サプライズゲーム 前編
更新速度が悪い意味で安定してますね……
アクセス数は基本見ない(ちょっとへこむ為)のと感想がいまだゼロなもんで読者さんがいるのかはわからないのですが、響さん同様に基本自己満足『こんな感じのが読みたいな』を下手くそな表現ながらぶつけているので失踪はしませんよぉ~。……多分
ーアプソペリティ帝都内
ー商業地区
視点 モル(10才前後の少年A)
俺の名はモル。商家の次男だ。
親はなかなかのやり手な商人で下級貴族とも平気で渡り合えるほどのお金を日々荒稼ぎしている。
そのお金の少々は子供の俺にも回ってくる。親はそのお金を他店の偵察に使えと言う。
俺も子供だ。貰ったお金は無駄に費やしてしまいたい。
しかし商人の親を助けるという事は将来の俺を助けるということ。
なのでせめて偵察しながらも楽しもうと喫茶店に寄ったり本屋や雑貨屋へ寄って本を買ったり、子供料金で安いからたまにコロシアムへ闘技を見に行ったりした。
そうしている内に俺は戦う人を見るのが、強い人を見るのが好きになっていた。そして、街中では喫茶店や良い雰囲気の店にいるような人が戦う姿を見るのが好きなやや変人になっていた。
普段の姿からは想像が出来ないコロシアムで見せる荒々しく勇ましく凛々しい姿。それを見るだけで俺の心は輝いた。
この人が戦う時はどんな姿を見せるのかな?
そんな事を考えて過ごしていた。
そして今日、俺は理性で抑えることもなく後押ししてしまう程のトキメキを受ける程の女の子を見つけたのだった。
ー雑貨屋オリド
視点 ライト
ジェシネスさんのお店で働き始めて5日目となった。
元々ジェシネスさんがキレイ好きなせいか外の掃き掃除や店内の掃除を課せられても程なくして終わり、そのことを伝えると一緒に店番をするようになったのは働き始めて二日目のこと。
接客業は既に経験済みのオレにとって店番は朝飯前の仕事で、お客さんも良い笑顔にできた。
そんなヌル仕事を今日の今までやっていた訳で。
そして今も現在進行形で可愛い系美人さんと隣り合わせで店番している訳で。
えへへ、たまには良いよね。こういうラッキージョブも。
「気のせいかしらね。ライトちゃんが来てからお客さんの入りがよくなった気がするわ♪」
「儲かることは良い事じゃないですか」
「そうね~、ライトちゃん接客上手いしお姉さんホントに助かるわぁ~」
ふふ、接客なら任せて下さい。
各店のレジ役を任されまくっていたのであらゆる局面でも対応できる自信がありますよ。
あ、お客さんだ。
いかにもおばさんって感じのおばさんだ。
「いらっしゃ~い」
「いらっしゃいませ~」
「あら、可愛らしい店員さんね」
「……あ……ぅ……」
ごめんなさい。やっぱり知らない人との距離の近いフレンドリーな絡みは苦手です……。
あらゆる局面とか勘違いしててすみませんでした……。
「この子、短期間のお手伝いさんなんですよ~」
「へぇ~、小さいのに偉いわねぇ~」
「あ、あぃがとう……ござい……まぅ……」
「でしょ~? 可愛いでしょ~?」
融通が効かないというか、昔からそうだけどなんでこんなに意味不明な人見知りなんだろう。
突然発動するというか……うーん。
ちゃんとできる時はできるのに……。
お客さんが帰った後、ジェシネスさんはオレに外の掃き掃除を命じた。
気分転換して来いって意味だろう。
自分でも少し落ち込んでいるのは分かっていたしありがたくジェシネスさんからホウキではなく10Gほど受け取り、お礼を言ってから外へ出た。
そして今、オレはお洒落な喫茶店であっさり系の甘いお菓子を堪能して窓から注ぐ日光に当てられてぽわぽわ~っとしていた。
「ふぁ~……」
日がな一日、こうやってカフェオレを飲みながらお菓子をつついて日向ぼっこしてのんびりできたら……どんなに良いことか……。
でもそれはいけない。
ダラダラ、のんびり、ほんわか。これらは本当に素晴らしい。
でも、そんなのを三日連続でも続けたら大変だ。変な怠け癖が付いてあっという間にダメ人間になる。
ニート化が恐くて怠けられるか!! ……なんて思わなくもないが、やっぱり過ぎたリフレッシュを自重させる強い意志は大事だよね。
でもでもやっぱり、心に毒なのは分かっていても一度は思いっきりだらけた生活を送ってみたいと思う。
……さて、そろそろ戻りますかの。
喫茶店を出て少ししたら感じ始めたこのなんか変な感覚。
誰かに着けられてる……気がする。
いや、まぁよくある勘違いというか、妄想スリル疑似スリルというかなんだけど。
それでもなんだか感じるんだ。勘違いだろうけど。
……ちょっと面白いかも。
よし、試しに狭い路地に入ってみよう。
もし後ろから誰かが着いてきていたとして襲われそうになっても防衛策があるから大丈夫。
てちてちてち
とことことこ
てちてちてち
とことことこ
てち
と、とこ
「誰? 着いてきてるのは」
路地に入り足音がよく聞こえるようになり思い過ごしではないと確信したオレは後ろに振り向いた。
「あ、あれ?」
オレは後ろにいた人が思っていたものと違って拍子抜けた。
なんと子供だった。男の子。オレよりちょいと高めの身長の。
「……あ、あの……ごめん。気付いたらキミに着いていってたんだ……」
男の子は謝りだした。
そして間入れず話しだした。
「ちょっと来て欲しい所があるんだ。来てくれるかな……」
な、なんだっ? 着いてきたと思ったら今度は着いて来いって!?
