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志願兵招集




魔道具

魔導具

魔法具


魔法的アイテムは各作品で色々な名前で呼ばれてますよね


ちなみにこの世界の魔法的アイテムの名称は魔道具です

簡単ですね




―サウシア国境の小さな砦



「コルシオン、スターライト・エクスシーションと鍛冶屋のラミスはどうした?」


「スターライト様に一番親しげにされていたという使用人に連れてこさせる様に手配しました」


「ふむ…そうだな、国営の兵を連れて来ると住民も不安になるからな。んむ」


ロイは頷き返事をした

彼なりに褒めたのだろう


「しかしロイ様、志願兵を募ったのは良いのですが…」


報告係のコルシオンは砦の入り口に終結した志願兵の住民、約3000人を見てそう言った


「…少し多いのでは」


「何を言う。敵国はどんな大軍か忘れたのか?」


「何万の大軍…でしたね」


「解っているなら何故そんな事を言う」


「この志願兵の住民達。ちょっと前までは平和に過ごしてきた人達なんですよ?…少し可哀想です。撤兵みたいで」


「そうだな…。しかし状況はそんなに甘くはない。それに国の為に戦おうとこれだけの者が立ち上がったのだ。それだけ愛されたこの国を奴隷まみれの国にするくらいなら戦って死んだ方がずっと良い」


「…そうですね、自分が間違っていました」


「うむ、解ればいい」


2人がそんな話をしていた頃、ライトとラミスが着いたのを見たウィザード…カースジックはロイに報告をしにきた


「ロイ様」


「そうか、着いたのか」


「はい」


「ではそろそろ始めるとするか…」





砦に着いたライト達はひとまず砦の中で待機する事になった


「ラミス様、これからロイ様が演説を開始されます。演説が終わると武装の支給がされますのでそれまでに支給する準備をお願いします」


「わかりました。指定場所は?」


「(演説かぁ…。王様の演説って事は国会議員とか校長よりも長いんだろうなぁ…。うへえ…)」


「わかりました。では早速…」


「ねえメイドさん。オレは何をすればいいの?」


「ライト様は私とウィザード様でお遊びを致しましょう♪」


「お、お遊びって…」


メイドの言葉を聞いてウィザードとライトは顔を変えた


「や、やはりお前だけでライトと遊んでくれないか?」


「ダメですよウィザード様。いくらウィザード様でもロイ様の命令は絶対です」


「ああ、なんという事だ…。こんな恐ろしい娘とお遊びだなどと…。どんな恐ろしい魔法を掛けられる事やら…」


「(恐ろしい娘ってなんだよ)」



「ははは、しっかり遊んでもらいなさいライト」


「ラミスさんまで…。オレはもうお子様じゃ…」


「それでは失礼します」


「ま、待ってくれラミス殿」


立ち去ろうとするラミスをカースジックは呼び止めた


「なんで御座いましょうウィザード様」


「ライトとはどのように遊ばれたのだ?ぜ、是非とも教えてほしい…(我が命の為にも…)」


「そうですなぁ、朝は一緒にご飯を食べて風呂にも一緒に入ってたまに寝るときも一緒だとよろしいかと」


「(な、なんだと!?ラミス様はライト様と…幼女とそんな幸せな時間を!?)」


「…で、どの様な戯れを?」


「ふむ、人気の無い所でライトの撃った魔法を小さなブロンズナイフで弾き返す遊びをしましたなぁ」


「な、なななな…」


カースジックは膝から崩れ落ちた


「それでは失礼します」


そしてラミスが去った後、メイドは花散る妄想を、カースジックは絶望的な光景を浮かべていた


「あの、ウィザードたん?」


「な、なんだ!?」


「何して遊ぼうか?」


その時のカースジックは絶望的な表情をしたという




数分後



「ライトよ。自分はお前を誤解していた様だ」


ライトの遊びとは魔法の練習だった


カースジックは最初は盛大にびびっていたが、魔法の練習をするのはライトではなく、カースジックとメイドの方だと知って安心していた


ライトはメイドに魔法を覚えさせた後、3人分の飲み物を用意してほしいとねだった


そしてライトはすかさず飲み物にある細工をした


「使用人でも構わず自らの術を教えてしまうとは。だがそれだけでサウシア国に貢献している」


「え、えと…?」


「つまりアレだ。お前は唯の破壊が大好きな愚か者ではなかったという事だ」


「…ま、まぁ犯罪者とかヤだもん」


ウィザードしぇんしぇは意外と失礼なのかな?


