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6.色欲は罪よ!(ブレイブの元カノ視点)

大金をもたらす代わりに悪臭をまき散らし、私の名声を地に陥れた醜い豚を追放した私は、そんなケダモノよりも稼ぎがよく容姿端麗な愛しい彼を迎えて、女どもの嫉妬のまなざしを受けながら順風満帆な生活を謳歌していた。


今日も冒険で疲れた彼を豪華な装飾が施された私の家で存分におもてなししてあげた。


でも、私は働くという行為が少しばかり苦手だったので、私より美しさで負けるもののそれでも顔が整った女の給仕を雇った。


私は彼の要望で、お互いの服をそばに置いてベッドの上で語り合っていた。


彼は存分に愛しているけど、体を許す気はさらさらないのでいつもここで服を着てお休みのキスをした。


「・・・怖いのか?」


彼が困惑した顔で尋ねた。


「うん、自分が自分の物じゃなくなるみたいで怖いの。」


「心配いらない。俺はいつでも待っているぜ。」


心優しい彼は、私が求めているものがあればなんだって買ってくれるし、あの豚とは違って私が嫌がることもしないから大好き。


でも、私は現実を突き付けられることになる。


「ない!ない!!私のお金も大切な宝石類もガウパー様からもらった大切な結婚指輪もすべて!!!」


翌日起きたときに貴重品類はすべてなくなっていて、彼の姿もない。最初は復讐にきた糞豚が彼ごとさらっていったのかと思った。


だが、テーブルにあった一枚の羊皮紙が私の乙女心を踏みにじった。


その紙にはこう書いてあった。


『君みたいなわがままとは付き合えない。俺が汗水たらして働いた金をすぐに使い果たすし、家事手伝いはすべて給仕任せ。そのくせして俺に対して不満をこぼす。あいつの気持ちを肯定するつもりはないが、よく我慢して君と付き合ったなと感心するよ。俺は君に搾取され続ける生活はもうやめた。これからは俺の気持ちを尊重し慰めてくれた給仕と一緒に幸せな生活を送ろうと思う。だから永久にさようならだ。ガウパー・デル・マラカータ』


「言いたい放題言いやがって・・・・。」


私は怒りのあまりこぶしを握り締め、思いっきりテーブルを叩いた。


「あのやりチン野郎が!!いや、あいつだけじゃない。男はいつだってそう、女の体をなんだと思っているのよ!私はただ、男が稼いでくれる大金を、感謝を込めて使って男に愛されながら遊んで毎日暮らしたいだけなのにー!」


領主に払うための金もない私は、着の身着のまま家を出ていかざるを得なかった。


「こうなったのも全部あのオークもどきのせいよ!」


私は、糞豚に対する怒りをかみしめながら歩みを進めた。


途中で筋骨隆々の男の行商人と出会った。


「そこの嬢ちゃん。マジックアイテム買っていかないかい?可愛いから安くしとくよ。」


可愛いだなんて、わかっているじゃない。


「ええ、なにを売っていらっしゃるの?」


「運気上昇系と退魔系ですよ。」


行商人は担いでいた大きな袋から次々とアイテムを取り出して地面に並べた。


「運気上昇系だと幸せのツボにカチモテの石、幸福の神ハピネス様の聖水入りポーション。退魔系は魔物除けの鈴に竜人族の国ドラゴニア王国の巫女も使っている強力なお札10枚・・・どれにします?」


「じゃあ、魔物除けの鈴にするわ。ツケて頂戴。あとで払うから・・・。」


だが、途端に行商人の顔が曇った。


「あら?私何か変なこと言ったかしら?」


「お客さん困りますよー。もしかしてお金持ってないので?」


「もちろん無一文よ!でも、私はいずれ偉くなる。そしたら払ってやるから!先行投資と思ってちょうだい!!」


「ハアー、わかりました。タダでいいです。」


「え、本当?!」


「その代わり・・・。」


行商人さんが合図をすると、草むらから彼よりも人相の悪い3人の男たちが現れた。


「体で払ってもらいますよ。」


その言葉が言い終わらないうちにケダモノどもは一斉に私に迫ってきた。


「つかまってたまるもんですか!!」


こういう時のために足を鍛えていたので、私は見る見るうちに4人の男どもを引き離していった。


「待てよお嬢ちゃん」「俺たちといいことしようぜ!」「そしたら、嬢ちゃんの欲しいものタダでやるからよーグヘへへ・・・。」


「絶対に逃げ切ってこの純潔を守って見せるわ!そして、偉くなって女の価値をまたぐらの良し悪しで判別するこの世界を正してやる!!」


だけど、奴らは汗一つ流さずにどんどん私に迫ってきた。


「あっ!」


私は、足元を見ていなかったせいで小石に躓いて転んだ。


「うう・・・。」


「へっへっへ・・・痛いか、すぐに気持ちよさで忘れさせてやるから覚悟しろ!」


獣欲まみれの男どもの声が近づいてきた。


もうだめだわと思ったその時・・・。


火属性魔法ファイヤー・マジック極炎爆弾ヘル・ボンバー


呪文を唱える声があたりに響いたと思ったら、ふいにあたりがまぶしくなるほどの爆裂魔法がどこからか放たれた。


爆心地からは大きな煙が立ち上った。


そして、男たちは悲鳴を上げる暇もないまま消し炭にされた。


「あ、あれはLV4の魔法!・・・期間短縮のスキル持ちである場合でも習得するのに10~25年もかかる最上位の魔法。ってことは亜人の冒険者が助けてくれたのかしら?」


「あちゃー、悪党とはいえやりすぎたな。」


だが、そこに現れたのはごく普通の黒髪の青年だ。


「あなたもしかして・・・召還勇者?」


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