帝都に入りました
最近他の作者さんの小説を全然読んでいません……。読みたいのですがアレもしたいコレもしたいと心が落ち着いてくれなくて……。そんな季節なんですかね?
それはそうと、黒陽(ダークSUN )に白髪幼女、そしてごちうさ……。うう、なんだか色々と被ってしまい頭が痛い……。心なしか作者の画風もごちうさに近付いてきているし……。ああ……!
ーアブソペリティ帝国戦外領内 草原
ー視点 ライト
陽も傾いて少し夕方っぽくなってきた頃、オレは再び感動した。
今度はまさにモンスターと言えるヤツが現れたからだ。ちなみに70cmくらいの人型のそこらの草の塊みたいなヤツ。
「ね、ねぇっ! あの草の変なのもモンスター? 」
「……ああ、あの草の塊はグラッソンというモンスターだ。戦闘能力はほとんどなく戦闘意思もない。良い家畜のエサにもなるから子供が小遣い稼ぎの為によく倒す」
……うわぁ、なんか可哀想だね。
「害が無いなら無闇に倒す事はないよね」
「……そうだな。俺も意味もない殺生はしない」
今のところ平和的なモンスターとしか出会ってないせいか少し穏やかな気持ちになりながらオレ達は足を進めた。
しばらく歩いていると
「ライト! 伏せろ!」
ダークSUNの大声が聞こえたのでオレは残像を使い高く飛び上がった。
ゆっくりになった世界でオレは下を見やると、そこには鹿っぽい生き物がいた。
残像を解くと鹿は猛スピードで走っていき、オレを仕留め損ねたのを感づいたのか辺りを見回していた。
「あ、あの鹿みたいなのは?」
「……あれはカーミッツ。一見草食動物に見えるが肉食のモンスターだ。元は草食動物だったらしいが何らかのはずみで魔力を取り込んで凶暴化したらしい。元の種族すら補食していた為その元の種族はもはやほとんど生存していない。ちなみに夜行性だ。昼間は見かけることすらないのだが、夕方になってくるとたまに早起きなヤツに出くわす事もある」
「なるほど。つまり害獣なんだね」
「……ああ、元の種族が種族なだけに食べられるが少しクセがある。向こうに敵意があるなら食用にしないとしても倒して問題ない」
よし! そいじゃ初めての対モンスター戦といきますか!
……うう、といっても鹿みたいなモンスターに良い思い出はないなぁ……。それに……
「どうやって倒そう……」
オレは別に猟師じゃなかったから鹿の倒し方なんて……
「あっ!」
良いこと考えちゃった~!
オレは指輪に念を送り、あるスナイパーライフルを取り出した。
あるゲームでは悲惨この上ないネタ武器。しかし糞ヘリで定評のあるあの会社のバイオレンスなゲームでは心強い味方。Dragunovしぇんしぇだ!
しかもただのDragunovではない。どういう原理かbb弾を代わりに詰めたとしても厚さ50cmもの鉄板をキレイにぶち抜く魔改造版だ。もはや人類の作り出せるシロモノではない。
「(……随分と変わった武器だな。というかどこから出したんだ……?)」
ふっふっふっ、全然覚えちゃいないけど、オレは既に色んな便利グッズをこの指輪の空間に入れていたのだ!
どんなものがどのくらい入ってるのかも全然思い出せないけど今みたいに適当に思い出すからこれからも多分大丈夫。
「……そいつはあまり賢くない。突進してきたところをかわして攻撃を当てるといい」
「それには及ばないよ。長い武器で直接叩く時代はオレの中ではとっくに終わってるんだから」
「……そうか、ならば見させてもらおう」
「うん、とくとご覧あれっ」
カーミッツもちょうどオレを視界に捉えたのかこちらに向かって突進し始めた。
オレはスコープを覗き標準を……
ってこれ標準合わせんのムズくない!?
ゲームの中の人のように構えようにも身体が小さいし、なにより持ちながら構えんの辛い!
し、仕方ない、残像だ!
