5.覚醒
俺は驚愕した。そこに居たのは醜いオークもどきではなく、赤い瞳のイケメンインキュバスだった。
「これが・・・俺?でも、たしか魔力注入は同じ種族の血が流れていないと、拒絶反応を起こして最悪死に至ると聞いていたがまさか俺は・・・。」
魔王は頷いた。
「そうじゃ、確信が持てたのは角をいじられた時じゃ。オークであるならばあそこまでわらわを気持ちよくすることはできん。」
「なるほど。」
「あと・・・古代スライムをも使役するお主の力を見込んで頼みがあるんじゃが・・・。」
「なんだ?」
魔王は耳を真っ赤にしながらうつむき加減で言った。
「わらわの婿に・・・なってはくれまいか?」
当然手下たちはざわついた。
俺は考えた。このまま断っても、むごたらしく死ぬのは目に見えている。もし、帰れたとしても人間に迫害されるだけだ。ならば・・・。
「わかった。こんな俺でよければもらってくれ。」
魔王にあんなことをして今後、この魔王城での生活がうまくいくのかと思った。だが・・・。
「オー!こんな強い魔物が味方になってくれるのであれば大歓迎だ!!」
「おめでとうございます!魔王様!!」
どうやらその心配はなさそうだ。
魔王がそのままでは目のやり場に困るので着るものを用意してもらった。
「わらわの国は、よくも悪くも実力至上主義でな。かつての敵でもこちら側につきたいとあらば、喜んで迎え入れるのがこの国の国是じゃ。」
「変わっているな。」
魔王はメイドが持ってきたネグリジェを着ながらケラケラと笑った。
「古代スライムを召喚したやつが言うことか!?」
「ははは・・・。」
「あのー・・・。」
「おお、そうじゃった。貴様の処遇を考えないとな。」
俺は一つ確かめたいことがあったのでビックに質問した。
「・・・ビックと言ったか?」
「は、はい。」
「公国は今でも健在なのか?」
「いえ、盗賊の襲撃で半壊しかけていたところを娘っ子たちだけ逃げないように保護して、あとはすべて壊しました。」
よし、俺の復讐相手はまだ健在のようだ。
「うむ、そう言えばギガメス。淫魔って変身はできるのか?」
「できるぞ、特にハーフであるならば覚醒前の姿に戻ることなど造作もないわ。」
俺はいいことを思いついたと口角を上げた。
「い、いったい何をするのですか?」
「ビック、もう一度お前が奴隷商人を襲った現場に行って奴隷少女たちをここに連れてきてほしい。」
「なっ!」
「勿論ただとは言わん。お前と部下の身の安全は保障しよう。それでいいかな魔王様。」
魔王は少し考えると了承した。
「よかろう。ではビックよ直ちに商品を持ってまいれ!もし、逆らったら・・・わかっておるな?」
「は、ハイ!!!」
魔王の気迫に押されたビックは、部下を引き連れて魔王城を後にした。
「そう言えばお互いの名を聞いてなかったな。名は何と申すのじゃ?」
俺はここで名を変えようと思う。なぜなら、これからは冒険者としてではなく魔王軍の一員として生きていくからだ。
「俺はかつてブレイブと呼ばれていた。だが、これからは俺の人生をめちゃくちゃにした奴らに復讐してやる。奴らの人生を『壊して』やる!だから、今から俺の名はブレイクだ!」
「ブレイク・・・魔王軍にふさわしい良き名じゃ。わらわは、淫魔王ギガメスじゃ!よろしくな。」
俺たちが握手をした瞬間に再び歓声が沸き起こった。
「「ギガメス様万歳!ブレイク殿下万歳!!」」
ここまで歓迎されたのは初めてだ。
俺の居場所はとうの昔に失ったと思っていたが、どうやらそれは間違いだったようだ。
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