「まぁいいや。それじゃあラミスさんが言っていた遊びを実際にやってみようか」


オレは内緒で複製したナイフを取り出した。

複製の能力を使うのは何気に初めてだったな


「「…………」」


「大丈夫、魔法を打ち返すのはオレだから。2人は打ち返された魔法を盾で防いでね」


「あ、あの…ライト様?」


「ん?」


「ラミス様の言ったお遊びって本当に出来るんですか?」


「もちろん」


「だがライトよ。あれから鍛練を重ねた私ならともかく、コイツは先ほど魔法を覚えたばかり。魔法の盾を出すのは至難の業だぞ?」


「大丈夫。ヤバくなったら助けるから」


「助けるって…」

「お願いしますねライト様!(キャー可愛いー!)」


「それじゃあやろうか」





数分後




「ウィザード様…」


「ああ…」


「私はロイ様にカースジック様、そしてライト様が居ればこの戦いなんて練習試合にも満たないと思います…」


「私もそう思う…」


「当たり前だよ。正直オレ1人じゃ無理かもだけど、みんなが居れば楽勝だよ」


「一騎当千なんて優しいレベルですよきっと」


「ああ…(だが、サウシア以外にもライトより上の人物が居ると考えると頭が痛くなるな…)」


「そうそう、そろそろ講義が始まる頃ですよ。お二人様も御覧になりますか?」


「お、オレはパスするよ」


「ロイ様のありがたいお言葉をお聴きにならないとはいけないなライト」


「…長いんだよね?」


「大丈夫です。ロイ様の講義がつまらない訳がありません」


「行くぞライト」


「やだよ〜!講義なんてやだ〜!」


そう言って2人はオレを持ち上げて恐らく砦の外へと連れ出して行った







「さて、我サウシア国の英雄となる皆よ。これから何をするか存じているな!」


既に講義は始まっていて、王も国民も皆堅い表情をしている


国を、家族を守りたいという立派な決意の者

自分の力で国に少しでも貢献したいと思っている者

唯の恐いもの知らずな者


様々な人達が様々な思いでここに集まり、王の話を真剣に聴いていた


「第1目標にサウシアの防衛、そして撃退。第2目標に相手国の王を生け捕りにする事。この2つだ」


「…我も講義など始めてでもう言う事が無い。だから我は皆に我が国の言い伝えを託そう」


「この世には真なる鍵が存在する。鍵は真なる鍵を破壊するだろう。我らは真なる鍵を守り、世を統治する者達である。真なる鍵を守り、鍵を退けるのだ。新世界を我らが手に!」


