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3.メスガキ魔王

大広間には、執事服を着た老人姿のヴァンパイアロード、紫を基調とした着物に黄色と黒の縞模様があしらわれた帯をつけて、俺の伸長とほとんど同じ大きさの棍棒を持っているオーガキング、アダマンタイトの鎧を装備した銀色の毛並みを持つオスの人狼ウェアウルフ、などの幹部と思わしき魔物たちがいて、それらが一斉にこちらをにらんだ。


ビックは、そのオーラに気圧されされそうになりながらも一歩一歩前に進んだ。


「仲間にするには申し分ない強さだな。」


そう思わせる雰囲気が広間中に蔓延していた。


だが、肝心の玉座に座っている魔王の姿は、完全に角の生えた幼女だった。


彼女は、布面積が少ないビキニアーマーを着ていて、これでもかというほど色つやがある褐色肌をしている。


吸い込まれそうな赤い瞳はビックをじっと見つめていた。


ビックは、冷や汗をかきながら担いできた袋を手前に置いた。


「ビックよ。贄は持ってきたか?」


贄ってことはあの中に人の死体が入っているのか?


「ハイ!こちらに・・・。」


ビックが袋の口を開けて袋から取り出したのは大人の小太り男性の死体だった。


途端に魔王の表情が険しくなった。


「わらわは、奴隷商人の商品を持って来いと言ったはずじゃが!?」


「お、お許しを!まだあどけない人間の少女たちを殺すなど私にはとてもできません!せめて、せめて奴隷商人の死体だけでもと思いまして!」


それを聞いた魔王の幹部たちはざわつき始めた。


「ふざけるな!」


「我々が欲しているのは新鮮な子供の死体だ!」


「そうだ!死体一つだけでも強力で従順なフレッシュゴーレムが何十体と作れるのだぞ!」


聞いたことがある、フレッシュゴーレムは石や岩と生物の肉体を混ぜ合わせてそれを黒魔術師が錬成することでできるモンスターだ。


幹部たちのざわめきを魔王は右手を挙げて制止した。


「はぁ~、お前さんは魔王軍団長にしてはお人よし過ぎる。そんな弱っちいから、妻はお前の下から離れたのじゃぞ。」


「・・・。」


幹部やメイドたちはケラケラと笑い始めた。


ビックは黙ったまま震えていた。


「ざぁ~こ!ざぁ~こ!妻に逃げられた仕事もろくにできない雑魚オークが!異臭をまき散らすだけの雄豚を今すぐ役に立つようにしてあげようかの。」


魔王が赤い瞳を光らせる寸前に、俺はビックの前に立ちふさがった。


自分と似た姿の魔物がののしられているところを見て、倒すよりも先にどうしてもわからせたいという気持ちが湧いてきたからだ。


「なんじゃお主は、魔王にたてつくとはいい度胸d・・・。」


魔王は言葉を詰まらせた。


俺はその一瞬のスキをついて魔王の下へスキル『縮地』を使って接近した。


「ま、魔王様をお守りしろ!」


「させん!無属性魔法オリジナルマジック隷属獣召還サモン・スレイブビースト!!」


俺は、お得意の魔法で玉虫色に光る体に赤黒い目玉が無数にある粘液状の召喚獣を出現させて魔王の手下たちを足止めした。


召喚獣が威嚇のためか一声鳴いた。


「テケリ・リ。」


「こ、こいつはまさか!?古代スライム?」


「聞いたことがあるぞ、古代スライム通称『ショゴス』は普通のスライムと違って森羅万象あらゆるものを溶かし、その性格は気難しくどんな闇魔導士も使役ができないと言われているが・・・。」


「まじかよ、だとしたらあのオーク・・・何者なんだ?」


俺はそんな言葉をよそに魔王のすぐそばまで行って跳躍し、魔王の肩と角を両手でがっちりとつかんだ。


「ひゃうっ!」


魔王は情けない声を発した。


俺はニヤニヤしながら右手で魔王の角をいじり始めた。


「や、やめるのじゃ!角は勘弁してほしいのじゃ~!」


先程の威厳はどこへやら、俺の目の前にいるそれはもはや魔王ではなく、獣欲まみれの男性におびえる女の子だった。


「な~るほど、やはり角のある魔物は角が弱点というわけか・・・。」


俺はいつも自室にこもってやっていることを魔王の角で実践した。


「にゃああああああ!」


その時、俺の右手に激痛が走った。


突如襲った激痛に驚いて右手を確認すると、右手の甲に赤紫色の紋様が浮かび上がっていた。


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