと、目を閉じて両手を広げた。幼い見た目も相まって少し神秘的だ。
……なんて考えていた矢先の事だった。チェリスから染み出ている威圧感に似たようなものが一切感じられなくなった。
「ライトちゃん、何か分かるかしら? 何か感じたりした?」
「う、うん……今のチェリスはなんというかこう、普通の小さな女の子みたいだ」
「それでいい、私の望んだ答えは出たわ」
チェリスは元に戻った。同時に威圧感もブワっと溢れ出してきた。
「私のやり方はね、魔力回復量を上回る魔力消費量によって魔力漏れを防ぐというものなの。……要するに、常に魔力を使うの。手軽且つ強力なのが身体強化ね」
「つまり常に魔力を使うような何かを習得すればいいの?」
「そうよ。……ただ、ライトちゃんの場合は漏れてる魔力量から察するに相当な魔力を消費しないとトントンとはいかないんだけどね」
……うーん、どうしようか。もう手っ取り早くこの魔力量と魔力回復量を増やす指輪取っちゃおうか。でも魔界でこれ外すのもなんか不安だなぁ。
いや待てよ? あれだ、よく凄い魔法使いとかがやってるかもしれない魔法待機を沢山やってみるとか?
……だめだ、それっぽい魔法なんて知らないや。
となると、今すぐ魔力漏れを人間レベルまで落とすには…………指輪、外すしかないかなぁ。これ取ると魔法とかバンバン撃てなくなるんだけどなぁ。
……うーん、まぁオレには残像がデフォルトで付いてるし大丈夫かな。
「あら?」
サファイアで出来た指輪を外すや否やチェリスがすぐに反応した。
「何をどうやったらあれ程の魔力を抑えられるのかしら。今のあなたはまるで普通の魔族の女の子に見えるわ」
「この身体には制限が掛かっててね。この青い指輪にはそれを解く力があるんだ」
オレは取ったサファイアの指輪をチェリスに見せながら、そんな出任せを言った。……カッコいいじゃないか、封じられた力を解放する指輪とか。
「……ふーん、ライトちゃんの魔力はこの指輪次第なのね」
「うん。でもまだ抑えなきゃいけないんでしょ?」
オレは指輪をアメジストの収納指輪にしまいながらそう言った。
「そうねぇ、できれば人間レベルまで魔力漏れを抑えたいところね。というかライトちゃん。自分を人間だと言い張るなら、リミッターが掛かっても魔族レベルというのはどうかと思う」
「こ、これから人間に見られるよう努力するもん」
「それもそうだわ。さっきまでよりは遥かに簡単になった筈だから、私達のやり方を真似した方が早そうね」
・・・・・★
という訳で、まずは身体強化の魔法を真似しようと試みたんだけど……。
「ふぬぬぬぬーー!!」
「だめよライトちゃん。それじゃ力んでるだけだわ」
・・・・・★
「…………ふー……!」
「魔力が身体の表面に漂ってるだけね」
・・・・・★
「…………」
ぱしゅん
「あっ」
「惜しい、でも動くと解けるって問題ねぇ」
・・・・・★
「おお……」
「動けるには動けるけど……それじゃ大して魔力を身体強化に回せてないわね……」
「……はぁ~、気が疲れたよぉ……」
ほとんど一歩進んで一歩下がるような状態といったところか、魔法の技能をすっかりおざなりにしていたツケが返ってきたのを実感せざるを得なかった。
むしろ魔法に対する学も無しに良くできた方だと精一杯あまっちょろい考えをした。悔しいとき言い訳しにくいときは自分にすがろう!
「制限って魔法も下手くそになっちゃうのかしら」
「……うぐっ、そ、そんなの制限関係無しに最初からオレは魔法下手くそなの!」
試しに高コスト高威力のファイアボールを撃ってみると、普通に出てみんな驚いた。
「威力もキレも確かに変わってないな」
「ライト様の使う魔法は私達でも知らないライト様固有のものだと聞きました」
「つまりスターライトが軽々と扱う魔法は血の滲むような特訓の末に身体に覚え込ませたものだったのか」
なんかみんなに感心の目を向けられてる気がするけど言えない。どこぞの聞こえし者さんのように本をパラッと呼んだら使えるようになってましたとか言えない。
……でもまぁ、そうだな。どんな事でも何度も何度も繰り返しやってれば多少は身に付くもんだ。挫けず頑張ってれば身体強化魔法も簡単に使えるようになるさ。
「よーし、それじゃあこの魔法も何とかモノにしてみせようじゃないか!」
「ふふ、頑張るのもいいけどあまり根を詰めすぎは駄目だからね」
後にオレは効率の悪い身体強化を編み出す程になるが、更にその後でオレ専用の魔力晶石を貰えるとは全く考えていなかった。
さっき『当時敵女性キャラ50人、全20シーン』な感じのエロゲの広告見て「敵女性キャラ20人でいいじゃん」ってなったのでこんなサブタイになりました。
こういうエロゲは気に入った子に限ってエロシーンがなかったりするんですよね。