数秒間の沈黙

その後すぐに声が上がった


「うおおおお!」


1人の声はすぐさま飛び火した


「「うおおおお!」」

「新世界の為に!」「「うおおおお!!」」

「うおおおお!」「やってやる!」


「ロイ様、ラミス殿がこちらに向かってます」


「さぁ!武器を取って共に戦おう。もうじき我が国の衛兵に与えられる支給品が届くであろう」


そういうとロイは2、3歩下がっていった


ロイの宣言通り装備の入った荷台を押す男と、ウィザード率いる一行(ライトとメイドさん)が砦から出てきた


「…凄いね。みんな殺気立ってるよ」


「それだけ国を思っているのだろう。…ロイ様、只今到着しました」


「うむ、では我が国のウィザードカースジックよ、次はお前がやってくれ」


「わかりました。土壇場で失敗するかも知れませんがやってみましょう」


「期待しているぞ」


そしてカースジックは志願兵達の前へ行った


「いつ敵が攻めてくるか解らぬ。ではそこのお前」


カースジックは志願兵の1人を指差した


「は、はい!」


「お前からあの荷台の場所まで行くのだ。付近の者から順になり、装備を受け取って来い」


こうして志願兵に装備の受け渡しが始まり、無事全員に渡った





「はぁ…はぁ…」


複製しないと足りなかったよ…

しかし生命体じゃないのに30式くらい複製したらもう息切れか…

おっさんめ嘘ついたな…


「どうしたライト?あれだけ凄い鍛冶能力があるってのにもうへばったのか?」


「…違うよ…はぁ…はぁ…」


「しかしライト様に受け渡された志願兵の方はどこか嬉しそうでしたね」


「おい、そろそろロイ様が何か話し出すぞ。口を閉じろ」


「すみませんでしたウィザード様」

「はーいウィザード様」

「へいへいウィザードたん」


「まったく…(なんでいつもライトだけ態度が違うのだ!少しは敬え!)」


オレ達がそうこうしている内にロイ王は再び志願兵達の前に出た


「志願兵…いや、サウシア公式国軍のみなにはサウシアや周辺の砦を防衛してもらう」


「…国王陛下、質問があります!」


「何だ?」


「籠城戦は確かに強力です。しかし相手は…」


「案ずるな、いくら強大な軍も太刀打ち出来ない化け物が居るから大丈夫だ」


「…化け物?」


化け物って…酷いなぁ


「我とカースジック、そして最強の兵がここに居る」


ダレカナー?


「「……?」」


「…ざわざわ…ざわざわ」


「奴はシャイだから出て来ないが、試しに何か題を出してやろう。ラミスよ、すまぬがその荷台、犠牲になってもらうぞ」


「犠牲?いえ、大丈夫です」


「では少し離れた所まで運んでくれぬか?そしたらなるべく早く戻って来い」


「了解しました」


…?犠牲?


よく解らぬままラミスさんは荷台を砦から20m程離れた所まで運んだ


「ではあの荷台を壊せ!エクスシーション!!」


エクスシーション?

ああ、オレの名字だったやつかな?


…魔法じゃヤバいよな

じゃあここはかっこよく


『残像!』


シュウウウウウン…


…うん、成功だな


しかしなんだろう、この機械が止まる時の音に近い何かの音は…


残像は5分くらいしか出来ないからさっさとしないといけないな


5分を過ぎるとだんだん苦しくなってくるしね




『残像終了』っと


ドカーン!