普通面識も全く無い人にいきなりそんな事言う!?
少なくともオレには無理だぞ。
とりあえず断っておこう。仮にも仕事の途中なんだし。
「ごめんね、今はあまり暇じゃないんだ」
「え? 喫茶店に入ってたのに?」
「う……」
小学中間くらいの背丈の癖に随分と頭が回るみたいだなこの子。……まぁオレはそんな子よりも小さいからあまり言えないんだけど。
「やっぱり暇なんでしょ? なら……」
目の前の少年は触れてきてはいないけれどグイグイと引っ張るように語りかけた。
先程の正論が正論すぎてなんとか理由をと働き掛けていたオレの頭にどしどし流れていく少年の話はオレを混乱させるのには十分だった。
「……で、着いてきてくれる?」
「……え? あ、うん。いいよ?
……ん?」
突然戻った本題に気づくことなく返事を返し、自分が何に対して了承したのか記憶を辿っているとすぐに答えに辿り着いた。
「ありがとう。じゃ、行こう」
「えっ?」
子供の行動力はやはり凄いものなのか、断ろうと口を開ける前にオレの手は少年に引っ張られ、そのまま少年につられる歩くこととなった。
……ここまで来るともう断り辛いな。
ジェシネスさん、ごめんなさい……。
オレは心の中でジェシネスさんに謝罪しながら少年の横を歩き始めた。
ー闘技場前
「わぁ~……」
目の前に建つずっとずっと大きな建物を見てオレは思わず声を漏らした。
海外に行った事もなく教科書やテレビでしかこういう闘技場的なのを見たことがなかっただけに目の前の生の建物から感じる圧力は相当なものだった。
「ライトはここがどんな所だか分かる?」
「……うーん、わかんない?」
見た目が闘技場だからといって本当に闘技場かどうか知っているワケでは無かったので否定することにした。あと何故か疑問系になった。
ちなみにここにくる前に簡単な自己紹介は済ませてある。
少年の名はモル・ビジィ。そこそこお金持ちの商人の息子さんらしい。
オレは今の名前をそのまま教え、家族やらそういう事は話さずに『あるお店のお手伝いをしている』とだけ言っておいた。
余計な情報を相手に与えてはいけないからね。たとえ子供でも
「お? モルか」
「こんにちは、おじさん」
闘技場の入り口までくると、そこにいた見張りの人がモルと話し始めた。知り合いなのかな?
