花屋
「でも、ここVRやし、大丈夫なんちゃうん?」
「あいにくですが、昨日チュートリアルクエストで見事に実証してくれましたから……」
チュートリアルクエストの中にはお遣いクエストがあり、見事にやらかしたからな……。普通なら五分掛からないクエストなのに、三十分以上かかった。
「五分あれば帰って来れるクエストなのに、二十分経っても帰って来ませんでしたので、捜し出してクリアしました」
……ごめん、嘘ついた。自力じゃクリアできなかったよ。
「花屋に花を買いに行くクエストなのに、どういうわけか歓楽街にいたんですよね……」
「まぁ、隠語でそういう所を花屋っちゅうから、あながち間違いではないわな」
「なるほど、つまりそこで花を買っていればクエストクリアだったのか」
歓楽街は当然大人のスポットなので、年齢制限がある。百年くらい前だと18禁と呼ばれていたみたいだが、何代も前の政権が少子化対策として結婚可能年齢を男女共に16歳以上に引き下げたため、現在では16禁と呼ばれている。
……まぁ、結局未成年者の結婚には保護者の同意が必要なままだし、そもそも根本的な解決になってないのであまり意味のないものだけどな。強いて変わったと言えば、アダルト商品やコンテンツをを高校生でも利用可能になったくらい。
なので、もうすぐ高等部二年になる俺も利用可能だ。
「兄さん、そんな所で花を買うくらいなら、私に手を出してください。でないと、私から実力行使しちゃいますよ?」
「はい、ごめんなさい。謝るから実力行使は勘弁してください」
「……なら、女なんて買わないでくださいね。『初めては兄さんから』と心に決めていますので、私としても、私から兄さんに手を出すのは不本意なんですから」
だが、当然と言うべきか、リサがそんなことを許してくれるわけがない。
はぁ、相変わらず滅茶苦茶なことを……。まぁ、このこだわりのおかげで無理矢理されないのは助かっているがな。何せ、俺よりもリサの方が力が強いから、力尽くで来られたら抵抗出来ないもんな……。その代わりに全力で誘惑したり、既成事実を捏造して『一回も二回も同じ』って理屈で俺に手を出させようとするけど。
だが、リサに手を出すのはアウトだ。リサ本人がよくても色々問題がある。その最たるものは爺さんだ。
父さん曰く、爺さんの娘で、幼なじみだった母さんと初めてゴニョゴニョした日、爺さんに盛大に祝われた──もしくは、退路を断たれたらしい。その日、爺さんは海外出張で日本に居なくて、その隙を衝いての行動だったのに、だ。
つまり、手を出すと隠すのは無理な上に、謎の行動力で何かしらのアクションをされるということだ。
ちなみに父さんはリサの気持ちについてはもはや悟りに近い感情で認めているので、『止めはしないけど、お義父さんが色々とやらかすと思うから、アリサに手を出すなら色々と覚悟してから出すように。父さんも一度通った道だ』とのこと。
……それでいいのか男親?
スキル解説《全属性適性》+α
このゲームにおける地雷スキルの一つ。あらゆる属性を使用可能な代わりに、威力は低い。
利点は相手の弱点属性がわかれば確実にそこを衝けること。そして、あらゆる属性が使えるので、特定条件を満たすことで取ることのできる《派生属性》も使用可能なこと。
このゲームで初期に取れる属性適性スキルは地水火風光闇の6つと全属性のみ。雷や氷などの属性は条件を満たさなければ使えない。
例えば雷属性なら風と火の属性スキルを10まで上げて、二つを統合もしくは派生させる、など(他にも方法はある)。
属性適性スキルを含むアーツ(影縫いやライトニング・ハリセンスラッシュなど)はAPの他にMPも消費する。
また、最下級の攻撃・防御・支援・回復の属性魔法を一つ使用可能になる(ただし威力は低い)。