「「……?」」


「…す、凄いな…」


オレが残像を終了させた時、荷台の方から凄い音が鳴った


みんなは荷台のあった所を見たが、既に荷台は跡形も無くなっていた


「「(す、凄い…)」」


驚きのあまりにみんな黙ってしまったみたいだ

しかもロイ王までも…


「…?ライトは魔法を使ってないみたいだが?」


「何を言ってるんですかウィザード様。じゃあどうしてライト様があんな遠くの物を破壊出来るんです?」


メイドさん…ウィザードしぇんしぇに対して凄いな


仮にも偉い人なんだよね?ウィザードの位って


「魔法も撃たずに動くこともなく、しかも豪快に壊すとは…」


まぁ、まさに一瞬の出来事だったからね


あの荷台もデコピン一発でおしまいさ


おまけにかかと落とし三発っていう追い打ちもかけたから微妙に地面が沈んでるんだよね


そういやおっちゃんの言った通り速ければ速い程与える衝撃も凄いみたいだね


こりゃ凄いね残像って


「うむ、どうやら皆も我々『サウシアの奇跡』を見て士気が上がったようだの。…ではこれから皆のそれぞれの配置場所を決めるとしよう!」





一部の熱烈な志願兵はサポート役として前線に出る事となったが兵の配置は無事完了し、今日は一旦帰宅という形となった









一旦帰宅とは言ったがオレとラミスさんは王宮に呼ばれていた


王の間らしき広い部屋には大きなテーブルが置いてあり、そのテーブルを囲む様に大臣やら執政やらが座っていた


オレとラミスさん、ウィザードたんにメイドさんはロイ王に一番近い席に座っていた


「今回の2人の働きにはとても助けられた。たった2人であれだけの装備を用意し、ライトは皆の士気を上げてくれた」


「あれくらいなら余裕だよ」

「恐れ入ります…」


ら、ラミスさん。そんなに深々と下げなくても


「頭を下げるのは我の方だ。正直志願兵も100人くらいしか集まらないだろうと思っていたから100式造ってくれれば良いと思っていたが、お前達は志願兵全員分の装備一式を用意してくれた。本当に感謝している」


「大変だったけどね。でもちゃんとした装備がなくてみんな死んじゃうのは嫌だから…」


その上全員仲良く奴隷だもんな

それだけは何か嫌じゃん?


「王様、ライトへの質問をよろしいですか?」


「ああ、よいぞカースジック」


「ありがとうございます」


ウィザードたんから質問?

何だろ


「お前は確か面白いものを造るとか言っていたな。それは出来たのか?」


面白いもの?

ああ、アレね


「もちろん出来ましたよ。ね、ラミスさん」


「…?面白いもの?まさかアレか!?」


「…アレとはなんだ?」


「これですよ」


「まさかアレを持ってきたのか!?(危険だぞ!もし手が滑って飛んだらどうする!?ここに居る誰かが真っ二つだぞ!)」


俺はアレアレと言われてるブロンズナイフを鞘から出した


「…?ライトよ、これが面白いものなのか?どうみてもただのナマクラじゃ」


「鉄の塊でもなんでもいいから普通じゃ切れないようなものを持ってきて下さい。このナイフがナマクラじゃない事を証明してみせましょう」




数分後




「な、なるほど…。ライトが面白いと言ったものだから大層面白いものだと思っていたが、こりゃ面白いというよりおぞましいな…」


居合わせた大臣や執政も凄く驚いた表情を見せていた


「(このナイフ…見た目は至って普通の…いや銅のナイフは実用的ではないから普通とは言えないが、妙な力を感じる。先程の切れ味といい…なんなのだこのナイフは…)」


「本当は1人でこんな感じの規格外な威力の武器で滅多滅多にしてやろうと思ってたんですよ。まぁ一騎当千の戦士達がいるってのも悪くはないのですが…」


「一騎当千?…まさか(良い意味で嫌な予感がするぞ。もしかしなくても我がサウシアは安泰だな)」


「装備一式の鉄剣は全てこのナイフに近い性能を持っています」



その時ブロンズナイフの魔法吸収の能力を知るVIPメイド、カースジック、ラミスの3人は本当に驚いた


あの魔道具顔負けの恐ろしいブロンズナイフの能力入りの武器が量産されていた事に


「ははははは、実に愉快だ。お先真っ暗な我が国にも大きな希望があったとはな。ライトよ、お前は我が国の光だ!」


「ど、どういたまして…」


「うむ、とても…とても気分がよい!明日辺りにでもカーニバルを開こう。王主催のな。早速準備に取りかかろうぞ」


突然祭りを開くなどと言ったロイ王にカースジックや大臣を始め、今回の会議に出席するもの全てが『えっ?』って顔になった


「あ、あのロイ様?作戦会議は?」


「砂漠は広い。大国の軍が来るのはまだ先だろう。気合い入れても20日は掛かるのだからな」





ロイ自らが祭りを開く事は滅多にない

それも大国の使いの来国後はずっと暗かった


そんなロイを見てきたカースジックを含む国の重要人物達はこんなに嬉しそうなロイ王を見るのは久々で、結局反対出来なかった







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