光の矢
「──シッ」
初心者用弓矢を構え、獲物を射抜く。
VRMMOのテンプレの一つに弓スキルの不遇、というものがある。画面上でやるゲームなら矢はまっすぐに飛ぶし、簡単に照準がつけられる。
だがVRの場合だと、照準はプレイヤーの空間認識能力依存だし、まっすぐに飛ばすにはステータスのDexとは別の、プレイヤースキルとしての器用さ要求されたりする。……つまり『上手く使うため』のみならず『普通に使うため』にすらプレイヤースキルに依存する武器なのだ。
まぁこれだけなら、逆にプレイヤースキルさえあれば問題ないとも言えるんだが。
不遇の最たる理由はコスパの悪さ。基本的に矢は使い捨てだから金が掛かって仕方ないとのこと。ある程度安定して稼げるようになったあとならともかく、初期の金欠時にはかなり致命的なのだ。
このゲームだと、初心者用弓矢の場合のみ、矢が無限にあるので負担が軽減されているので、少しはましなのだが……初心者用武器は当然攻撃力が低く、上の武器に切り替える際にコスパが問題になるので、結局は問題の先送りでしかない。
で、結局何が言いたいかと言うと、
「リサ、足は止めたから、止めを頼む」
「はい!」
初心者用武器な上に、攻撃力上昇値の低い《全武器適性》では足止め程度しかできないので、リサに止めをさしてもらうことになる。
「ちょぉ、こっちもなんとかしてぇぇぇ」
「こんな面倒事を引き起こしたのはお前なんだから、もう少し粘れ! こっちはもう少しで片が付く」
「んなこと言われたかて……!」
今俺たちが何をしているかと言うと、野うさぎとの大バトルだ。
東の野うさぎは西の野うさぎと違ってノンアクティブモンスターらしく、こちらから攻撃を仕掛けい限り戦いになることはないのだが、馬鹿は何を思ったのか、野うさぎを見掛けるや否や攻撃をしたのだ。その結果、辺りの野うさぎがリンクして一気に大バトルに。パーティ組んだのは失敗だったな。
とりあえず、囲まれるのはマズイのでサウザーに近くにいる野うさぎの対処をさせ、俺とリサが増援で来る野うさぎを仕留めている。
「これで、最後です《キャット・クロウ》!」
「次はこっちだ」
「……………………はい」
そうこうしているうちに、リサが増援で来た野うさぎを猫パンチ気味の引っ掻きで仕留め終わったので、続いてサウザーの援護に回ろうとするが、リサは気が乗らないらしく返事に間があった。……まぁ気持ちはすごくわかるがな。
「《換装》、《蹴り上げ》《パーペンド》」
遠距離攻撃の必要がなくなったので、先のクエストで得た技能石で新たに修得した《換装スキル》で弓矢から片手剣に装備を切り替え、サウザーを取り囲む野うさぎリフティングを始めるような形で蹴り上げ、脳天に斬撃を叩き込む。
片手剣は扱い易いが、複数攻撃には向いてないから選択をミスったな……。
「兄さん、剣よりも鞭に切り替えてください。一気に片を着けます」
「わかった、サウザーちょい時間を稼げ」
「え、またぁ!?」
リサの指示に従い、武器を鞭に切り替えるべく、野うさぎの相手を一旦サウザーに押し付…………任せて距離をとる。
「《ウィップ・ハンド》
せぇぁっ、リサっ!」
「はい、行きます《光の矢》!」
そして、鞭のアーツ《ウィップ・ハンド》で残りの野うさぎを掴んで真上に上げ、それをリサが回転しながら的に突っ込む《爪》+《光属性》のアーツ、《光の矢》で貫いていく。
なぜ、爪のスキルなのに光の矢なのか……わかる人にはわかりますよね。
ヒントは1200万