「さすが商家の坊ちゃんは口が上手いねぇ。もうあんな有望そうな娘を手玉にとるとは」
見張りの人はオレの方をチラリと見ながら冷やかすように言った。
「手玉って……俺はそんな事しないよ。でも有望なのは間違いないよ」
「ほっほぅ」
……なんかオレを物のように話すなぁこの2人。ちょっとヤな感じ。
「そうそう、今日は王子様が来てるから見応えあるぞ。相手もアロットギルドの中ではなかなかの使い手なんだとか」
「ホント!? もしかして今から!?」
「そうだなぁ、確かもうそろそろ始まる頃だったかなぁ……。あ、何故かは知らないが今回の王子様の手合わせは事前広告も行われていないサプライズイベントだ。くれぐれも俺が話していたなんて言うなよ?」
「わかった。ありがとうおじさん。行こう! ライト!」
「え? うん」
試合の情報に完全に舞い上がったモルに勢いよく手を引かれ、オレは走るようにその場を後にした。
見張りの人の方を向くと手を振ってきたのでオレも手を振り返したら、見張りの人は微笑ましいものでも見たかのようなにこやかな笑みを浮かべた。
闘技場内部の観客席エリアへ着いた時のオレは驚愕していた。
「凄い……」
「ライトもこの凄さがわかるんだね」
何故なら観客席の六割方が既に人で埋まっていたからだ。
勝手な考えだけど、野球場とも張り合えるくらいの大きさの闘技場の観客席をこんなに埋めるにはそれなりの大会を開かないといけないハズ。
それがこんなに……
「でも今日の試合は予告されていなかったんだよね……?」
「人は噂好きだからね。どんなに隠したって漏れない話なんてないよ」
なるほど。世界は違えど人の習性ってのは変わんないもんなんだね。
「でも、噂ってだけでもこの人の量……。王子様ってどんな人なんだろう」
「ん? ライトは知らないの? 王子様」
「うん」
「ライトはお店のお手伝いをしているんだったね。だったら将来的にはその店の店主になるかもしれないし、人に関する事はよく知っておいた方がいいよ」
「あはは……そうかも……」
そ、そう言えばそういう設定だった。
「アプソペリティ帝国第一王子ダール。ダール・ワン=ディワロン。それが王子様の名前だよ」
「ダール……え?」
ダメダメ! オレ、そう言う名前覚えられない! なんたら一世とか二世とかにしてよ。
「いずれこの国の王様になるんだ。今覚えなくたって覚えるから大丈夫だよ」
「なるほど……」
そんな話をしていると、広い決闘台の上に誰かが歩いていくのを見た。おそらく今日の試合の関係者だ。
そう言えばモルの話によると、闘技場は大会などがある日以外は基本的に誰でもいつでも利用可能で、普通は練習場として使われるらしい。
掃除か何かの為かたまに閉場している時があり、今日もそんな感じだったらしい。
でも大会の時みたいに見張りの人がいるいるからおかしいとは思っていたんだとか。
なら何故オレを連れて閉場されているハズのここへまた来たのかと聞いたら、オレを見た瞬間に考えナシに動いていたと恥ずかしげもなく答えてくれた
多分あれだよ。気に入った人に自分の趣味を薦める時と同じ状態だったんだよ。きっと。
「モル、あの人は?」
オレは決闘台にいる2つの旗をそれぞれの手の持っている人を指差して言った。
「あれは審判みたいな人だよ。仕切り役でもあるよ」
「へぇ~」
仕切り役の人が旗を掲げると、しばらくしないうちに歓声が上がった。
凄い迫力だ……。小さい頃に親子で野球観戦に行った時を思い出すなぁ……。
『ええーゴホンゴホン。今回はただの手合わせだったらしいのですがぁっ! あまりにもの観客の量により急遽アナウンスを勤めさせていただきますっ! こういうテキトーなトコロはご愛嬌ということでなにとぞよろしくお願いしまーすっ!』
「わっ!? え!? え!? 司会者!?」
突然闘技場に愉快な司会者って感じの男声が響いてきてオレは驚いた。
「おぉ~、なんだかお祭りみたいだね」
モルはこういうノリに慣れているのか大して驚いていない様子だった。
『さて審判、選手の準備は整いましたかぁー? …………なるほどオーケーオーケー、それでは今回の英雄お二人に登場して頂きましょう!』
更に湧き上がる歓声。
そしてオレはとんでもないモノを見た。
『まずはブラックコーナーからっ! 灰色の髪のマントの青年。実はアロットメンバーで、ランク4とのことだぁっ! 退屈なんてさせてくれないぞっ!』
「へぇ~ランク4かぁ~」
「それって凄いの? モル」
「うん。そこまで珍しくはないんだけど、それなりに苦労しないとなれないランクなんだ。ダメな人はずっとランク3止まりだしね」
「なるほど。そんなに凄い人なら風格もちが…………えッ!!?」
あ、あの髪の色! 長身にそこそこ長いマント! ま、まさか!?
「ダークSUN !?」
ちなみにこのモルという少年はそのままの意味で少年Aなので今後の活躍は恐らくないでしょう。
道案内お疲れさまでした。