コンプレックス
「え、わいそんな理由で嫌われてるん?」
リサがサウザーを嫌う理由を聞き納得していると、何故か先ほど撒いた筈のサウザーの声が聞こえてくる。
「何でお前がここに?」
「ん? いや、元々雑貨屋目指してて、その後で薬屋に行こ言うてたやん。でもさっきの場所が雑貨屋のすぐそばやから、わいを撒くんなら先にこっち来るかな思て張ってたんや」
……何だろう、こいつに行動読まれてたとか無性に腹立たしいんだが……。
「それより、わいが嫌われてた理由がエロ本と動画って、どういうことやの? リンも納得してたみたいやし」
「だってリサは……」
「いくら兄さんでもその先を言うと怒りますよ」
「いや、でも……そろそろちゃんと理由を言わないとダメだろ?」
「むぅ…………仕方ありません、そこまで言うのなら、『飴』で今回だけは目を瞑ります」
「待て待て、何でそうなる」
「私に非があるのはわかりますが、『それ』を兄さんの口から言われるのは嫌なんです。かと言って私から言うのも屈辱ですし」
……リサもリサなりに譲歩しているのか……。
「でもせめて『チョコ』あたりに……」
「なら『板チョコ』で」
「『一口チョコ』くらいに……」
「仕方ありませんね、なら十個です」
「いや、三個」
「…………ギュッと抱きしめてくれながらの五個です」
……ここが落とし処か。これ以上は譲歩する気が無さそうだ。
「そのやり取り何なん?」
「まぁ、気にすんな」
「私と兄さんだけの秘め事です」
「秘め事ってちょっとエロそうな響きやな」
……当たらずとも遠からずだけどな。
「で、結局わいが嫌われてるんはどういう理由なんよ」
「リサは胸にコンプレックスがあるんだよ」
巨乳死すべし、と考えるくらいにな。
「胸にコンプレックスって……、アリアちゃんは背が低いんやから別にぺったんこでも……」
「フカ────!」
サウザーの不用意な単語にリサが猫のように威嚇する。
「ちょっ……!」
「胸の話題のときは言葉に気を付けろ…………次はないぞ」
「あ、うん」
前に胸に関してリサをからかったら、俺ですら大変なことになったから、本気で危険だ。俺も許さんしな。
「あと、リサは着痩せするタイプだから分かりにくいが、リサの胸は小さいなりに膨らんでるから、ぺったんこは言い過ぎだ」
元々身体小さい上に、着痩せするから本当に分かりにくいんだよなぁ……。
「せやけど、身体自体が小さいんやから、それほど気にせんでもええんやないん? それに、それなりに膨らんでるんやろ?」
「まぁ、普通ならそうなんだがな……リサの母親と祖母はリサより身長が低いんだが…………リサより胸が大きいんだよ」
特に母さんに関しては巨乳と呼べるくらいに。
「……え、でも二人のばあちゃん言うたら理事長せんせやろ? 半端なくリンにそっくりなあの人。確かにあの人の胸もかなり小さかったような気がすんねんけど……」
「いや、そっちじゃなくて……」
その人はリサと貧乳同盟が組めるくらいに小さい。
「あ、そっか、ばあちゃん言うたら普通二人居るもんな、もう一人のばあちゃんか。
ちゅうか、理事長せんせって本当にリンのばあちゃんなん? いや、半端なく似とるから血の繋がりは疑いようがないんやけどさ、アリアちゃんよりあの人がリンと双子って言われた方が信じらるくらいに若いやん」
「まぁ信じられんかも知れんが、正真正銘、俺の祖母だぞ。少なくとも俺の一番古い記憶から姿が変わってない」
見た目だけなら父さんより若いんだよなぁ。