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戦犯会議

 リサの放った《光の矢》は特攻系アーツと呼ばれるLP消費型アーツで、『LP&AP&MPを最大値の30%消費』というハイコストアーツだ。ただし回転しながら突っ込むという技の仕様上命中率に難がある為、相手を動けないようにしておく必要がある。今回の場合は俺の鞭による拘束がそれだ。

 ちなみに特攻系アーツは武器スキルの取得だけでは不可能で、複数の特定スキルを取得することによって開放される。更にちなみに、角を持つモンスター相手だと角へのホーミングと破壊効果があるらしい。




「さて」


 それはさておき、


「戦犯会議を始めようか」


 リサの《光の矢》で野うさぎを蹴散らしたのでサウザーを正座させ……告げる。



「はい、戦犯には死刑を求刑します」


「訴えを認めよう。それじゃあ……」

「ちょい待って、せめて言い訳くらい聞いて!

 あと、会議やのうて裁判になっとるから!」


 結果は変わらんから、言い訳は聞いても意味はないんだがな……。


「時間の無駄にしかならないので却下します」


「それに、『どう処刑するか』を話し合うから会議で合ってるぞ」



「いや、まじ待ってぇ!」


「……はぁ~、とりあえず聞くだけ聞いてはやるか」

 リサも同じように考えているらしく、サウザーの訴えを却下するが、さすがに問答無用はアレなのでとりあえず……本当にとりあえず聞いてみる。


「わざわざノンアクティブの、それもリンクしまくるモンスターにケンカ売って死に戻りさせようとしたことに対して、俺らが納得できる弁明ができるなら言ってみろ」


「え~とやな……、その前に一つええかな?」


「あん?」


「野うさぎはノンアクティブやないで?」


 あ~、なるほど。もう聞かなくてもいいな。単純にコイツは東の野うさぎが西のとは違ってノンアクティブモンスターだと知らなかっただけだ。


「……はぁ、リサ」


「はい」


 スタスタ、ドゴッ!


 リサに指示してデコピンをさせる。


「ったいなぁ! 何すんねん!? ちゅうか今のデコピンの威力でも音でもないで!」


「ちっとはゲームの情報を仕入れろボケっ! 東の野うさぎはノンアクティブなんだよ!」


 リサのデコピンが色々おかしいのは仕様だ。

 このゲームは、現実リアルの身体能力にステータスの数値を上乗した物がアバターの身体能力となっている。と言うのも、ゲーム初期だからと言って数値上の貧弱ステータスを身体能力の全てに設定すると現実リアルの肉体的に優れた人ほど齟齬が大きいので不利になるからだ。

 ちなみに、身体能力が著しく劣る人への救済として、ステータスの下積みを現実リアルのものではなく、日本人の平均身体能力に切り替えることも可能だ。

 つまり、明らかに音のおかしいデコピンはリサの素の力というわけだ。


「んなこと言われたかて、わいは攻略情報は掲示板やサイトで見ん主義やし……」

「普通に総合ギルドで聞ける情報だ!」


 NPCからの情報収集はRPGの基本だろ。


「いや、でもβの時は……」 

「んなもん仕様が変わるに決まってんだろうが!」


 コイツ、さっきギルドでβの時と仕様が違うって知らされたハズなのに、まだ理解してないのか……。


「いや、でも……」

「まだ無様な言い訳するのか?」


 ちょっと本気で見限りたくなってきた。


「これが最後やから!」


「…………はぁ、言うだけ言ってみろ」


「うん、あのな。わい最初に『掛かってこいや』って気合い入れてたやん」


「そういや、そんなことしてたな」


「いやな、あれただの気合い入れやのうて《大声スキル》の挑発系アーツやねん」


 ヤンキー装備の方に目が行ってたからスルーしたけど、そんなこともしてたのかよ。……と言うか、


「その時点で既に迷惑掛けかけてたのか!」


 スパーン!

スキル解説《大声》


 文字通り大声を出すことができ、その声に効果を持たせることのできるスキル。

 効果は挑発や威圧、音系攻撃の阻害など多岐に渡るため、名前の印象とは裏腹に意外と使えるスキル。

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