ブォォォォォォン
「………………」
オレ以外の何もかもが遅くなる世界でオレは幼児体型でも持ちやすいスナイパーライフルの持ち方を試行錯誤し、取りあえず諦めてDragunovしぇんしぇを収納してからカーミッツを思いっきり小さな拳で殴った。
ゆーっくりとカーミッツが空を舞おうとしているのを見届けるとオレは残像を解除した。
フォォォォォォン……
カーミッツは凄いスピードで空の彼方まで飛んでいった。
「あちゃー……結局は超加速からの鉄拳が一番なのか……」
「……魔法を使った……のか? (動きが全く見えなかった。なんなんだあれは?)」
「ふっふっふっ、オレがちょびっと本気を出せば身体能力だけでこんなもんよ。武器なんて要らないね。さっきのも剣も道具もオレからすればみんなオモチャさ」
どや? どや? もひとつオマケにどや?
「……やはり変わった奴だなライトは」
「よいよい、誉めさせてやろうぞ♪」
何らかのモンスターが現れたらダークSUNが手を出す前にオレが殴ってはい終わり。こんな調子でオレ達はアブソペリティ帝国帝都の外壁まで向かった
★ ★ ★
幼女の鉄拳ひとつで敵対するモンスターをばったばったと倒しながら帝都への道を進んでいくと遠くから見ても結構高い帝都外壁が見えてきた。
そして程なくして、帝都へ入るための跳ね橋とそこを警備しているいわゆる門番が見えてきた。
「うわぁ~……」
20mはあるんじゃないかと思われる高い外壁。そしてそれに見合った跳ね橋を見て凄いファンタジーというか中世というかを感じたオレは思わず声を漏らした。
「……久々の大きな跳ね橋に感動しているみたいだな」
「久々? いやこんなの初め……あはは、サウシアは外壁はあってもは跳ね橋は無い紙防御の国だったもんね……あはははは」
おっとと、オレは根っからの旅人(しかも酒を呑む幼女)で、サウシアの前にも色んな所に行ったことがある設定だった。危ない危ない。
「……門番兵は俺達に何か話し掛けてくるだろう。俺が相手をするからライトは俺の後ろに着いて大人しくしていろ」
「うん、了解」
跳ね橋の所まで行くとダークSUNの言う通り門番兵の1人がこちらにやってきた。
相手をするって言ってたけど……大丈夫なのかな……。
「そこのお前たち、止まれ」
ピタッ
「わぶっ」
もー、ダークSUNが門番兵の言う通りにとまるからダークSUNにぶつかっちゃったじゃんかぁ~。
「見たところ荷物は無いみたいだし商人ではないな。旅人か?」
「……ああ、デポールドリィから来た。旅人故ここへ来る理由は考えていない」
「なるほど、ギルドカードはあるか?」
「……ああ、これで大丈夫なハズだ」
ダークSUNは首に掛けているタグのような物を門番兵に渡した。
「…………なるほど、ランク4黒陽。確かに確認した。後ろの小さいのは連れ子か?」
「……まぁそんなところだ」
えっ!? 何変な事言っちゃってるんですかこの人達!?
「実子か義子かは知らんがあんたもまだ若いのに子守りとは大変だねぇ。嬢ちゃん、あんまりお父さんを困らせるんじゃないよ」
門番兵の人はオレの所までくると、手のアーマーをガシャガシャ音を立てながらオレの頭を撫でてきた。
くそう、この見た目上仕方ないとはいえ嬢ちゃん嬢ちゃんと子供扱いされるのはあまり気分がよろしくないな。
「……それでは、お勤めご苦労。行くぞライト」
「ああ、貴殿に良い繁栄がありますように」
「あっ、ちょっと待ってよっ」
そんなこんなでオレ達は無事にアブソペリティ帝国へ入ったのだった。
★ ★ ★
帝都に入り、空いている良い宿を探し回っている内に日は暮れてしまい、見つかる頃にはもう夜になっていた。
商業地帯の食堂でなかなかデリシャスな料理を堪能した後、同じ商業地帯の風呂屋で身体を洗い、宿に戻って来たんだけど……。街並みを思い出してニヤニヤしまくっていた。
オレはこのアブソペリティ帝国へ来てから何度目かも分からない感動をした。
行き交う様々な人。
広い道、狭い道、建物と建物の間に出来た光の届かない道。
何処を見ても三階以上はあるくらいに高い家。
レンガだったり白い石だったりでできているオシャレな家々。たまに苔が生えていたりと良いアクセントもあり。
喧騒談笑宣伝。人々が出す音の数々。
商業地帯から香ってくるいい匂い。
……くぅぅぅぅぅっ!! 思い出すだけでニヤけが止まらないっ!
