メンバー登録
ある読者さんにギルドカードの話をしてから読み返してようやく気付きました。
去年書いたヤツ投稿してない! ……と。
なんとなく無くても話は通じてたのですが、後に響くので投稿します。
……いや、ホントなんか足んないなぁあのエピソードどこだっけ? ってなってテキストを漁って見つけた時は驚きを通り越しましたよ。
ーアブソペリティ帝国帝都内 商業地帯
ー視点 ライト
……さて 、世界も涙も強さも忘れて素敵な幼女に笑われたいよとやってきましたは商業地帯……のギュイルドでございます。
朝っぱらから美味しそうな匂いの誘惑を精一杯振りきりわざわざこのギルドに訪れたのには理由がある。
お外からやってきた部外者ども(オレ達)がお庭(国の中)を快適に歩くにはギルドのメンバーに入ってギルドカードを持つが一番手っ取り早いらしい。つまりギルドカードという身分証明書を手に入れる為に来たのだ。
元の世界でも身分を証明出来るものは大事だったもんね。背が低い人とか特に。…………。
ギルドハウスの中は意外と広く、意外と綺麗で、ちょっぴりオシャレだった。……ここ、ほんとにギルド? オレの知ってるギルドっつったらもっと獸臭がしてテーブルも床も敷物もゴツゴツしてたんだけど……。
「ねぇダークSUN、ここは何ギルドなの?」
この世界のギルドは大雑把に3種類ある。
まず1つは戦士ギルド。派遣警備員とか衛兵を依頼という形で短期バイトっぽくしたようなところだね。
もう一つは魔法ギルド。主に配達をしていて、細かな作業を担当したりと、いわゆる特化型ってやつ。言っちゃえばもはや宅急ギルド。
そしてもう一つは冒険者ギルド。衛兵、配達、雑用、暗殺、何でもござれの万能ギルド。冒険者のギルドだから『冒険者ギルドのギルドカード』はどの冒険者ギルドでも通用する。そのおかげか勢力が一番大きい。
(※ 戦士ギルドや魔法ギルドは冒険者ギルドのようにギルドカードや何かしらの証の統一化をしていないらしいです)
中にいる人達の服装でなんとなくどのギルドかは分かっていたんだけど聞いてみた。
「……あぁ、このギルドは
冒険者ギルド『アロット』。ここアブソペリティに始めデポールドリィ、リスエルシアなど他にも様々な国に存在する割と大きな勢力のギルドだ」
「おお、つまり色々と安定してるって事なんだね」
「……そういうことだ」
あまり記憶にない国の名前をポンポン出されてもピンとこないな……。
そういやサウシアの名前が挙がってなかったけどあの国ってなんかのギルドなかったっけ? ……ま、いっか。
「……よし、早く作って今日は適当に何か受けるぞ」
「うん」
ダークSUNの後を着いて行くと、やはりと言うかカウンターがあり、カウンターにはどこかにこやかなお姉さんがいた。
「今日もお疲れ様です。そちらの妹さんのご依頼に来たのですか?」
お姉さんの口振りから察するに、オレ達は兄妹だと思われているみたいだ。
……たしかに今は髪色が白だから血縁の者だと思われても仕方ないよね……。でも流石にここまで年の離れた兄妹は居ないと思うよ?
「……いや、メンバー登録に来た」
「メンバー登録ですね。それでしたら……」
「メンバー登録するのは俺ではない。このライトだ」
「……。……えっ?」
お姉さんは唖然としていた。
「……俺はすでにギルドの者だ。ライトの案内を頼む」
「……えっ、あっ、はい。……あ、あの……この子をメンバー登録して本当に宜しいのですか?」
「……構わない。そうだろライト」
「うん。カードが無いと困るもんね」
「……わ、わかりました。少々お待ち下さい」
お姉さんはカウンターの後ろの棚から青く透き通った正方形の薄い板を取り出すとカウンターの上に置いた。
「あ、妹さんを持ち上げてあげてもらっても良いですか? 恐らく届かないので」
「……ああ、分かった」
なんとも言えない悲しき事実を言われてしまったがここは堪えて大人しく抱っこされた。
一瞬にして何もかもが大きな世界から天井に近い世界に近付いた。
……あぁ、悲しいなぁ……。
「大丈夫……みたいですね。それではその手をこの板に……おっと、その前にこの注意事項を読んで下さいね」
オレが青い板を見ていると、お姉さんは紙を渡してきた。
「えっと……『ワハトレスプレートに片手の手のひらを当てたら以下の質問をしますので心の中で答えて下さい。(以下省略)』」
「質問される中で名称を答えるタイプのものは『任意の名称』で結構ですよ。メンバーの中には本名で登録していない方もいますし、名前が無かったからニックネームで登録した人もいるので」
任意の名称……か。
このスターライト・エクスシーションも偽名な訳だしこれ以上偽名を増やす必要は無い。……無いんだけど……ね? 前の世界の生前ではハンドルネームがころころ変わってた人間なんですのよ……。
と、取りあえずこのワハトレスプレートにっと……。
「準備は宜しいですか?」
はい。
ちなみに質問はもう始まっている。
「あなたの名前を教えて下さい」
スターライト・エクスシーション。
「性別は?」
おと……女です!
