ヤンキー装備
「っしゃー、掛かってこいやぁ!」
買い物をつつがなく終え、東の森と農村へと続く草原に来たところで、サウザーが気合いを入れた声をあげる……が、
「まてコラ、そこの馬鹿。なんだその格好は?」
「うん? 何って特攻服やがな!」
明らかに服がおかしい。こいつは何時の時代からタイムスリップして来やがった?
「何でそんな格好なんだよ? さっきまで普通の格好だったろうが」
「んなもん、登録装備に切り替えたからに決まってるやん。まぁ普通は街中で重鎧とかのごてごてした装備やと迷惑やから、スッキリした装備にすぐに切り替えるための機能なんやけどな。さすがにわいも、常にこの格好で居るほどテンション高ないし」
「女性プレイヤーだと、冒険用とファッション用で分けてたりしますね」
「ちなみに武器は《ヤンキー装備スキル》の木刀や。メリケンと鉄パイプとヨーヨーのどれに使用かと迷たけどな」
「また、あからさまなネタスキルを取ったな……」
「二人の《お笑い武器》よりましやて。それにネタスキルやけど、意外使えるんやで。《ヤンキー装備》やから武器だけやのうて、防具の方のスキルでもあんねん。特攻隊は《ヤンキー装備》の専用装備でなかなかレアなんやで」
専用装備じゃなくても、装備しようと思う奴は少ないと思うがな。
「ところで二人はどういうスキル取ってるん? わいは……」
「いくら現実の知り合いでもスキル構成を聞くのはマナー違反ですし、不用意に話さないでください」
サウザーが俺らのスキル構成を尋ねながら、自分のスキル構成を話そうとするが、リサがそれを遮る。
「あ、せやったな。でも話すなってのは……アリアちゃん、わいのこと心配してくれてるん? もしかしてデレた?」
「! あなたが自分の構成を明かしたことを理由に、私たちの構成を無理に聞こうするのを防ぐためです。
まったく、デレたとかおぞましい事を言わないでください。鳥肌が立っちゃったじゃないですか」
あ、ホントだ。このゲームかなり芸が細かいな。
「うわぁ……、軽い冗談やのに、そこまで拒否られるとさすがに凹むわ……」
「まぁ、お前が凹もうとどうでも良いが、とっとと行くぞ」
「それもそうですね」
こうしていても埒が開かないので、強引に話を切りながらインベントリから弓矢を取り出し、リサも鉤爪を取り出し装着する。
「へ? 弓矢に鉤爪? 二人とも《お笑い武器》やなかったっけ?」
「あなたじゃないんですから、そんなの選ぶわけないじゃないですか。私たちが選んだのは──」
「《全武器適性》だ」
リサは最初《格闘武器》を選んだんだがな。
「ちょ《全武器適性》って、ネタどころか地雷やんそれ!」
「人のスキルをでかい声で言うな」
「あっ、と……悪い」
「まぁ地雷でも使いようはあるから、大丈夫だろ」
「まぁ確かにテンプレ構成にはない強みはあったりするけど……万能スキルはその芽すらなさそうやん」
「まぁ、ダメそうならそのうち変えるから良いだろ。それより、行くぞ」
「はい」
「あ、ちょい待って、置いてかんといて~」