ああ~出たいなぁ行きたいなぁ夜の帝都に繰り出したいなぁ~。
「ねぇねぇダークSUN」
「……お子様はもう寝る時間だ」
……いけず!
「ぶーぶー! そんな事言わずにさぁ~」
「……寝ろ」
「そんなぁ~。一緒に飲みに行こうよ~、ね? ね?」
おもっきし酔いたい! 夜の街をふらふらよろよろと歩きたい! わかりますか、この気持ち!
「……お前には早い。寝なさい」
「……わかったよ……。じゃあさ、オレの髪、とかしてよ」
沸き立つ衝動を子供扱いで抑えつけたんだ。少しは命令しないと気が済まない。……まぁ断られるだろうけど。
「……わかった。してやろう」
「えっ?」
「……後ろを向け」
「う、うん」
断られるものだと思っていたから驚きながらダークSUNに言われるままダークSUNに背を向けた。
すると、何処からか取り出したのかは知らないけど頭に櫛のようなものが当たるのを感じた。
「……痛くないか?」
「う、うん……大丈夫……」
シェリルさんの優しく丁寧なやり方に慣れていたオレでもダークSUNの髪のとかし方はとっても優しく丁寧に感じた。
イケメンな上に女の子の満足する髪のとかし方が出来るなんて……ダークSUN、なんて奴だ……。あぁ、なんか気持ち良い……。
「……さて、もう大丈夫だろう。鏡を見て確認してくれ」
少しぽわぽわしている頭に活を入れて立ち上がり、壁掛けの鏡のところまで行くと小さい白髪の幼女が視界に入った。
「……およ? どっかで見たことあるような……。……ん? これって鏡だよね?」
オレが右手を挙げれば鏡の中の子も右手を挙げ、ふざけてマントをたくし上げれば鏡の中の子も恥ずかしそうにマントをたくし上げ、可愛らしいおなかを見せた。
「……ぅ、罪悪感凄い。でもこの遊び良い!」
鏡遊びがこんなに良いものだなんて初めて知ったよ。
「……何をしているんだ」
「あ、いやははは……。そ、そう言えばこの子誰?」
「……? ああ、そう言えば言っていなかったな。その鏡に写っているのはライトとルゥが同化した姿。つまりお前だ」
「……え? オレ? 同化?」
ルゥって確かあの白髪で黄眼で魔王の……?
「……な、なんだってぇぇぇぇぇ!?」
つ、つまりアレか? オレは二回も身体が変化した事になるのか!?
「……心配するな。同化したと言ってもルゥ・エスリの要素はその髪色と黄色い目しかない。目の色はどうしようもないが髪色なら元に戻せるだろう」
あっホントだ。全然変わってない。
……ぬぬ? なんか少し背が縮んだような……? き、気のせいだな。たぶん……。
ああ……これ以上縮んだら小3どころかピッカピカの何年生……下手したらさくらんぼ組とかイチゴ組ってレベルだよ……。
「……白髪黄眼の少女が魔王である事は知られていない。別に容姿で困る事はないだろう」
「……うん、確かに困る事は無いの……かな? よく見たら髪質は変わらなかったのか髪型は同じだし。……でもなぁ」
今までは『オレの心の姿』だから良かったんだけど……ん? なんか引っかかるな……。
取りあえずオレの為だけの身体だから良かったんだよ。
でも今は『オレとルゥの身体が同化した姿』だ。あまり悪さは出来ない。……まぁ悪さはしないし、したとしてもルゥは魔王だからね。当たり前だというか……。
「……罪悪感か」
「……うん。オレが欲した訳じゃなくルゥ自らが押し付けるようにくれたからちょっとビミョーなんだけど、それでも罪悪感が……ね」
「……こればかりはお前の意志の問題だ。しかし慣れと時間がなんとかしてくれるだろう」
「うん、ありがとう。……んー、なんか眠くなっちゃった。先に寝るね」
オレはダークSUNにお礼を述べると、結構ふかふかなベッドに入り込み目を瞑った。
睡魔はあっという間にオレを夢へ落とし、意識はどこかへどっぷり埋まっていった……。