イベント
「こりゃあの幼女を助けるテンプレイベントやな、わいが助けたるわ」
「やっぱり助けるべきだよな?」
人助けをするとゲームオーバーになるようなゲームはたまにあるけど……。
即助けたくなるような文章だったのに、そいつを助けると爆発してゲームオーバーっていう、罠過ぎる展開があるゲームが昔あったらしいし。まぁ、よく文章読んでたら後回しにしないとダメってのがわかったらしいが。
「ええ。最初期に起こるイベントで罠みたいな展開はないでしょうし……たぶん」
ないと言い切れないのは爺さんがこのゲームに関与しているからだろう。とはいえ、MMOでは基本的に最初の街とその周辺は初心者でも大丈夫な、ある種の聖域みたいなもんだから大丈夫だとは思うが……。そんな最初から罠だらけだとゲームとして破綻し過ぎだし。
「な、なあ、薄々そうやないかなと感じとったんやけど、さっきからずっとわいのこと無視してへんかな?」
ちっ、相手しているようで実は無視していたのに気付きやがったか。……ちなみにリサは徹頭徹尾、普通に無視していた。
「何のことだ? 無視なんてしてねえよ。そんなことより助けに行かなくていいのか?」
「気のせいか? まあええか、んじゃ行ってくるわ」
よし、誤魔化し&パシらせ成功。とりあえず様子を見るか。
「ごめんで済んだら衛兵なんていらねえんだよ。いいから立ちやがれ」
「ちょい待てぇい!」
イベントが進み、男が女の子の腕を掴んで立ち上がらせようとしたタイミングでサウザーが乱入──
『あなたには参加権のないイベントです』
──した瞬間、サウザーは見えない壁のようなもので行く手を遮られ、それと同時にあいつの目の前にメッセージウインドウが現れる。
「どうやら私たちのイベントみたいですね」
「みたいだな。せっかく生け贄を放って確かめたのに無駄になった」
周りに俺たち以外のプレイヤーが居なくて、この場でただ一人パーティを組んでいないサウザーが違うってことは、これは俺たちのイベントというのは間違いなさそうだ。
「まったくです。
まぁ、そんなことより私たちが参加しなくてはいけない以上、早く止めましょう」
「ああ」
見えない壁に勢いよくぶつかった痛みでのたうち回っているサウザーを尻目に女の子を助けるべく走り出す。サウザーが壁にぶつかった位置を越えても何もなかったので、やはり俺たちのイベントで間違いないようだ。
「お……」
「ったく、走るときはきちんと周りを見ながら走れつってんだろうが。お前ぇはちっこいんだから自分が怪我すんだぞ。あ~もう、こんなに汚れちまって……」
割って入ろうとしたが、男は荒々しい感じではあるものの甲斐甲斐しく女の子を抱き起こして、服の汚れを払いながら説教を始める。
「それによぉ、もしお前ぇよりちっこい子にぶつかったら、その子怪我させちまうんだぞ。
お前ぇだって痛いのは嫌だろ?」
「う、うん」
「ならそんな思いを人にさせんのはダメだ」
……あれ? この男、実はいいやつ? 口調は荒っぽいけど、言ってることはまともだし。
なんつーか、面倒見のいいヤンキー系の兄ちゃんが近所の子の面倒を見てるような感じ……と言うか、それそのものじゃないか?
「こんなに汚れちまってっと、払っただけじゃ落ちねぇな……。あ、そこの人、すまねぇけど水ねぇか?」
『NPC〔???〕から水を要求されました。アイテム〔水〕、もしくは水魔法を使いますか?』
戦闘系じゃなくて納品系イベントかい!
スキル解説《全武器適性》
あらゆる武器が使えるようになるスキル。ただし、あらゆる補正は他の武器スキルよりも低い。
普通の武器スキルには『対応武器を装備しているとP-Atkに+スキルレベル×0.5の補正がつく』などの効果があるが、《全武器適性》にはない。
また、万能スキル全般に言えることだが、レベル上昇は遅い。
実はこのゲームでは武具は対応スキルがなくても基本的に装備することは可能。ただし『対応スキルがない場合P-Atk以外の総合ステータスに-90%の補正がつく』などのペナルティがある(武器によってペナルティは違う)。
ちなみに武器スキルで《適性》とつくのはこの《全武器適性》のみで、他の武器スキルにはつかない。