「年齢は?」
17。
「探索は得意ですか?」
……イマイチ。
「魔法は使えますか?」
はい。
「武器を扱うもしくは素手での近接戦闘の経験はありますか?」
はい。
「手を放して下さい」
……ふぅ、終わったみたい。
「お疲れ様でした。間もなくカード化が始まりますのでそのままお待ち下さい」
カード化?
「ねぇダークSUN」
「ワハトレスプレートを見ていれば分かる」
ダークSUNに言われるままに青い板の方を見た。
「縮んで……る?」
プレートはみるみるうちに小さくなっていき、いつの間にかキャッシュカードと同じような大きさになっていた。
「お待たせしました。内容をご確認下さい」
オレはお姉さんカードを受け取るとさっそく書かれていることを確認した。
『アロットメンバーズ ランク0
スターライト・エクスシーション
戦闘系に関する適性 万能型
探索・捜索系に関する適性 不明
完了件数 0 』
「間違いはございませんか?」
「……んと、はい。大丈夫……です?」
ダメだ。こういうの全然わかんない。どれが良くてどれが駄目なんだろう。
なんとなくなら分かるんだけど、そのなんとなくで答えるのはなぁ……。
「……問題ない。さっそく、完了件数0のライトでも受け入れてくれる懐の広いクライアントはいるか?」
「……そうですねぇ。帝都付近は非常に治安がいいので夜中に移動する商隊の護衛くらい……あ、ライトさんの容姿でしたら店の売り子などどうでしょう? ……子供または女性用の依頼且つ簡単な依頼なのではした金にしかなりませんけど」
「売り子かあ」
なにを思ったのか宣伝のバイトをやった事があったがアレは非常にキツかったなぁ……。売り子も似たようなものなんだろうn
「……それでいい」
「えっ?」
「わかりました。依頼内容は雑貨屋のお手伝いとなります。三番商業地区の雑貨屋オリドになります」
え? ちょ、勝手に話を進めないでよ!
「……了解。……なかなか良い目をしているな」
「いえいえ、私ではあなたがランク7以上はある強者ということしかわかりませんよ」
「……十分良い目だ」
「……な、なんの話をしてるんです?」
急に話変えないでよ。着いていけないじゃないか。
「ライトさんもとても強いお兄さんがいてよかったですね。お兄さんのような偉い人目指して頑張って下さいね」
「え? あ、ありがとう」
「……いくぞライト」
「え? うん。あっちょっと待ってよ~」
すたすたと歩くダークSUNを追いかけるようにしてオレはアロットのギルドハウスを出た。
「……しかしまぁアロットって名前はなんなんだろね?」
「……ライトもそう思うか」
「え? ダークSUNも知らないの?」
「……あぁ」
「ちょっと意外」
「……アロット誕生時から所属しているがいまだに意味が分からない。本当にどういう意味なのだろうな……」
「ちょっと発音だけでなら思い当たる言葉ならあるんだけど、『沢山』なんだよね。でもこれじゃあなにがなんだか……」
「分かるのか? それだけでも分かるのか?」
「……いや、やっぱ違うかも」
なんだかいつもより表情を出してるというか、興味があるみたいだね。
「……ライト、お前は不思議な奴だ。なんというか……どこか近しい存在に似たようなものを感じる」
いわゆるデジャヴとか『オマエニアッタキガスル』ってやつ?
なにそれ、ループ説立っちゃった? この世界に。
「不思議なのはダークSUNの方だよ」
「……そうかもしれないな」
おりょ、珍しく認めた。
「そう言えば、カードに書いてある『戦闘系に関する適性』ってどういうこと? 何のために書いてあるの?」
「……それはカードの持ち主がどれだけ幅広い戦闘スタイルを持っているかを表している。近接での戦闘、そしてその戦闘方法。素手なのか道具を使ったものなのか。そしてそれがどういう大きさ、長さでどこでダメージを与える道具なのか。……中距離、長距離、超距離でも同じだ。どういった道具を、どういった魔法をと細々と記憶し反映させる。また、相手の注意を引く囮役や相手に気付かれずにダメージを与える隠密攻撃役などもカードの持ち主の力量から判断され反映される」
……すげぇ、時代に見合わずハイテクなカードなんだね。
魔法の力って凄い!
「つまり万能型っていうのは?」
「……その言葉の通り大抵の事はこなせる便利な人材という事を意味する。ちなみに万能型はギルド側も安心して依頼を任せられる。つまり依頼を受けやすい……ということだ。ランクも上がり名も知れてくればクライアントから寄ってくるようになるだろう」
つまり万能型であることに越したことはないというわけか。
「……普通はカード作成時にいきなり万能型とは表記されないんだがな。よほどライトの持つ力量が幅広く強力だったのだろう」
「な、なんか照れますなぁ……」
誉められるのはキライじゃない。むしろ好きだ。もっと誉めてもいいのよ?
「……どうやらあの店のようだな」
「ん?」
ダークSUN が指差した方向をみると、そこには怪しいと言えば怪しく、普通と言えば普通な何かの店があった。