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サウザー

前話の伝説の男のアダ名を少し追加しました


 窓口でクレームをつけていた男はやはり俺たちの知り合いだった。


「ったー、誰や!?」


「俺だ」

「そして私です」


「あ、ん? リンにリサちゃっ……ヘブッ」スパーン!


 クレーマーはしばかれたことに激昂しかけるも、しばいたのが俺たちだと気付いて落ち着く。そして、俺たちの名前を口にした瞬間、再びリサにしばかれる。


「ったいなぁ、何すんねんな!?」


「あなたが私をリサと呼ばないでください。と、何度言えばわかるのですか」


 リサの本当の名前はアリサで、リサというのは愛称。リサがこの愛称を許しているのは俺を含めてごくわずかなのだ。


「と言うか、MMOでリアルネームを口にすんな。

 とりあえず後がつかえているから離れるぞ。とっとと報酬を受け取れ」


「ちと待ちいや、わいはまだ納得……」

「「《ライトニング・ハリセンスラッシュ》」」ズパァーン!


「いいから来い」 


「……はい」


 なおもクレームをつけようとしたので実力行使。さっさと報酬を受け取らせて窓口を離れる。







「いったい何やねんな……。二人がこのゲームやっとることは知っとったけど……」


 総合ギルドを出たところでクレーマー──俺たちの現実リアルでの知り合い、富竹レオが口を開く。


「周りの迷惑だから、窓口でごねるな。ただの仕様の変更だろうが」


「せやかて、昨日まではあんなことなかったし……。公式アナウンスもなしで、こんな仕様変更はなしやろ」


「まともなオンラインゲームならなしだが、うちの爺さんの性格を考えると普通にやるだろうな……」


 なにせ公式ホームページにある謳い文句に『無限の可能性、君の手で世界は変わる』ってあるし。『無限の可能性』の無限はいい意味だけでなく、悪い意味でも無限なんだろうな……。ちなみに謳い文句の一つにさりげなく『地雷始めました』ってあるのはどうなんだろうな?


「げっ、副理事長せんせがこのゲームに関わっとんかいな。なら納得やわ」


 うちの爺さんは俺たちの通う学園の副理事長もしていて、レオもその性格の悪さを知っているので納得する。ちなみに理事長は俺の婆さんだったりする。


「そーいや、さっきうっかりリアルネーム言うてもうたけど、プレイヤーネーム何なん? わいはサウザーやけど」


 サウザー……『聖○』かよ。さすがうちの学園の伝説の男。何気に気に入ってたんだな。


「俺はリン」

「リアルネームで呼ぶな言うといてリアルネームかい!」


「でリサは……」

「私も言わなくちゃだめですか?」


 俺が名乗り、レオ……サウザーのツッコミをシカトしながらリサにも名乗るよう視線を向けるが、リサは名乗ることすら嫌なようで遠回しに拒否する。 ……いや、サウザーのことを嫌いすぎだろ。いくら、高等部の入学式の日にしつこくナンパされて、実力行使で強引に引き剥がしてもらわないといけなかったからって。


「名前くらい教えてやれよ」


「仕方ありませんね。

 私はアリサリアです、リサとアリサとサリア以外なら好きに呼んでください……どうせ返事はしませんし(ボソッ)」


 名乗るように促すとリサは嫌々という雰囲気を隠そうともせず名乗る。


「……それほとんど呼び方がないやん。う~ん、なら長いし略してアリアちゃんでええな。

 ちゅーか、リアルネームとだいたい同じでリアル外見でプレイとか大丈夫なん?」


「お前も人のこと言えんだろ。現実リアルのアダ名もじりと、色違いだけどリアル外見って」


 サウザーの外見は赤髪赤目。顔立ちは整っているが、雰囲気がかなり暑苦しい。


「いや、外見変えたら弱なるしな」


「ところで、何で俺たちがこのゲームをやってるって知ってたんだ?」


 俺はこいつにやってるって言ってないし、リサはいうわけがない。運営会社が爺さんの会社だとは知らなかったみたいだし。


「ん? 知らんの? 二人とも掲示板で結構有名やで。『漆黒と白銀の百合姉妹』や『黒銀の双子人形姫』とかって」


 姫とか姉妹って……。おれ、男なんだが……。

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